核燃料棒の温度を計算で求めてみた 冷却期間 破損 溶解 溶融 発熱 制御棒 原子炉 炉心 海水 | ЯαYの日記

ЯαYの日記

信なくば立たず

1号機の燃料棒溶解との報道があったけど、燃料棒の状態がどうだか計算してみればいい。
んでやってみました。

電力会社による福島原発等のスペックを基にやりました。
以下ソースです。
http://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/intro/outline/outline-j.html
http://www.fepc.or.jp/learn/hatsuden/nuclear/nenryoushuugoutai/sw_index_01/index.html
あと物理定数の類は前回日記のを使用しました。

1号機の圧力容器内の体積は

2.4×2.4×3.14×20=361.728m^3

燃料棒なのだけど、これ上記の構造を見れば分ると思うけど、中はかなりスカスカです。
なので本来これを圧力容器から殆ど引く必要無い位なのだけど、一応引いておきます。
核燃料棒の体積は

0.14×0.14×4.35×400(本)=34.104m^3

ウランの体積は

69㌧×1000÷19050(密度)=3.622m^3

なぜ核燃料棒にウランは含まれてるのに体積を別に計算するかというと、余熱計算をする時には純粋にウランだけが必要になるからです。
ウランはジルカロイ合金で覆われてますから、その分も含めてやはり大きく取って5m^3としておきます。

ここから熱量を計算します。
事故直後1号機に入ってた水の量は

361.728-34.104=327.624m^3

それが通常運転だと40℃の水温で回してます。
すると、運転停止とともに水の循環も止まってしまったと仮定した、圧力容器の中の水だけで除去出来る熱量は

327.624×(100℃-40℃)×4.2MJ/K=82,561MJ

更に100℃の水を水蒸気に換えてしまう「気化熱」というものがあるのですが、これが体積分全部蒸発してしまう熱量を計算します。

327.624×2.257MJ/K=739MJ

この82,561+739=83,300MJというのが、圧力容器水一杯分の除去出来る熱量です。

次にウランに含まれる運転時の余熱計算です。
ウランの熱は運転中は40℃の水を巡回させて冷やし続けていて、直径1㎝程度の太さという事もあり、内部に熱はそれ程籠らないと思います。
運転停止時にどの程度熱を持ってるかなのですが、多分200℃も無いでしょう。
しかし一応大きくとって500℃として計算します。

3.622×500×2.286MJ/K=4140MJ

このように余熱自体は大した事はありません。
次に以前の日記にあるように、核燃料棒は(外部)核分裂を止めても、核分裂生成物等の原子崩壊等による熱が残ります。
これを崩壊熱というのですが、例えば核燃料棒保存プールの水を蒸発させてしまった熱はコレです。
この熱の推移をグラフで示すと以下のようになります。
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ソースはこちら
http://d.hatena.ne.jp/arc_at_dmz/20110319/nc_plant_decay_heat

事故から一日位で急激に減っていきます。
でも以下の計算で分る通り、2日目以降も案外熱量が多いです。
これを広義積分すると熱量を出せるのですが、関数が分らないですし、詳しい数字も解らないので区分求積法も使えません。
知っても正直面倒くさいのでやりたくないですが(^ω^;)(;^ω^)
なのでこれも大雑把に大きく取って計算します。
一日目のは実際の崩壊熱より大分多い熱量での計算となります。
二日目以降は上記のグラフの通り、かなりなだらかになるので、熱量はほぼ長方形の面積計算で近似しても誤差はあまり無いと思います。

50MJ×60分×60秒+10MJ×24時間×60分×60秒=1,044,000MJ

これは例えば丸1日水を注入しない状態での熱量です。
ただし1日目は最初の1時間の熱量が大きいので、2日目以降は864,000MJ毎日熱を発します。
崩壊熱は減ってくので次の日は518,400MJ位になりますが。
圧力容器一杯分の水が冷やせる熱量は上記のように精々83,000MJですから、毎日相当水を入れないと駄目ですね。
11杯分とか必要ですが、丸一日ですから今の所この量の水の供給は出来てるみたいです。
ただし海水を注入してるので、現在の東北地方の海水の水温は6~7℃ですので、これを10℃と考えて計算しますと
圧力容器一杯分が約123,000MJとなるので、これだと大分冷やせますね。
計算してみると崩壊熱はかなりの量です。

さて2号機が以前2時間燃料棒を露出してましたが、その間の熱量を考えますと

2時間×60分×60秒×10MJ=72,000MJ

となります。
2号機のウランの体積と、

94×1000÷19050≒5m^3

燃料棒は他に被覆管がありますからそれを合計して体積8m^3とすると、体積あたり1℃上昇分の熱量は

8×2.286MJ=18.288MJ

となります。
これで上記の2時間分の崩壊熱を割りますと

72,000÷18.288≒3937℃

となり、つまり核燃料棒を水で冷やさず露出したままですと、2時間で約4000℃の温度上昇になります。
そうすると燃料棒融解するには十分な温度上昇なのですが、こういった大雑把な計算ですと2倍や3倍程度の誤差は十分生じる可能性があります。
でも一桁は違わないでしょう。
だから2号機の2時間に及ぶ「空焚き」は非常に危険なものだったのです。
前回日記は楽観的過ぎました。すみません(´・ω・`)

この計算通りですと燃料棒融解して、この温度だと圧力容器や格納容器の融点をゆうに超えてるので、外に放射性物質が漏れ出てる筈です。
そうなるとそもそも作業員がぶっ倒れるレベルなので、今の所そこまでなってないので一応大丈夫だったようですが。

1号機や3号機は燃料棒一部露出はあっても、空焚きはないので何とも言えませんが、2号機の核燃料棒の破損はかなりのものかもしれません。
現在セシウムが検出されていて、それは核燃料を覆ってる被覆管の破損がなければ漏れない核物質なのですが、多分2号機から出てるのかなと思います。
どんなに頑張っても、水蒸気等漏れる箇所はありますので。
それに2号機は圧力抑制室が爆発によって破損してます。炉心の中のものが外に出やすいです。

因みに2号機の空焚きは、注水ポンプ車の燃料切れです。
完全な人為的ミスですが、あまりにも初歩的ミスなので当時の現場の混乱と動揺ぶりが伺えます。
しかしこれが大事故になる可能性があったのは否定出来ません。
スリーマイル島の事故は人為的なものでしたが、今回の福島原発でも一番怖いのシステムエラーよりも、ヒューマンエラーだと結論出来るという事ではないでしょうか。

因みに東京電力は、精度の高いシミュレーターを持ってると思います。
原発のような自然環境と完全に切り離されたシステムは、かなりの精度でコンピュータ上で再現出来るんです。なので核燃料棒の状態を正確に把握してる筈。
それを公開すべきですね。
菅さんも原発問題詳しいなら、SPEEDIよりもまず燃料棒の状態のシミュレーションを公開させるべき。
なぜなら排出された放射性物質量が分らなければ、放射性物質の拡散だけ議論しても意味が無いからです。