妄想話2 さくら幻想1 | Kis-My-父さん 二階堂高嗣裏応援blog

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Kis-My-母さんと言うブログをやっています。
こちらはスピンオフ的な裏ブログです。
本家(Kis-My-母さん) で書けないことやアメ限記事中心でゆったりやってます。


こちらではまたまたお久しぶりです。
受験生の方にエールを送る気持ちで書きだしたお話でしたが、すっかりシーズンが終わってしまいました。(笑)
以前キスブサでニカちゃんが演じた先生がモデルです。

 
 


 

さくら幻想

 


その日、あたしは傷心だった。

  

 
陽が当たる窓際の席は1月だというのに冷たい風がさえぎられているせいか、少しポカポカと暖かいくらいだった。

 すべての回答欄を埋めて余った時間を持て余すように3階の窓から校庭を眺める。

誰もいない校庭に1匹のわんこがトコトコ歩いてきた。


「のら犬? 珍しいよね?」


でも手綱を引きづっているので、飼い主の手を振り切って逃げてきたのかもしれない。


しばらくすると、小さな女の子とお母さんが校庭に入ってきた。

母親が手綱を握り3つくらいの女の子はその手綱を欲しがって地団駄を踏んでいるように見えた。

「離しちゃったんだね。」

クスクスと微笑ましくて笑みがこぼれた。

わんこは柴犬っぽい。人懐こい黒目がちな目には見覚えがあった。

シバっぽいもんね。

声に出さない独り言をつぶやき、斜めについた頬杖を外し、教室の前を見ると、教壇に両肘をついて、傷心の原因がこっちを睨んでる。

前を見ろ! と目配せと口パクで言っているのが分かる。

担任の二階堂先生だ。

もっとも、生徒からはニカちゃん先生とかマメシバとか、まともに呼ばれてるのは聞いたことがない。

まだ睨んでいる・・・・・

相変わらず、お口をアヒルちゃんみたいに尖らせて、目つきはお世辞にも良いとは言えない。

だけど、どこか愛嬌があって、右目の下の涙ほくろがセクシーとか言っていた子がいたっけ?


セクシー・・・・・ぷっ!!思わず吹き出してしまう。


今の、オフってる先生には無縁のワードだ。


「終わってもまだやってる人いるからなーー!!静かにしてろ!」


少しだるそうに、カスカスの声で言った。

今日は一段とかすれてる。

きっとタバコの吸いすぎだ。

やめればいいのに。

教職者のくせにヘビースモーとかありえない。

あたしは先生に向って、あかんベーをして見せた。

気が付いた先生は、むっとした顔をして、思いッくそアカンベーをやり返してきた。

ありえなくない?!

子供かよ。

ふんって顔をして見回りに歩き出す横顔がしてやったり的な、右の口角を少し上げてニヤリと笑ったように見えた。

ほら。あんたはやっぱりありえなくない!?だらけのダメせんせ―なんだよ。

もっとちゃんとしてくれないから、あたしは先生として見れないんじゃない。

だいたい教員試験本当に受かったの?

悪いけど、あんまり頭よくなかったよね? きっと。

多分あたしの方が賢いよね?

テストの点だけで言うと。

コツコツコツ・・・・

先生の着ている真っ青なセーターがとても鮮やかな色で教室のどこを歩いていても色のオーラで気配が分かる。

今、あたしの席の通路の後ろに差し掛かった。

ゆっくりこちらに歩いてくる。

あたしの背中がレーダーみたいに先生の生態を察知している。

その時、頭のてっぺんに、ゴツンとこぶしが落とされた。


「マイコぉ、おまえさぁ、早く終わっても見直しとかしろよ。」


へーーー、話しかけるんだ。何にもなかったような顔して。


「見直さなくても満点だもん。」

「かわいくねーなー。」


だから嫌いなんだよね?


「さっきさぁ、先生にそっくりなマメシバが、脱走してきてたよ。」


あたしはわざと平静を装った。


「はぁぁぁ?!」


クラス中からクスクスと笑いが起こった。


「おまえほんっと、許さない!」


本当はどうでもいいくせに。


昨日の言葉を思い出しそうになった。


いや、あれはもう封印した。何もなかったことにした。



先生は時計を見て、

「はい、おわりーーーー!後ろから集めて来て。」とムッとした顔で言った。


高校生活最後の定期テストの初日は終わった。

残すところ、あと二日。

後はもう卒業式を残すのみだ。



あたしは優等生の問題児だった。


きっと多くの先生が、あたしのことを扱いづらい思っていたはずだ。

二階堂先生もきっと例外ではなく。

人をなめた態度を取っていたし、あんたたちに教わることは何もないって顔をしていて、ムカついていた先生も多いと思う。

向こうから近寄って来る先生も生徒もほとんどいなかった。

だけど、先生は違った。


「おまえおもしれーーな。」って。


「ねーー、ねーー、そんなに頭がいいのってどんな気分?」


「おまえさぁ、将来政治家にでもなるの?」


最初は頭悪いとしか思えなくて、全く相手にしなかった。

でも、視線を合わさないあたしの顔を覗き込んで、


「おもしれーーーー!」

と笑った顔がマジ天使かと思った。

見たことのない、邪心のない顔で。


あたしはあの時、生まれて初めて恋に落ちたのだ。


自分より明らかIQの低い男に。

自分でもびっくりしていた。

先生は、いかにも見た感じは体育教師っぽいのに、どこか違和感があった。

所作がエレガントなのだ。

ゴツくはないのに、肩幅が広いせいか、がっしりして見える。

でも、太くはない。

腕とかは華奢なくらいだ。

不思議なことに、なぜか一つ一つの動作が美しいのだ。

その意外性もあたしの目を引いた。


運動神経はずば抜けている。

何かの国体の選手だったと言っている子もいたけど、詳しく聞ける間柄の友達はいないから分からない。

いつだったか、授業中に、生徒に乗せられて、バク宙をしたことがあった。

きれいな弧を描いて、あの決して小さいとは言えない身体が軽く宙を舞った。


不覚にも、かっこいいとつぶやきそうになった。


もちろん声には出さなかったけど。


それなのに体はバキバキの筋肉質ではなく、どこかほわんとしている。

色が白いせいかもしれない。

すべてがどこかアンバランス。


ほわんとしているのに時々目つきが野獣のように鋭い。

目が悪いからだと前に誰かに言っているのを聞いたことがあるが、そんな感じではない。


野生の生き物が獲物を狙っている時の目のようで、ちょっと怖い。


あのアンバランスさはどこから来るのか、あたしは興味を持った。



でも、もうそれも知りえそうにもない。


次回に続く。