阪神が18年ぶりに「アレ」した。(=優勝した)

 

岡田彰布監督が「優勝」のことを「アレ」と呼び始め、選手もファンも「アレ」を連発した。首位を独走したことで世間に知れ渡り、ついに「アレ」が昨夜現実化した。間違いなく2023年の流行語の上位に入ると思われる。

 

 

 

 

実は「アレ」には、同様の事例が過去(晋:3~5世紀の中国)にある。

 

銭(お金)のことを「阿堵物(あとぶつ)」と言った故事である。「阿堵物」とは、「アレ」という意味を持つ古い中国語の指示代名詞である。

 

以下、その故事である。

 

 

古代中国、晋の時代において大臣であった王衍(おうえん)は清廉潔白な人物であった。一方、妻はケチで欲張り。王衍はそのことを嫌い、決して「銭」という言葉を口にしなかった。そこで、妻は何としても夫に「銭」と言わせようとして、夫が寝ている間に下女に命じてベッドの周りに銭をまき散らして歩けないようにしておいた。翌朝、起きた王衍は、下女を呼び、「アレ(阿堵物)を片づけなさい」と言った。

 

 

私は企業経営者ですから「銭」を集めることが仕事です。利益を出し「銭」を得なければ、経営は成り立ちません。したがって「銭」をより多く得ること、つまり売上や利益の向上が経営の目標になります。

 

ただ「銭」を多く集めることは、良いことばかりではありません。「銭」集めは、気づかぬ間に「目標」から「目的」に変わり、王衍の妻のように、欲張りな経営姿勢が表面化します。そうなると、「ブラック」と呼ばれるような経営に陥ります。最近起きた中古車販売会社の事件はその象徴です。

 

「銭」はとても大事だが、追いかけ過ぎは醜いもの。さらにはリスクも伴う。

 

このことを王衍は知っていたからこそ、「銭」という言葉は口にするのもはばかられ「阿堵物」を使ったのだと思います。

 

昨年、岡田氏が阪神タイガースの監督を引き受けた時、このチームは優勝から18年も遠ざかっていました。だから「優勝」という言葉を使うことすら、はばかられた。

 

だから、奥ゆかしく「アレ」を使ったら、その微妙なニュアンスが受けた!

 

あれ、これ、それ・・・などの指示代名詞。とても地味で目立たぬ言葉ですが、使い方次第では、非常におもしろい言葉だなと感じ入りました。