学生時代、何を隠そう私はバンド活動にいそしんでいた。
ま、サークルでね。
ギターもちょこっと齧った事があり。
へたくそすぎてやめたけど。

バンドのメンバー(ボーカルのわたくそ(!?)、ドラム、ギター、ベース)とはもう履修科目が違う時以外はいつも一緒にいた。

大学生なんて2時間かけて通ったけど、記憶に残ってるのはバンド活動とバイトだけ。
…高い学費払って私立大学だったのにネ。
お父さんお母さんごめんなさーい。


その中でも、一番親しかったのはギターのK。
たまたま誕生日が一日違いでいつも誕生日にはプレゼント交換しあってた。
(今年もプレゼント。うちには娘がいるし、Kも忙しくてなかなか会えなかったのでネットで注文して届けた)
(何をあげたかは後述します)

ちょうど2年生の時だった。
Kのお父様の容体があまりよくないというのは少し聞いた。
そして野暮用で出かける準備をしていたらベースのMちゃんから電話があった。
珍しいな、と思ってたら。

Kのお父さんが亡くなったと教えてくれた。
私自身もハンマーで頭を殴られたようだった。

昔Kのうちに泊りに行った時、お父様にお会いしたけど、優しそうな方だった。

数日後、サークル内ではなく外のライブハウスに出演予定だった。
これはキャンセルかな…と思っていたけど、Kから直接メールでやってやるぜ!ときたので、他のメンバーともこれは頑張るぞと決めた。

夏の暑い日だった。天気がすごくよくて。
私たちはその事に一切触れずに、地下鉄になった時からまるで躁状態かのようにテンション高かった。
リハーサルが終わって、近くのコンビニでごはん買って日陰がある公園のようなところで食べてた。

私のくだらない話にノってきたり、他のメンバーもやんややんやと面白い事を云う。
Kも笑ってた。何事もなかったかのように。
なんかあるだけで、面白くて大笑いしていた。

でも本当は内心泣きたかったのかもしれない。
Kだけじゃない。私たちも。
夏の空の下で、泣きながら大笑いしてたんだ。

ライブは大成功!

ギターでもなんでもいい。
彼女が笑顔でいられるものが欲しかった。

***

数日後、今度はサークル内でのライブ。(国内試合みたいなもんか?)
おんぼろライブハウスを自分たちで機材運んでセットして、って感じ。
めーんどーくせー

後輩のまだまだ未熟な演奏を聞いて苦笑い。
その時は私はKの横に座って一緒に見てた。
何がきっかけだったか覚えてないけど、あの時の泣きながら彼女の云った言葉が今でも忘れられない、


「もう、元気で、なんでもないフリするの疲れちゃった」


その言葉に私も涙が止まらなかった。
私はKを連れて外へ出て、外で座り込んで話を聞いた。
そう、こーゆー時はちゃんと話を聞く事。私が口を挟まずに。

普段は人に触れられるの嫌いなKだけど
私は手をつないで腕を絡めて、抱きしめて。

話を聞きながら、私も泣いた。
ずっと我慢してたんだろうな、と思うと…
とにかく一緒に泣いた。


その日も天気がよかったけど、そんなに暑くなかった。


Kは元々すごく美人な子。
涙を拭って、前を向く。秋の到来が近い風に髪を揺られた彼女の横顔。
すごくすごく綺麗だった。


親友が辛い思いしてるのに、何も出来ないと無力な自分を嘆いたけど…
…できるじゃん。

不謹慎化もしれないけど、友人のために泣ける自分が誇らしかった。

ひとしきり泣いて、お互い笑顔に戻る。
この事はベースのMちゃんもドラムのRちゃんも知らない。
私は絶対言わないから。

ライブ中も、終わってごはん食べに行った時も、Kはずっと私の側にいた。
それがなんか嬉しかった。

***

数年後。
私は彼女に大きく救われる。

娘が生まれて、2か月のGCUでの入院からようやく退院した時。
私の手からはちっともミルクを飲んでくれなくて。半ばノイローゼ。産後うつに近かった。娘を可愛いと思えない。抱っこも出来ない。家出もした。
そんな状態を伝えたら仕事が休みの日に、他の予定キャンセルしてまで、私の地元まで来てくれた。
いっぱいしゃべったし、いっぱい笑ったし、いっぱい泣いた。
5時間くらい話してた気がする。

おかげで元気になれた。
久しぶりに娘を抱っこする。
その変貌ぶりにパパは驚いていた。

***

去年の誕生日、私はスタージュエリーのブレスレットを送った。
ハート形のルビーが可愛くて。
…そして、お揃いにしたくて自分の分も買った。(双極性障害特有の浪費のせいでもあるw)
お揃いを身に着ける事で、私には最強の味方がいるんだっていつでも思い出せる。

***

いつもありがとう、かおり。
これからも末永くよろしくね。

大好きだよ。

 

 

 

PS.友人のために泣ける。それが嬉しかったけど、その数年後、今度は別の友人と話して涙する事もあった。

それはまた、別の話。