私の母は、御年63歳。自他共に認めるものすごいバイタリティーの持ち主。


さて、その母が先日オリンピックが終わったばかりの中国へお友達と旅行へ行くことになった。そのお友達、仮にSさんと呼ぶが、長年給食のおばさんとして務めてきた職場を近く定年退職するので、65歳にして初めての海外旅行へ行くことにしたのだ。


そのSさんが、余り高くなく、余り遠くない場所がいい、ということで選んだ場所が、中国・杭州・上海の旅だった。そう、あくまでも初めて海外旅行をするSさんの希望を第1に考えての行き先であった。


Sさんは、ものすごーくこの旅行を楽しみにしていた。生まれて初めて手にするパスポートにうっとりし、いかにも海外へ行きます!という感じのスーツケースに何日も前から荷造りをして当日を待った。中国へ行ったら、エステをしよう!とかショッピングや食事も楽しみよね~とそれはそれは嬉しそうだったらしい。


私の母はと言うと、実は8月に胃潰瘍になってしまい、実はあまりこの旅行に乗り気ではなかった。食事も余り食べられる状態ではなかったのだ。


余り乗り気でない母に、私は「こんなことでもなくちゃ、中国なんて行かないだろうから楽しんで来てよ。ツアーで食事も全部ついているし、添乗員さんだっているんだから、何も心配いらないわよ」と言って送り出した。


さて、出発当日。朝早く最寄りの駅でSさんと待ち合わせた母から、私に電話が入った。



「ど、どうしよう・・・Sさんたらね、パスポート忘れてきちゃったんだって!叫び




ここから、母の長い2泊3日の旅行が始まったのだった・・・つづく