人は変わる・その1

さて、その従兄の家庭に従兄の祖母である私の伯母を引き取ることが決まった。伯母は、新潟で一人暮らしだったが、段々と体も悪くなり、一人で生活をするのが難しくなったからである。

従兄の家には高校3年生の息子がいるのに、いきなり同居だなんて、奥さんもその息子も大変だろうなぁと思った。私の父や母も「くれぐれも介護を全て自分達で担うような事はせず、自分たちの生活を大事にしてね」とその決断を労った。

ここまでだったら、単なる美談だが、事はこれでは済まなかった。

空き家になった伯母の家を管理してくれてる近所の人から、私の両親あてに電話が来たのは、従兄が伯母を引き取って半年もしないうちだった。その近所の方は、空き家になった家の税金やら除雪作業等の支払いを善意で代行してくださっていた。ところが、その人が言うには「その税金等のお金が振り込まれない」と言うのだ。従兄に引き取られた伯母は、年金を受け取っていて、その内のいくらかをその近所の方に送金する手はずになっていたのだが、伯母が東京へ移ってから1度しか振り込まれてないというのだ。

調べた結果、その従兄が祖母である伯母の口座から、ほぼ全額引き出していた。

私の父も母も、一体どうなってるのか、と従兄の家で話し合いが持たれた。もちろん、従兄のお嫁さん、その伯母も同席しての会議だ。

そして、知った従兄の本当の姿。

従兄のお嫁さんは、結婚して子供が生まれてからは、夫である従兄はお給料を全く家に入れてないという。それだけでも、驚くのに、同席した伯母は、孫であるその従兄に向かって「私の財布から時々お金をくすねてるのを知ってるよ」と言うのである。

従兄のお嫁さんは、今住んでるマンションの管理費も滞納していて、いつ追い出されるかわからない、と言うのだ。

伯母の口座から降ろしたお金の行方も、従兄は結局「申し訳ありませんでした」と言うばかりで、使い道には口を閉ざしたまま。

私の両親も、従兄の本当の姿を知れば知るほど、言葉を失うほど驚いた。

結局、それからも色々と伯母の年金をめぐってあったので、先週伯母はその従兄の家を出て、特養ホームにお世話になることになった。

恐らく従兄は、もうN○Tなんていう大企業にも勤めていないのであろう。そういえば、何年か前に、夜はコンビニでWワークしてる、と言っていたっけ。

いつ従兄は、そんなにだらしない人間になってしまったのだろう。従兄の母である叔母が生きていたら、どんなに嘆いたことであろう。

従兄のお嫁さんも、よくわからない。なぜ、そんな風にお給料も家に入れない従兄と結婚生活を続けられるのだろうか?生活費は、すべてそのお嫁さんが稼ぐパート代でまかなっていると言うのだ。

いつもお嫁さんが言っていた「うちの主人は、皆さんが思ってるよう程立派な人ではないんですよ」というセリフは、謙遜でも何でもなく事実だったのだ。

昔私が大好きだった優しい親戚の従兄は、もういないのだ。そう思ったら、とても寂しくなった。