サーフボードをリデザインする 6 | protoplastico surfboards & designs  

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日曜大工の道具で素人がゼロから始められる、かんたん!木製サーフボード「プロトプラスティコ」 
サーフボードを自分で作ってみよう!!!

サーフボードのあるべき形を再構築するコラムの第6回です。

前回の記事では、サーフボードのシェイプの微妙な違いをお客さんに分かってもらうには、自分で作ってもらうのが一番良い、という話でした。

一本作ってみると色々なものが見えてきますからね。次にカスタムオーダーをするにも細かい指定が出来るようになりますし、やっぱりシェイパーって凄いなって事になります。

そこで、今回のテーマは

【サーフボードは何故自分で作れないのか?】

です。

サーフボードを自作するためのブログを2年間続けてきたのですが、苦労して獲得したノウハウやアイデアを惜しまずに載せているにもかかわらず、一向にセルフビルダーが増えません。

ブログのアクセス数は増えているのに何故でしょうか?何か障害があるのでしょうか?


《作る場所が無い?》

あなたがサーフボードを作ろうと思い立ったら、まず最初に確保すべきなのは製作スペースです。フォームボードを作ろうとしたら最低でも6畳位のスペースが必要です。しかもそれは誰からも文句を言われない場所でなければなりません。

理想的なのは屋根付きの駐車場ですが、製作中は車を停める場所がなくなってしまいます。



《近所迷惑なので音を立てられない?》

あなたがちょっとサーフボード作りに本腰を入れて電動プレーナーを購入したとしても、トリガーを引いた途端にあまりの騒音の大きさに愕然とする筈です。

住宅地では夜は当然のこと、マンションならば昼間に作業するのも難しいでしょう。


《粉塵が大量に出て困る?》

ご近所の苦情をどうにかやりすごして電動プレーナーが使えたとしても、部屋の中には大量の粉塵が撒き散らされます。プレーナーの排出口にに掃除機を直結して吸塵しても、到底回収出来るような量ではありません。

気がつけばあなたのベッドルームは真っ白です。



《レジンの臭いが外に漏れる?》

何とかシェイプの終わったブランクスを眺めて、あなたはすっかりご満悦ですが、それを一体どうやってグラッシングするつもりですか?

どれだけ丁寧に部屋の中を養生しても、レジンの強烈な臭いはそれをくぐり抜けて外に漏れますし、近所の公園でお巡りさんを警戒しながら青空グラッシングするのはかなりの度胸が必要です。


《サンディングの粉塵はどうする?》

なんとかグラッシングはしたものの、フィニッシュのサンディングでは更に細かい粉塵が出ます。フォームの粉塵と違ってこれは臭いが強くて、しかも有毒です。



ちょっと考えただけでも、なんとまあ問題の多いことでしょうか。


これだけの困難を乗り越えて、自分だけのサーフボードを作り上げたあなたは、よほど執念深く慎重にことを進めたか、ご近所や奥さんに貢ぎ物をして苦情をどうにか抑えたか、人里離れた田舎に住んでいる人でしょう。

普通に考えるとサーフボードは自分で作れる物ではないのです。


また、今でこそサーフボード製作に必要な材料がネット販売で買えるようになりましたが、以前は一般の人がブランクスを買うことすらできませんでした。


敷居が高いなんてのを通り越しています。到底、無理です。


陶芸でも、染色でも、工芸でも何でもDIY教室があって気軽に楽しむ事ができる世の中なのに、今だにサーフボードはお店で買うモノです。


何故だろう?


サーフボードをお客さんにDIYさせる方法が、真剣に検討されてこなかった事を逆に疑問に思う訳です。

東急ハンズに行けば、どんな分野に対してもお手軽なDIYキットがある時代にですよ?


そんな商品がなかった理由を考えるに、

《そもそも作りたい人が居ないからなのか?》

そんなことはないでしょう。ブログの閲覧数をみても興味がある人は少なからずいる筈です。

《コストが合わないからなのか?》

これはそうかもしれません。サーフボードは自作するより買った方が安いからです。高いお金を出して、まともに乗れないような半端なボードを作るような物好きは少ないかも知れません。


《前述した環境に対する幾つかの困難をクリアできないからか?》

これもそうでしょう。サーフボードを作る人たちは製作環境を整えることで問題を解決してきましたので、改めてワンルームマンションでもご近所に迷惑をかけずにセルフビルドできる方法を考えなくても良いのです。

本人はマスクさえあれば粉塵や臭気くらいは何とも思わないのですから。

50年続いてきた従来のサーフボードの製法を変えるよりも、サーフボードを作れる製作スペースを道具の使用料込みで1時間幾らで一般の人に提供した方が理にかなっています。

これもまた、小規模サーフボードメーカーの生き残る道でしょう。カリフォルニアのガレージビルダーに脚光が当たって関心が高まっている今ならばかなりの需要がある筈です。

勿論、実際に今でもやっている所はあるんですが、正直言ってレンタル使用料が高すぎます。

そりゃそうですよね。素人が出入りして仕事場が使えなくなる訳だし、いちいち教えるのはめんどくさいし、素人は使い慣れない高価な道具類を次々と壊すし、怪我をするし、貴重なノウハウも盗まれてしまう。


何れの理由にしても、現状でサーフボードを自作するのは非常に敷居が高いのです。



、、、でもね。


作ったら楽しいんですよ。本当に。
こんなに楽しいことはないですよ。


この喜びは全てのサーファーに味わって欲しい。


【サーフボードは自分で作れるもの】


そんな風に世の中に変えてしまうのが、この分野でのイノベーションだと思うんです。

【セルフビルド】という全く新しい市場の開拓です。




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