是が非でも9月入学を導入したい勢力がいるようですが、是非反対の声を! |  政治・政策を考えるヒント!

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   政策コンサルタント 室伏謙一  (公式ブログ)

 5月17日の日経新聞の電子版に衝撃的な記事が掲載されました。国の教育再生実行会議が大学への9月入学の導入拡大を促し、国はそれに財政支援をというのです。しかもその理由が「大学の国際化を後押しするため」だとか。「国際化」なんていつの時代の話だよ、と思ってしまいます。なんと言っても「国際化」という言葉が流行ったのは30年以上も前ですから。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA160NT0W1A510C2000000/

 

 そもそも大学の「国際化」とは何なのか、意味不明なところがありますが、これまでの経緯からすれば、もっと留学生を受け入れて、留学生比率を高めるとか、英語による大学の講義を増やすとか、まあその程度の話だと思いますね。

 

 その根底にあるのは、これもこれまでの経緯、特に昨年の中学や高校にも9月入学導入推進論の時の主張を思い起こせば、人種的・民族的多様性が高まれば「いいことが起こる」、それが発展や成長につながる、英語で講義ができるようになれば発展や成長につながるという考え方。しかし人種的・民族的に多様化すれば、分断や対立が生じ、格差が生まれ、かえって発展や成長の妨げになります。(海外で一部の上澄が各国から集まって、そこからビジネス生まれたりしているという特殊な例を根拠にして、多様性がと無邪気に主張している日本人がいますが、それはGlobal-villagersというある種の民族というか人種の中での話であって、彼らとその他で既に格差や分断が生じているわけなんですが、そんなことは知らないというか関心ないのでしょう。まあこれは程度の差こそあれ、世界の各国で見られる現象で、英国の場合を分析したのがDavid Goodhartですね。)

 

 英語で講義についてもそう。まあ私が書くまでもなく九大の施先生のご著書等を読んでいただければご理解いただけますが、日本は明治以降、日本語という母国語で高等教育を受けることができるような仕組みを作り上げてきた、だから日本は教育水準は高く、発展・成長できた。一方で高等教育を外国語でしか受けられないということになれば、国内で分断が生じるのみならず、高等教育に辿り着けない国民が多数生まれ、国の発展・成長は阻害されます。発展途上国でよく見られる話ですね。

 

 9月入学導入論というのはそうした文脈でも考える必要があるわけで、端的に言って安易な導入は認めてはいけないのです。

 

 そして大学への9月入学導入は高校までの教育にも大きく影響しうることも考慮しなければいけません。(これは負の面だけではありません。)

 

 無論、個別の大学が個別の事情や判断で導入することまでは反対しません。何を隠そう私の母校である国際基督教大学(ICU)は昔から9月入学がありましたから。(したがって、特に永田町や霞が関の付け焼き刃の9月入学論者よりは、大学の9月入学に慣れてますし、実態は分かっていると思います。)

 

 そうした点も含めて考察・解説した昨年の騒動の際に収録・公開した対談動画です。巷に溢れる9月入学賛成論に騙されないためにも是非ご覧ください。

 

https://www.youtube.com/watch?v=MuncY4NnwyM

 

 またショックドクトリンという観点から、東京MXのモーニングクロス(現在は終了)で9月入学賛成論を斬った時のニュース記事はこちら。ショックドクトリンとは何かについても併せて解説しています。(そのうち掲載終了なるかもしれませんが。)

 

https://s.mxtv.jp/tokyomxplus/mx/article/202005270650/detail/