その人のものはその人のものだ | 絵本読み聞かせ講師・上甲知子「絵本で子育て講座」出前します【小田原 湘南 横浜 静岡】

絵本読み聞かせ講師・上甲知子「絵本で子育て講座」出前します【小田原 湘南 横浜 静岡】

絵本の読み聞かせを味方につけると子育てはもっと楽しくなります
「読み聞かせなんてめんどくさい」という方も、簡単に楽しくできるときだけ続けられる「絵本で子育て」をお伝えします

(以下引用)


現在通う店の二階の二つの丸い小さなテーブルが、窓辺にある。いつもその席があいているとすわるが、ピカピカ輝いている。
昨日の夜、ふと思った。まるで日、月のようだ。雨の日、嵐の日、飛び込みすわり輝く時間…。
いつもフランスに行くつもりで意識を切り替え、通ってくるが、苦痛になって帰ったことは一度もない。西洋の光だ。日本のきびしさにつまった時、自由な精神のよみがえりに通いながら生きた人生…。


(引用ここまで)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


タリーズにて、やっとのことで読了。







 

アメリカにいるつもりで。


窓辺の日の席のつもりで。


小山さんのような、想像力を持てないが。

 

『小山さんノート』
(小山さんノートワークショップ編  エトセトラブックス)

 

 

 

 

以下、わたしのメモのようなものです。

 

 

 

 

小山さんは、ホームレスだ。


もしも、リアルに会ったとしたら、きっと関わりは持てないだろう。


わたしから、関わろうともしないし、小山さんも嫌がるだろう。


だがしかし、この本を読むと、小山さんの内面を、心のうちを、知ってしまう。

 

会いたかったと思う。


踊ってる小山さんを見たかった。


小山さんの隣で、少し踊ってみてもよかった。


喫茶店の月の席で、一心不乱にノートを読み返し、ノートに書き綴り、本を読む小山さんの隣に座りたかった。


もしかしたら、夏場は少し、臭うかもしれない、お風呂に入ってない小山さんだから。

 

小山さんは、ホームレスだが、おしゃれだ。


街へ出るときは、ちゃんと身なりを整える。普段着と、街用の服を分けているようだ。

 

小山さんに似合う、綺麗な洋服をプレゼントしたかった。


おしゃれをしている小山さんの姿を見たかった。


お酒を差し入れしてもよかった。

 

お酒とタバコがなくてはならない。


ちゃんとお礼の品を届ける。


義理堅い。


月を愛でる。


ちぢれ雲を愛でる。


小山さんの考えに共感する。

 

 

 

(以下引用)


現在の人も、自分の小遣い三百円使っただけで、もったいないとどなる。そんなことまで言われる必要はない。まして私が大事に守り通してきたものまで勝手にさわり、なげ飛ばすとは、あまりにくやしい。
お前のものは俺のものだと、ありえない。親子でも、きょうだいでも、夫婦でも、その人のものはその人のものだ。あまりにも無感覚でずるがしこい行為をされると、例え何様であろうと許せない。


(引用ここまで)

 

 

 

 

自分が何にお金を使うか、そこには精神の自由がある。


所有するモノ、金、時間は、どう使うかを自由に決められるはず。


お金の使い方に、所有するものに、誰にも文句を言われたことがない自分の幸せを改めて思った。


他人のモノが、テリトリーを占拠し始めるとイライラする。視界に入ると、ムカつく。


だからと言って、勝手に処分はしない。できない。やっちゃいけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小山さんは、なぜもっと、楽な、生き方ができないのだろうか。


なぜ、もう少しだけ、我慢して、計画的にお金を使えないのだろうか。


なぜ、やっと手にしたお金を、そんな簡単にタバコ代として渡しちゃうんだろう。


なぜ、もっと誰かに助けてもらわないんだろう。


なぜ、こんなにも苦しい生活をするんだろう。


もっと違う生き方はできなかったのだろうか。

 

満たされないからこその、表現なのか。


もしも、亡くなった小山さんとともにこのノートが燃やされていたなら、この表現は、この世になかったものにされていたのか。

 

会いたかった。

 

話してみたかった。

 

わたしがグッと来た箇所を抜き書きしました。

 

 

 

 

(以下引用)

 

・私は子どもの頃より、制服を着つづけたことはない。中学の時までは許された。せっかく兄嫁が作ってくれたカシミヤの高校の制服をなげ飛ばして、一日も早く自由なファッションをしたかった。十五歳、家出をしてしまった。再び帰ることのできない育った家は、親も兄も、姉も、服装には寛大であった。ファッションデザイナーになりたかったが、入学金を払えず、あきらめた。

 

 

・前の銀なんの大木を見て、私は金難だと笑う。

 

 

・日本の大都会の中心に近い位置で、何の保障もない毎日を送り生きることは、誰にも問題にされない。
肉親や友がいても、言うに言えない孤独がなお深い。
それぞれ自給自足に近い日々は、必要なかてを補給するのみで精いっぱいの原始的生活のように不自由だ。
ピクニックのテント生活を楽しむようなわけにはいかない。
毎日せかされる精神の歩みは、人間としての自尊心も、人権も、希望も、四季折々の自然の変化の中に押し流され、存在感さえ霧のベールに包まれてしまいそうだ。
元気でお金のわずかある間はまだ現実的にも、自分のリズムと意思や希望を保つことができる。
全く奪われ、動くあてさえ、気力さえ養う人間にとって必要なかては保つこともできない。

 

 

・町の角にむらさきのカサが一本、一週間ほど前より美しく、目立って、忘れもののように置いてある。ハッと目が覚める。この雨でも誰も持っていかなかったのかと、自分のカサを一本置き、しばらくこうかんしましょうと手に持った。

 

 

・意識、現実より離れ、聖なる灯とは何かを思う。ふれてふれ得ぬ深き心情は、泉のごとくあふれ、別世界をさまよう時間はつかの間に過ぎていく。現実を全く離れた意識は、この世のあらゆる規制や束ばくをこえ、自由な愛の源にたどりつく。安楽の魂はすこやかに深い眠りに入った。

 

 

・通りの角のゴミ箱にパリと書いた新しいふくろが一枚あった。持ち上げると下に新しいブーツが一足ある。茶、ヒールの高いオリジナル品のようだ。この出逢いがうれしい。ちょうどイタリアのブーツが一足あったが、水でかび、一足もなかった。(中略)クツには夢がある。これをはいて踊り、ゆったり散歩ができたら楽しいだろう。

 

 

・夜、音楽堂で一時間半ばかりサウンドのメロディで踊る。髪の長いかわいい女の人がニコニコ笑い、いつも来ているわね、ステキよと声をかけた。私は、初めて顔を見て心よく恥ずかしい気持ちで、好きなのでよく踊りにくるのと笑顔で語った。

 

 

・夕方四時過ぎ、大通り本屋でいやなことに出逢う。
あまりもの徒労のつかれに、もう二度と前を通るのをよそうとする。現状のともなわない、全く理解されない行為にうながされかきたてられたこの数十年、どっと何かがふっきれたような気がした。実り恵まれなかった三十年の栽月、日々守りかかえた本との人生…。
三千五百以上をこえる読書…。
これ以上、持続することのできない立場に追い込まれた人生はがいこつになってしまう。
めぐらなかったむくいはなんだろう。
努力のむなしさがつきあがる、今日の夕暮れ…。
(中略)
善神消え去り、錯覚の迷いものにことの判断は霧に包まれ、淀む社会の人々の群れの中で今日の一日の苦痛は明日の生を暗くする。
静まるに静まらない。
今日の一日の出発そのものが自分の意思ではなかった。無理に追い込まれたつかれの歩みは、休養を許さないかのように日中の暑い日差しの中を歩ませる。意識もうろうとした心身は冷静な判断を失い、堂々めぐりのつまりとぶつかり、この一瞬の出会いと時間を避けられたらこんな残酷な思いをせずにすんだはずだ。後悔もむなしく意識興奮と恐怖のままだ。喫茶に入ってもおちつかない。ただ燃える頭、身を冷やし正常にもどることを願うことのみを考え、何も思うまい。

 

 

・今日よりの沈黙を来春の至る方向へ、日々のつらさのかてにしよう。
わずかなお金を持っても、土台を変えることもできない現状と国民権のない立場は空中ブランコのようだ。
大事な地にあり地につかない生活。
日本に生まれ、人権奪われた長い人生はいつ安定した人間生活を回復できるモノだろう。
人出多い町の中をタバコ拾いながらゆったり歩く。
飲みもの食べもの補給。
すみきった夜空の星が美しい。

 

 

・2時過ぎ、ウデの力をもぎとられたようにガクガクする。テントもぐり込み、雑務より離れられない現状を見つめ、なんとうらぶれた現実だろう。
幻想は持続できない。人間の限界はこの現実生活を離れられないことにある。理想はいかに遠く果てしないことだろう。もう何も思いたくない。現実の貧しさを助けあう友もいない時は、一人の限界がある。幻想の限界もせまり、見苦しい現実に直面してうろたえる我が姿と心は痛み、消耗してガックリしたまま、一夜、まんじりともしないで夜明けになっていく。

 

 

 

(引用ここまで)

 

 

 

 

銀杏(きんなん)と金難(きんなん)をかけて言葉遊びをしたり。

 

傘に話しかけたり。

 

最低限の衣食住を整えることの厳しさの中で尊厳を保つこと。精神を保つこと。

 

ギリギリの中で、不安定になるとき。

 

「支援」という言葉を発する側は知ることができないこと。

 

独特の文体でびっしりと表現されていて、読み飛ばすことができなかった。


すごい読書体験だった。

 

ある程度の覚悟を持って、ご体験いただきたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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