もう2年以上夫は月に何度か名古屋へ行く生活をしていた。

頻度は2月で3回くらいだったろうか。金曜か土曜日に名古屋へ行き、実家に泊まり翌日帰ってくる、というパターン。

その度に、主人から義父にこちらへ来ることを真剣に考えて欲しい、と言ってきた(はず)だけど、義父はのらりくらりと答えを出そうとしなかった。

ところが、昨年の秋ごろだったろうか、義父が隣の人が泥棒だと言い出した。それもよせばいいのに、その方と玄関先で出会うと「泥棒!泥棒!」と大声で叫んだらしい。元々その方とは仲が悪かったので、義父は「あいつが泥棒なのはわかってる!」と絶対に譲らない。今もそう言い切ってるくらいだ。その方から民生委員さんやケアマネさんに苦情が行き、夫がお詫びの電話を入れたこともある。ところが、絶対に自分の考えが正しい、と思ってる義父は、相変わらずその方とばったり会うと「泥棒!」と叫ぶらしいのだ。ケアマネさんにも「もう、一人暮らしは限界です。ご家族の方で何とか手を打ってください」といわれてしまった。当然だと思う。証拠もないのに泥棒呼ばわりしたんじゃ、間に立つ人も当人も気の毒である。

それと前後して、とある日のこと。犬の散歩に出かけたとき、道の向こうから中年のサラリーマンが歩いてくるのに気がついた。その男の人は、とても疲れている様子で、目の悪い私にも、その人が疲れ果ててるのがわかったくらいだった。ところが、近づいてみたら、なんとその人が夫だったのである。私はすごく夫が気の毒になった。週末も名古屋へ行くことで、自分の体を休める暇もない夫。平日は仕事で手一杯なのに、その上にケアマネさんやその近所の方へのお詫びの電話もしなくちゃいけない。

だから、夫に「とにかく、同居するしないは別にして、とりあえずお義父さんにはこちらへ出てきてもらおう」と話した。夫も「そうだよなぁ。もうこれ以上他の人に迷惑かけられないしなぁ」と言っていた。

義父にこちらへ住まいを移して欲しいということは、私からももう何年も言ってきたことだった。「いつかそのうちにね・・」とその度にはぐらかされて来たけれど、もうそんなことを悠長にきいてはいられない。義父にも「もう一人暮らしは無理だと言われてるんですから、こちらへ来てもらわないと困ります」と伝えた。

ところが、年末に来るという話が、先延ばしにされ、お正月を過ぎても、義父が来る様子はなかった。

つづく