仲良しの有元さんに
「中嶋はゴールデンウイークはなにしてるの?」
とフワッと聞かれたのがいつ頃だったか。
有元さんは律儀な方なので、いかなるオファーもお電話で連絡をくださる。
そしてその前には必ず
「今から電話していい?」
という奥ゆかしい恋人のようなLINEをくれる。
「ミュージカルシーンに出て欲しいんやけど。
振り付けは小野村優ちゃん。後のメンバーは優ちゃんが呼びかけてくれている」
というオファーに返す返事で
「全員優ちゃんにあつめてもらえ」とお断りをした。
ダンスはもちろん大好きだが、かれこれ何年もまともにダンスのレッスンにも行っていない。
独特の一人芝居でしか舞台に上がっていない。
いよいよ体重も大台に乗ろうとしている。
なにも40代に指の先を引っ掛けた、顔も普通の私をわざわざ使うことはない。
シーンを華やかに彩ってくれる若くて美人でダンスの上手な人を1人でも多く舞台に上げなさい。
その方がきっと面白いはずだ。と丁寧にお断りをしたところ、電話の向こうの有元さんに
「そんなのはどうでもいい。カヨコの世界観を分かってくれている中嶋に出て欲しいんや!」
とド直球にお願いされた。
加えて、明るい楽しいシーンになるから、上手いとかでなく楽しく踊ってくれたらそれでいい。と。
とにかく過去にたくさん酒を奢ってもらっている恩があるのでひとつ引き受けることにした。
後日、SNSでダンスシーンのメンバーが発表されたとき、現役バリバリのみなさまの中に混ざれる気がせずすぐに有元さんに「話がちがうやないかい!」とLINEした。
有元さんも「こんなことになると思ってなかった」と言っていた。
それほどに豪華なメンバーだった。
余談ですが、SNSでの発表に際して自分の写真を用意してほしい、という指示があったのですが
本当に自分の写ったろくな写真が無くてなんとかかき集めたのがこの3枚
これは色んな方から
「もっとなんとかなったやろう」
と言われた。
まじでこれしか無かった。
まだこれからも役者を名乗るなら、年に一回はまともな顔の写真を撮っておこう。と反省した。
とかなんとか、文句ばっかり言っていたがやっぱりダンスは楽しい。
短いシーンだけれど優ちゃんが本当に丁寧に、外側からも内面からも何を表現したいかをわたしたちに伝えながら引っ張っていってくれた。
ミュージカルメンバーたちも本当に達者な人たちばかりで、1を聞いたら10も20も理解して補える人たちでとにかく集中して稽古は進んだ。
そして本番はご覧の通り、我々が登場すると笑いが起こる。二朗さんのやりたかったことはきっときちんと表現されていたと思う。
かれこれ10年以上の付き合いになるヨネちゃんからも
「くーちゃんってちゃんとダンスできるんや…」
と言われたのだからなんとかなっていたんだろう。
上手前のあたりで拘りの表現をしていたのも、ちゃんと見つけてくれた人たちがいたのでとても嬉しかった。
二朗さんとも度々話したことがあるのだが。
若い演劇人とはどこで知り合えるのだろうか?
もう若い演劇人なんて居ないのではないだろうか?
こんなにも手間のかかる、労力のかかる効率の悪いことをやりたがる若者なんてもう居ないのではないだろうか?
しかし今回たくさんのひとまわり以上年下の若い表現者の方々とご一緒できて、こんなにしっかりした人たちが演劇をやっていたのか。と驚いた。
1日目終了後は、彗星マジックの新しい劇団員の方々ともすこしお食事させていただき。
10年ちょっと前の自分自身もきっとそうであったように本当に若くて希望にあふれてキラキラしていた。
どうか悔いなく、楽しく演劇を続けて欲しい。
まわりには気の狂った先輩方がいる。
どうかしているけどきっと力になってくれる。
やりたいことを思いっきりやってほしい。
健康に気をつけながら。
そして中之島の本番の約1週間前
夜分に有元さんからLINEが届く。
「今電話大丈夫?」
もしあのタイミングでわたしが断ってたら、あの人たちどうするつもりだったんだろう???