☆アメンバー100人記念☆
風月さまよりリクエスト
『カメラマン蓮様とグラビアキョーコちゃん』のお話♡












「ちょっと、貴島さんっ!
  どこに向かってるんですかっ!?」


キョーコは手を引かれたまま貴島に問いただすと、


「手っ取り早くお金を稼げるところ。」


やっぱり……!と思ったキョーコは踏みとどまる。


「……っ!
  私っ……身体は売りませんからっ!」


「うん?大丈夫だよ。
  よくあるA☆Vや風☆俗なんかじゃないから。

  ちょっとオジサンに写真撮ってもらうだけー。
  君くらいの年の子なら結構みんなやってるよー?」


「オジサン……?写真……?」


とりあえず身売りのような話ではないと分かって安心したキョーコだが、オジサンに写真を撮られると聞いてしまっては、やはりあまりいい気はしなかった。

が、しかし……


「……ショーちゃんのためっ……
  仕方ないわ……。」


小さい頃から当たり前のように尚に尽くしてきたキョーコ。
オジサンにちょっと写真を撮られるくらいは我慢の範囲内と自己暗示をかけた。



*  *  *



たどり着いたのは無機質な雑居ビル。
足音の響く薄暗い階段を昇って、重たい金属の扉を開ける。


「いらっしゃーい!
  待ってたわよー。」


すると中から出てきたのは、可愛らしい小さな女の子。


「よろしくー。
  テンちゃん、今日も可愛いね。
  ホント30代とは思えないなぁ~。」


「こらっ!秀ちゃん、それは禁句でしょ!?」


貴島と戯れ合うテンの容姿と年齢のギャップにキョーコが驚いていると、


「あら、可愛らしい娘ね。
  お名前は?」


「……最上、キョーコです……。」


「よろしく、キョーコちゃん。
  私はテン。
  美容業界の魔女と呼ばれる女よ♪」


テンはメイク道具を手に、決めポーズ付きで自己紹介をした。

“美容業界の魔女” という響きにキョーコがうっとりとトリップしかけた時、貴島が廊下の奥の扉を開けた。

すると、そこは大きな窓から明るい自然光の射し込む、広いリビングのような一室。
大きな照明器具や、カメラ、モニターなどが設置され、その中心にはソファーやベッドも置かれた撮影スタジオとなっていた。

また、そのスタジオの中にいたのは、すらりとした長身の日本人離れした容姿の男が一人。


「あっれー?
  今日、敦賀くんだったんだー。」


「やぁ、貴島くん。
  久しぶりだね。」


話に聞いていた “オジサン” ではないらしい様子に、キョーコは恐る恐る中を覗く。


「もー、敦賀くん売れっ子カメラマンだからさぁ。
  素人はもう撮らないのかと思ってたよー。」


二人の会話の様子を探るようにキョーコが見ていると、


「キョーコちゃん、とりあえずメイクしちゃいましょっ。」


テンがメイク室へとキョーコを招いた。


「……今……何て…………」


「ん?メイクしちゃいましょ?」


「ーーーっ!!
  メイクゥゥッ……!!」


キョーコは生まれて初めてする憧れのメイクに心踊る気持ちでテンの方へと向かった。

メイク室には可愛らしい装飾の施された綺羅びやかなコスメ達が沢山並んでいる。
それを見たキョーコが目を輝かせていると……


「キョーコちゃん、こういうの初めて?」


テンはキョーコのメイクの準備をしながら話し始めた。

ぶんぶんと大きく首を縦に振るキョーコ。


「ふふふ。キョーコちゃんお肌もつるつるだし、とってもメイク映えしそうだわ。
  でも最初はナチュラルで行くわね。
  多分蓮ちゃんもその方が撮りやすいだろうから。」


「……蓮ちゃん……?」


聞き慣れない名前に、テンに聞き返すキョーコ。


「ええ。さっきスタジオにいた、キョーコちゃんの担当になるカメラマンよ。
  “敦賀蓮” は今、グラビアの世界で有名な売れっ子カメラマンなのよ。」


「敦賀……蓮……。

  って、えっ!?グラビアッ!!?」


グラビアと聞いて驚くキョーコ。


「えっ?キョーコちゃん……

  やだ、秀ちゃんたら、ちゃんと説明してなかったのね……。」


聞いてないです!と困惑するキョーコだが、


「でも、秀ちゃんが連れてきたってことは……、
  キョーコちゃん、お金がどうしても必要なのよね?」


涙目でうんうんと頷くキョーコ。


「それなら、うちはかなり健全よ?
  特に蓮ちゃんならその辺問題ないわ。
  今まで撮影したグラビアアイドルとの間違いは一度もないから安心して?」


「本当ですかぁぁぁ……」


確かに女性のテンも同席ならば間違いなど起こり得ないだろうとキョーコも渋々納得をした。


「うん。
  はい!出来たわよ♪」


話をしながらもきっちりとメイクを仕上げたテン。
テンの言葉にキョーコが鏡を見てみると……


「きゃぁぁぁっ!
  ありがとうございますぅぅぅ、ミューズ様ぁ!!」


「ミューズ……?」


初めてのメイクの出来映えにキョーコは心の底から感服した。



*  *  *



「お待たせー♪」


テンに連れられて、少し恥ずかしそうにしたキョーコもスタジオへと入る。


「ええっ?キョーコちゃん!?
  めっちゃ可愛いじゃん、俺ストライクかもー!」


「あ、ありがとうございますっ!」


貴島のストライク発言にも、キョーコは腰を90度に曲げて社交辞令と捉えたお礼を述べた。


「じゃあ、俺も出来上がり楽しみにしてるからー!
  敦賀くん、イイの頼んだよー。」


「じゃあ、秀ちゃんこれ、今回の分ね。」


「おっ、サンキュ!これで俺も無事に事務所に戻れるよー。」


テンから現金の入った封筒を受け取った貴島は、そのままスタジオを後にした。


「じゃあ、蓮ちゃん。
  私も行くから、メイクチェンジするなら呼んでね。」


「ありがとうございます。」


「えっ?ミューズ様いなくなるんですかっ!?」


「そうよー。
  グラビアは、カメラマンと二人っきりでの撮影がセオリーよ♪
  じゃあキョーコちゃんも頑張ってねぇ!」


「そんなぁぁぁ……」


パタンと閉めきられた扉に手を伸ばし続けるキョーコ。


「じゃあ、……最上さん?
  とりあえず始めるけど……」


話しかけられ、初めて蓮の顔をしっかりと見たキョーコ。
鼻筋の通った顔立ちに切れ長の眼。
シャープな顎のラインにサラサラの髪。

ショーちゃんより格好いいかも……と暫しの間見惚れてしまったキョーコ。

すると、蓮はーーー


「最上さん……

  よくその身体つきでこの話受けたね……」


と、フッと冷めた眼つきでキョーコの身体を上から下までまじまじと眺めた。


「ーーーーーーっ!!?

  悪かったわねーっ!!
  でもグラビアだなんて知らなかったのよっ!!
  それにお金がどうしても必要なんだから仕方ないじゃないーっ!!」


一瞬でも蓮を格好いいかも……と思った自分を取り消したキョーコであった。




⇒ 密室の写真撮影 (3) へ続く


web拍手 by FC2