孤独のグルメ Season7
第9話
韓国チョンジュ市の
納豆チゲとセルフビビンバ
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ん? あれって?
市場で働いてる人たちの食堂なのか。
お汁粉みたいなものまである。
そういえば韓国に着いてから、
まだ何も食べてないじゃないか。
腹が減っ…。
パク) 井之頭さん。
問屋さんの電話番号聞いてきましたの
で、あとで電話して、いろいろ、聞いて
みます。
五郎) あぁ、ありがとう。
パク) じゃあもう少し、歩いてみましょう。
五郎) ええ。
**********
いかん。
俺、ハングル全然読めないんだ。
アンニョンハセヨとカムサハムニダ
だけじゃどうにもならんか。
全然ケンチャナヨじゃないぞスムニダ。
おまけに、腹が…減っている。
よし。店を探そう。
あっ、いい店が見つかりますように。
**********
ここって…
やった! 店発見。
何屋さんだかわからないけど。
この雰囲気、俺好みだし、
入ってしまおうか。
言葉わかんなくて
追い出されたらそれまでだ。
**********
ん? この匂い、納豆?
あっちはすでに宴会モードか。
すごいな。
一体何品頼んでるんだ?
早いとこ注文しよう。
メニューはどこだ?
きっと、あれだな。
でも…う~ん?
6000ウォン、だいたい600円か。
9000ウォン、1万2000ウォン。
値段だけで、
あとは何が何だかわからない。
ヒント1つない。
あれだもんなぁ。
ここはいちばん安いの頼んでみて、
出てきたもの見て、次のこと考えよう。
よし!
やれやれ。
一応、注文は通ったが、
一体俺は何を頼んだんだ。
**********
おっと、もう来たぞ。
へぇ~こんな感じか。よかった。
よし、肉も来た。
えっ!? まだ来るの?
アツッ! あぁ、よかった。
白飯があった。もう大丈夫。
鬼に金棒、俺に白飯だ。
これで終わりかな?
ウソ!? 石鍋?
600円でこの宮廷料理のような品数。
間違ってないよね?
想像をはるかに超えたこの眺め。
おかずのテーマパーク。
それにしても…。
「₩6000の定食」
これは?
コチュジャンか。
五郎) いただきます。
まずは…
これいってみるか。
「チェユックポックム
(豚肉の唐辛子味噌炒め)」
これだけでも飯5杯!
おぉ~これはいかにも、ちょい辛豚。
ネイティブ韓国味、うまい。
店員) (韓)違う違う。
ん?
え?
店員) (韓)この材料を器に入れて、
ハサミで細かく切るの。
五郎) あ~はあはあはあ…。
え~と、こういうのを、ここに入れて?
店員) (韓)そう、合ってます。
五郎) これも、ここに入れて?
店員) (韓)それで、ご飯を入れて
よく混ぜてください。
五郎) これで、この中で…。
あっ、ビビンパを作る?
店員) (韓)そう、ビビンパ。
五郎) ビビンパ?
あっ、ビビンパ、これ作る?
あ~わかりました。
自分で作る、ビビンパ。
店員) (韓)よく混ぜて召し上がれ。
五郎) カムサハムニダ。
う~ん、そういうことね。
そういうことね。
なるほど。セルフのビビンパね。
おかずだと思ったのはみんな
ビビンパの材料だったんだ。
そうとわかれば…。
でかい!
入れる前の段階で
切った方が良さそうだ。
肉も入れて…
目玉焼きも半分入れよう。
店員) (韓)違う違う。
それは入れちゃダメ。
これはそのまま食べるの。
五郎) これは、入れない?
あ~そういうことですね。
これは純粋におかずってことか。
油断できんな。
細かく切ったほうがよさそうだ。
ビビンパを食べるのに
こんな作業があるとは。
結構切ったぞ。
あっ、手がつってきた。
よし、こんなもんか。
で、ここに白飯投入。
当然コチュジャンはいくでしょう。
店員) (韓)そしたらこれね。
五郎) カムサハムニダ。
「チョングッチャン(納豆チゲ)」
豆腐も野菜もグツグツと
納豆パワーの濃厚鍋!
お~納豆汁。
へぇ~日本の納豆汁とは別物だ。
店員) (韓)これも入れるともっと
美味しくなるわよ。
五郎) これも入れるんですか?
店員) (韓)そうです。
五郎) あ~。カムサハムニダ。
え~ビビンパに納豆? 大丈夫か?
セルフビビンパ。これは楽しい。
だが、やったことないだけに
直感が問われる。
よし、いい色になってきたぞ。
オッケー!
それに、これだ。
できた。俺だけの、オレジナルビビンパ。
「五郎’sセルフビビンパ」
驚愕の旨さ!
納豆汁とビビンパ 奇跡のコラボ!
よし!
五郎) いただきます。
お~これは劇的にうまい。
うんうん…これは今までに
食ったことないビビンパだ。
納豆がきいてる。
ビビンパに納豆汁というミスマッチ。
しかし、そこには
俺の知らない世界があった。
これだけいろんなものを適当に混ぜて、
こんなにおいしくまとまるって、
どうなってるんだ?
まさにビビンパマジック。
で、結局これは何だろう?
「オデン」
ちょいと甘めな箸休め
さつま揚げの、甘辛あんかけ。
うまいけどこれはビビンパに
入れるもんじゃない。
危ないとこだった。
よし、ここでサンチュ使うか。
味噌はここで使うんだな。
そこに、ビビンパドーン。
お~いいじゃないか。
コリアンスタイルだ。
おいしい韓国ご飯。
となると、
こういうのもありなんじゃ…。
ん~ナイス! キムチうまし!
この絶妙な酸っぱさが実にうまい。
いや~うまかった。
初のセルフビビンパとしては大成功だ。
だが果たしてこれが俺のベストなのか?
いやいや。
よ~し、未知の対戦相手の手の内が
少しわかったところで、第2セットだ。
サンチュは入れるべきか否か。
あっ、こんなところに青唐。
これは?
ゴマ油。これも使える。
よし。新たな武器を手に入れた。
さて…
すべてを放り込んで、そして、
切るべし、切るべし、切るべし!
コチュジャンを入れて、
今度はゴマ油に、青唐も投入だ。
決め手が納豆汁と分かったから、
もう少し増量だ。
そして、ビビンパは、混ぜだ。
肩の力を抜き、腕全体の力が
しなやかに器に伝わるうように、
混ぜるべし、混ぜるべし。
よ~し、これでどうだ?
「五郎’sセルフビビンパ
第2形態」
美味さの進化 止まらず!
お~いい!
一杯目より格段に進化している。
うまい! 誰がなんと言おうと
絶対にうまいぞ、俺のビビンパ。
うんうん、ゴマ油がいい仕事をしている。
新たな仲間が加わって、
おいしさの輪が更に広がっている。
こんなにも心躍るビビンパは初めてだ。
ここで、さつま揚げをはさんで、
よし、味に変化がついた。
いや~うまい。
これはまだまだ奥深いぞ。
初めて来たチョンジュの街で、
最高の飯に出会えたことに、
心からカムサハムニダ。
もしも、
またこの街を訪れることがあれば、
この納豆汁ビビンパに再挑戦しよう。
そして更なる高みを目指そう。
そして見るんだ。
誰も見たことのない、
納豆汁ビビンパの頂点を。
五郎) ごちそうさ…。
店員) (韓)ヌルンジです。
えっ!? まだ何かあるの?
店員) (韓)消化にいいから
ちょっとだけでも食べてね。
五郎) あっ、カムサハムニダ。
店員) (韓)これによそって
食べてください。
「ヌルンジ」
香ばしさ香る 優しいスープ
ほう、おかゆ的な。
こういうシメ、おもしろいな。
あっ、お焦げなんだ。
それにしても600円でこの品数って、
どうなってるんだ?
いいのか? こっちが心配になる
ほどのサービスだ。フッ。
さすがに腹いっぱい。
うまかった。
五郎) ごちそうさまでした。
**********
いや~驚いた。
コリアンパワーの、恐るべきおもてなし。
電・五郎) はい、井之頭です。
電・パク) お疲れさまです。
パク・スヨンです。今終わりました。
電・五郎) あぁそうですか。お疲れさまでした。
電・パク) これから、ソウルに戻りますが、
この近くで食事しますか?
電・五郎) あっ、いや、食事は済ませました。
ケンチャナヨです。
電・パク) でしたら、さっきの場所で。
電・五郎) 了解。あっ、「おいしかったです」
って韓国語で何て言うんですか?
電・パク) マシッソッソヨですが。
電・五郎)そうですか。
いやいや、なんでもないです。
じゃあ、さっきのところで。
五郎) マシッソッソヨ。
**********
言葉が通じないままオーダーチャレンジする
五郎さん。勇気あるなあ。でも、そういう冒
険も海外だからこそやってみたい気もするし。
韓国の焼肉はいろいろ出てくるらしいとは聞
いてけれど、想像以上のサービスぶり。あま
り食べられない年頃にはきついかも~トホホ。
とはいえ、やっぱりセルフはやってみたい!
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