Trioplanトリオ? | シネレンズとオールドレンズで遊ぶ!

シネレンズとオールドレンズで遊ぶ!

カメラマンヨッピーのブログ。シネレンズやオールドレンズなどのマニュアルフォーカスレンズをミラーレスカメラに装着して遊び、試写を載せていきます。カメラ界でまことしやかに語られているうわさも再考察していきます。

M42 MOUNT SPIRAL さんの記事やMarkusKeinaths Photohomepage で見てTrioplan100mm F2.8の写りの衝撃に出会いすっかり魅入られてしまった僕はたて続けに3本のTrioplanを購入を購入した。その3本のトリオプランで『トリオプラ ントリオ』という記事を書く予定が、勢いあまって4本そろえてしまい『トリオプランカルテット』に
なってしまった。(笑)



Trioplan100mm F2.8 シリアルナンバー2755095 1961年
Trioplan 50mm F2.9 シリアルナンバー1082997 1948年
Trioplan 50mm F2.9 シリアルナンバー2151800 1958年頃
Trioplan 25mm F2.5 シリアルナンバー910543 1938年頃

トリオプランの誕生は古く1900年頃とされる。1930年のカタログには出てくるので1930年には確実に存在したのであるが、それ以前の資料が見当たらない。
今回は1930年代、40年代、50年代、60年代のトリオプランがそろっている。それぞれの焦点距離と年代による描写の違いを検証していきたい。

Trioplan 100mmF2.8 1961年






4本の中でも最も新しい100mm。戦後のMeyer Optikらしい概観とつくりである。
もちろんコーティングされている。




PENで使用すると200mm相当になるのでやや窮屈な感じが否めないですが、アメージングな写りです。見事なBubbleが出てます。
今回の写真はと撮りっぱなしですが、中心部の解像度がしっかりしていて周辺は甘くなるトリプレットの特徴が良く出ていると思います。

Trioplan 50mm F2.9 1958年



いわゆる戦後型のトリオプラン。
Vコーティングもされている。M42 MOUNT SPIRAL によるとCarlZeissのTコーティングのMeyer版なのだそうだ。確かにブルーコーティングは戦中のTコーティングに似ている。

Trioplan 50mm F2.9 1948年



戦後の作であるが、戦中戦前型のTrioplan。光学は戦後型とほぼ一緒だと思われる。Meyerのコーティングは1952年からでそれ以前はノンコートのレンズとなる。レンズの鏡胴がEXAKTA Xenon 50mm F2とほぼ同じなのが興味深い。

Trioplan 25mm F2.5 1938年頃



4本の中で最も古い1936年製。Meyerの1936年のカタログに出てくる8mm用のレンズの16mm版ではないかと思う。Trioplanとしては珍しいF2.5である。

以上4本のTrioplanですがざっくり分けると戦前物、戦中物、戦後物、近代物の4本である。
Trioplanの誕生は1913年。典型的なトリプレットレンズになります。この6年前にパウル・ルドルフがHugo Meyerに入社し有名なKinoplasmatを設計します。それまでTrioplanはMeyerを代表するシネレンズでした。

トリプレットは1894年に登場した3枚構成のレンズです。3枚ながらサイデルの5収差をある程度補正できる当時としては画期的なレンズでした。設計した のはCooke社のデニス・テイラー。Cooke社は当時撮影用レンズ製作のノウハウがなかったためTaylor&Hobson社に製作を依頼す る。こうして製作されたのが有名なCooke Tripletである。トリプレットは中心部の解像力は優れていたが、周辺部の写りが甘かった為、1902年に登場したテッサーにその座を奪われる。テッ サーは4枚というシンプルな設計にもかかわらずシャープで四隅まではっきり写る当時最高峰のレンズであった。

話はTrioplanに戻るが、テッサー全盛期もMeyerはせっせとTrioplanを作り続ける。それどころかガウスタイプが全盛の50年代以降も Trioplanの生産は続き、1966年まで生産は続く。これで終わりかと思ったらDomiplanという後継版を発売し、1970年代も生産を続け た。Meyerがなぜこんなにトリプレットを作り続けたか真意は分からないが、50年以上も単一ブランドを作り続けるからにはちゃんとした理由があっての ことだと思う。

しかしこのTrioplanというブランド、ごく一部のマニアの間でもてはやされる以外ほとんど気にされることはなかった。そのTrioplanが復権したのは100mmF2.8のブレイクであろう。
幻想的な100mmF2.8のボケは、ほかのレンズでは再現できない。BabbleBokheといわれるシャボン玉が連なったようなボケを求め世界中のマ ニアがこのレンズに殺到した。かくいう私もその一人だ。Trioplanの価格は一気に跳ね上がり500ドルを超えさらに値上がりを続けている。それまで 100ドル前後で取引をされていたことを考えるとこの急騰ぶりは驚きである。

さて今回用意した4本の写りを比べてみたいと思う。
まずは接写性能から







ん・・・!!
だんだん悪くなっている。
どういうことだ?
25mmと50mm(NEW)を拡大してみよう




開放の描写は年代が新しくなるにつれて甘くなっている。
そして戦前型の25mmと戦中、戦後型の残りの3本では写りが根本的に違う。

どうやらTrioplanについて言われている通説は正しいようだ。

Triopalnについて言われている通説とは、
1, 戦前型と戦後型では設計が違う。
2, 戦前型のほうが写りがよく、戦後型もだんだん写りが落ちている。

次にF8まで絞ってみよう
まずは25mmF2.5

コントラストは向上しないが解像力のある範囲は広がる。
背景のボケが健在でなおかつ絞り羽の形が出ないのは興味深い。
開放時と比較してみる

画質は向上しているが背景の柔らかさはキープしたままである。
ある意味特殊な写りである。
一部の根強いファンがいるのはこの辺が理由かもしれない。

次に50mmF2.9(Old)

こちらのレンズは絞ることでわずかながらコントラストが向上しています。
周囲の柔らかさは健在
開放と比較してみると

やはり画の雰囲気を保持しながら解像感が上がっている。
では戦後型は

絞ったときの抜け感は最も良いです。
Vコートがコントラストの向上に寄与しているようです。

絞ったときも背景が柔らかいのはTrioplan共通の特徴のようです。
絞ると解像感とコントラストの両方が向上して一気に現代レンズのような抜け感が出てきます。

最後は100mm

ややコントラストが低いもののこちらもバランスの取れた写りです。
比較です

傾向ほ他のレンズと似てます。
50mmよりややコントラストが低いです。

総合してみてみると
開放時の性能は古いレンズのほうがよい。F8あたりまで絞るとコートレンズの良さが出てくる。といった感じであろう。共通した特徴である絞っても柔らかい描写というのは他のレンズではまねできない。
特に戦後型のレンズは絞り羽の形が円形ではないにもかかわらずボケに絞りの形があわられない。
実は結構実用性の高いレンズかもしれない。

100mmF2.8の名を一気に不動のものにしたBabble Bokheであるが、これは戦中戦後型のレンズを開放で使用したときのみ現れるようである。少しでも絞ってしまうと玉ボケの外周の虹の輪が消えてしまいただの玉ボケになってしまう。
フィルム時代は100mmF2.8の面白いBabbleBokheに気づいても、コントラストのあまりの低さに開放での撮影を敬遠されていたのではないか と思う。現代のデジカメは開放のコントラストの低さをRAW現像で補うことが出来るようになったため一気にこのレンズの利用価値が出たのだと思われる。
ちなみに100mmF2.8の撮りっぱなしのJpegと現像済みデータはこんな感じである。




現像って恐ろしい(笑)

ということは現在底値の50mmたちも現像で復活するのでは?


Trioplan50mmF2.9 Old

Trioplan50mmF2.9 New

現像ってすばらしい(笑)
何も大枚をはたいて100mmを買わなくとも底値の50mmでも十分楽しめるようです。


25mm F2.5

50mm F2.9 Old

50mm F2.9 New

100mm F2.8
4枚ともLightroomにて現像
Trioplanはそのまま使ってオールドレンズとして楽しんでも良し、RAW現像と組み合わせてファンタジーな写りを楽しんでも良しと懐の深いレンズであるらしい。




出典: M42 MOUNT SPIRAL:http://spiral-m42.blogspot.jp/2013/05/meyer-opti
無一居:http://www.photo-china.net/column/meyer.html