福島原発 溶融 チェルノブイリ 放射線量 シーベルト 再臨界 メルトダウン 被害範囲 半径 石棺 | ЯαYの日記

ЯαYの日記

信なくば立たず

福島第一原発ですが、3号機と4号機の建物の爆発と火災が起きて、それらの報道ばかりでずっと重要な1号機~3号機の炉心の状態について殆ど報道が無くて心配していました。
とにかく炉心は冷却中で、それが成功してるらしいので取り敢えず安心です。

原発の炉心の状態としては、既に制御棒を入れて(外部)核分裂を停止させていて、そして核燃料棒というのは、前回の日記で書いた通り、融解温度の高い被覆管というもので防護はされています。

核分裂が停止してるので、その余熱と放射性崩壊(場合によっては自発核分裂)以外の発熱はありません。
核分裂以外での発熱を崩壊熱といいます。
崩壊熱については、炉心停止後すぐにだとまだまだ残っています。
半減期の短い不安定な原子が、強い放射線を放出してるからです。

核分裂の余熱については以下で考えると良いです。
各物質には「熱容量」という定数があります。「比熱容量」というのはこれを一単位重さあたりになおしたものです。
これは物質によってどれだけ熱量を取り込めるかの違いを表します。
例えば鉄と木材を同じ時間温めたとして、どちらが冷えるのが早いでしょうか?
木材ですよね。これが熱容量の差です。
と言いたい所ですが、木材と鉄の場合は密度が全然違うのでそこも考えないといけませんが。
では炉心での燃料棒(ほぼウランで構成されてると考えて良いです)と水との冷却について考えてみますと

密度 ウラン19050kg/m3 水1000 kg/m3 
比熱容量 ウラン120 J/kg・K  水4200J/kg・K

一見ウランの方が密度が大分高いように見えますが、水の方が熱容量がずっと大きいんです。
それらを考慮して考えますと、
1立方メートルあたりにウランは2286kJに対して水は4200kJとなり、水の方が熱を吸えるんです。
つまり核分裂を停止させた状態では(津波被害を受ける前なので)、まだ水が満杯に入ってますからその水だけで燃料棒からかなりの熱を吸える訳です。
なぜなら上記の熱容量の差に加えて、炉心での水量というのは燃料棒よりずっと多いからです。それを全て蒸発させる程の熱転移というのは相当なものがあります。

スリーマイル島事故では、燃料棒の一部露出だけでその部分が融解を起こしました。
だから今回の福島原発の事故でも、各大新聞は燃料棒一部露出だけで「融解っ(`・ω・´) 融解っ(`・ω・´)」と騒ぎ立ててました。
しかしスリーマイルの場合は、運転中の事故なんですね。
今回の事故は(外部)核分裂を完全に停止させた後の事故です。
事故が発生した時点での熱量が全然違います。
参考までに臨界状態でのウラン235のエネルギーは一原子あたり200MeV、普段から生じる崩壊熱のエネルギーは4.679 MeV。初期エネルギーだけでこれだけ違います。津波がすぐに来て冷却機能を喪失した訳ではないので、熱量だと更に違うと思います。

因みに上記に被覆管を加味して考えますと、その主要素材であるジルコニウムの密度は6511kg/m3、比熱容量は276J/kg・Kですので、上記より更に水の方が冷却に有利となります。

もし被覆管が溶けて、燃料棒の中の放射性物質が更に格納容器の外、つまり大気に漏れ出ていたら、放射線の計測数値はあんなものではないです。
参考に数字を出しますと、今回の福島原発はその付近での最大線量で400mSvでした。
チェルノブイリ原発事故直後、そこから3㎞離れたプリピャチ市での放射線量は、10000mSvでした。これが放射性物質が漏れて外に出てる状況の値です。しかも原発付近ではなく3キロも離れてる。距離を合わせればもっと開くでしょう。
しかも放射性物質は恒常的に放射線を出すので、発表にあったように放射線が弱くなったり強くなったりはしません。
この強弱は多分水から核燃料棒が露出した部分から出てる部分が大きいと思います。水を被せればその値が減るという事かと思われます。
データからすると、現時点では核燃料棒の損傷はそれ程はなく、内部の核燃料は少量しか漏れていないと結論出来るのではないでしょうか(全く漏れて無い訳ではないとは思いますが)。

※この日記を書いた後気になって計算をしてみました。結果は次の日記の通りです。これを書いた時点では見通しが甘かったです(´・ω・`)

尚この点について「政府や東京電力は本当の事を言って無い」という意見もありますが、これは難しいと思っております。
まず発表がかなり迅速な事です。
とても「この情報は出さない、この情報は出す」等吟味してるとは思えません。
それにもし情報の取捨選択をしてたとしても、このような短時間ではどこかに矛盾が生じてしまう筈ですが、今の所各情報にそこまでの矛盾点は無いと思います。
何よりも日本政府はIAEAやアメリカ原子力規制委員会に協力を要請しています。政府が何かを隠したいなら、そのような外部機関を呼ぶ事はあり得ないと思います。
あと今黙っていても、もし原発に多大なダメージがあるならいずれそれは必ず露見します。
もし政府なり東電なりが黙ってたり嘘をついてたとしたら、多分刑事責任を問われる位のものかと思います。
必ずバレる嘘を流石につかないとは思います。

さて、しかし私の予想に反して炉心溶融が起こったらどうなるかです。

原子炉というのは、まず核燃料がペレットといってセラミック状に焼き固めてあります。
この融点は2700~2800℃位で、これを超えないと溶けて核物質は大量には放出されません。
その核燃料を前回日記でも書いたジルカロイ合金で覆います。融点は約1800℃。
更にその燃料棒を水で満たした圧力容器で覆います。圧力容器はステンレス製で、ステンレスの融点は合金の配合によって違いますので1400~1500℃となります。
更にその外側の格納容器は鋼鉄製で、福島原発はどのような合金構成か知りませんがやはり融点は1500℃を大きくは超えない程度だと思います。

上記を見てみると分る通り、外側に行くにつれ融点が下がって来ます。
なので結局一番内部にある核燃料が溶けるまでいってしまったら、それ以外の外郭等役に立たないんですね。
しかしこの事は逆に言えば、核燃料の外側の防壁は「水での冷却が大前提になっている」という事になります。
だから原発関係の一番最初の日記で「水の注入が生命線」だと書いた訳です。
その注入設備を緊急用も含めて海側に置いて、津波で多くが流されて今回の原発は機能不全に陥りました。
特に自家発電用の燃料タンクの設置の仕方からして、とても津波対策をしているとは思えませんでした。
全ての機材を地下に埋めろとは言いませんが、この点について、国民からの強い批判は免れないでしょう。
「想定外の津波だった」という事で片づけて貰っては困りますよね。

つまり水の注入に失敗して、原子炉の中が空になって、核燃料が溶ける所までいってしまいますと、外郭は確実に破られ放射性物質が外に流出する事になります。
ここまで来ると既に制御棒の外側に出てしまうので、再臨界も有り得て大変危険です。

そこで核燃料が核爆発すると書いてる人もいるのが困りものです。
まずあり得ません。
なぜなら原子爆弾と構成が全然違うからです。
原子炉の物質構成では
ウラン235 3% ウラン238 97%
に対して
原子爆弾では
ウラン235 80% ウラン238 20%
です。
同じウランでも核分裂に対しては、全然違う性質を持ちます。
ウラン235は激しい核分裂を起こす性質があるのですが、ウラン238は中性子を吸収して核分裂を妨げる核毒の効果があります。
つまりあまり核分裂が激しくならないように、原子力発電では大量にウラン238を入れてるんです。

更に上記の原子爆弾のウラン235の構成比率でもまだ足りません。
当り前ですが、作ったその場で爆発しては意味が無いからです。
どうやって起爆させるのかというと「爆縮」といって、まず中に爆発を向けて(これは通常の爆薬で行います)急激に内部を圧縮させます。
そうしてようやく核爆発を起こせる密度構成に届くという事になります。
この爆縮は原爆開発でも相当困難を伴ったようで、人為的に発生させようとしても非常に難しいのです。
とても原発の核燃料の融解で、核爆発が起こせるようなモノではありません。

とにかく炉心溶融を起こさない為には、水の注入がとても重要なのはご理解頂けたと思います。
当初この水の注入しても水位が上がらずに燃料棒の露出が収まらず、水の注入に失敗してるのではとか、水漏れが起こってるのではないか、等の報道がありました。これが真実なら大問題です。
炉心から水漏れとか、そんな粗雑な造りがあり得るのかと思いますよね。このフォローだけでもして欲しいです。
最近の報道の主軸は使用済み核燃料プールだったのですが、それよりも1号機~3号機の炉心の状態の方がずっと本質的なので心配してました。
ようやくそれらの冷却状態についての大きな報道が得られましたが、困ったものです。
もしこれが実はウラでうまくいっていない場合でもその途中経過は殆ど報道せず、ヤバい状態が顕在化した時点で突然大きな記事になるのでしょうが、こういうのは本当に止めて欲しいと思います。