安保法制政府案の委員会強行採決を受けてー日本の民主主義の凋落と保護国化の始まり |  政治・政策を考えるヒント!

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   政策コンサルタント 室伏謙一  (公式ブログ)

数々の問題点が指摘され、そうした指摘に対する真っ正面からの答弁もなされないまま、そしてそうした問題点も解決されないまま、本日、安保法制政府案が強行採決された。(強行採決に加わったのは、自民、公明だけではない。次世代の党、日本を元気にする会、新党改革も加わった。彼らも一蓮托生、同じ穴の狢である。)

強行採決と断じられるのは、理事会の場所を野党に何の相談もなく変更し、職権で理事会及び委員会を開始するという、姑息な手段にに出たのみならず、鴻池委員長不信任動議の否決、鴻池委員長の復席を求めた直後、委員長代理の佐藤理事は「速記を止めてください。」と通常であれば審議を中断させる発言を行い、間をおかずしていきなり質疑を打ち切り、委員長の発言が議事録に記録できない状態であったにも関わらず、打切りの動議以降、法案の採決まで行い、可決されたこととしたからである。(そもそも速記を止めているのであるから、その後速記を再開する旨の発言がなければ、審議は止まったままのはずである。その中で採決することは不可能であり、採決無効との野党側の指摘は、的を射たものである。)

与野党から怒号が飛び交い、委員長は憮然とした表情で野党側を睨みつけ、佐藤正久筆頭理事が民主党の小西洋之議員を殴る様子まで映像に映し出されていた。この状況は、とても民主主義国家の議会とは言えないものである。(海外のメディアを通じて配信された映像を見た諸外国の国民は、どこぞの独裁国家と見間違えたのではないだろうか。)

この法案の強行採決を通じて、日本の民主主義は明らかに後退し、凋落したと言っていいだろう。それは強行採決という事実のみならず、憲法に反する立法を、政府が臆面もなく行い、立法府が反対の声や違憲との指摘を無視して力づくで可決させてしまったからである。

この法案については、違憲ということ以前に、同盟条約ではない日米安保条約が同盟であるとの幻想を抱き、その「同盟国」であるアメリカに協力して汗と血を流せば日本が守ってもらえるという、現実の国際政治ではあり得ない仮定を前提とし、基礎としているというこが、最大の問題であると指摘してきた。 参院の審議においては、この点を指摘した議員もいたようであるが、与党からは全く無視された。

本日の強行採決によって、我が国がアメリカの保護国化に向けて進むことが決定されたと言っていい。

参院本会議での採決はまだであるが、60日ルールの活用がなくなり、衆院本会議の再議決において自民党の良識派の造反による否決の余地がなくなってしまった以上、余程のことがない限り、可決成立は時間の問題となってしまった。

ただし、仮に本法案が最終的に可決成立してしまったとしても、直ちに施行されるわけではない。施行に必要な政令の改正や施行日を決める政令が決定されなければ、本法案は効力を持たない。

日本の民主主義は凋落し、アメリカの保護国化に向けて進み始めたが、まだそれを止めることは不可能ではない。反対し続け、問題提起をし続けること、そして、SEALDsの奥田氏も提唱しているように、来年の参院選で本法案に賛成した、自民、公明、次世代、元気及び改革の議員を落選させること、そうしたことを通じて、本法案を、法律になってしまっていても、これを廃止する法律案を参院に提出すること、そうした積み重ねによって、最終的に安保法制政府案を廃案にすることは可能なのである。その意味で、反安保法制政府案の行動は、新たな段階に入ったと言っていいのではないか。