ライ・クーダー『ファースト・アルバム(1970)』 | Apple Music音楽生活

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レンタルCDとiPodを中心とした音楽生活を綴ってきたブログですが、Apple MusicとiPhoneの音楽生活に変わったのを機に、「レンタルCD音楽生活」からブログタイトルも変更しました。

YouTubeで、ちょっと貴重な映像を見つけましたので、紹介したいと思います。


ライ・クーダーのデビュー・アルバムのプロモーション用にワーナー・ブラザースが制作したと思われるドキュメンタリー・フィルムです。



ライ・クーダーは16歳にして、音楽活動を始め、1960年代半ばには、タジ・マハールらと組んだライジング・サンズ、キャプテン・ビーフハート等のバンドで活動。
1969年にローリング・ストーンズのアルバム『Let It Bleed 』に参加後、満を持してファースト・アルバムを発表します。


1970年の作品
Ry Cooder/Ry Cooder

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ライ・クーダーの音楽は低音質の音源しか残っていない、オールドタイムのアメリカの音楽を、当時にタイムスリップして聴いたら、こんな感じなのかなと思わせるものがあります。

このジャケットを初めて見たとき、「銀色のレトロ・フューチャーなタイムマシーンで、アメリカン・ルーツ・ミュージックを探究する為に、未来から、過去の世界に降り立ったライ・クーダー」 というようなイメージが浮かびました。
この乗り物の正体はドキュメンタリー・フィルムの冒頭で判明するのですが。



さて、このミニ・ドキュメンタリーにはライ・クーダーの語りと演奏風景とともに、ファースト・アルバムから以下の4曲が使用されています。


簡単に、それぞれの曲について、登場順に説明しておきます。


"How can a poor man stand such times and live"

この歌は、アルフレッド・リードという人よって書かれ、世界大恐慌を引き起こした1929年の株価暴落の一ヶ月後に、レコーディングされた不況時代の歌。
彼のライブではよく演奏される曲のひとつで、ライブ・アルバム『Show Time』やデビッド・リンドレーとのデュオでも再演されています。
スライド奏法とスライドバーを使わないフィンガー・ピッキングの両方を織り交ぜた見事な演奏を披露しているので、要注目!


"Do Re Mi"

ボブ・ディランに多大な影響を与えた、1930年代から40年代に活躍したフォーク・シンガーウディ・ガスリーの作品。いわゆるフォーク・ソングというよりフォークロア(民俗音楽)という感じのする曲ですね。
こういうスライドなしのフィンガー・ピッキングの奏法にも定評のある人です。


"Available Space "

このアルバムの中ではライ・クーダー、唯一のオリジナル曲。
現存する演奏者の中では最高のスライド・ギタリストと称される彼のオープンGチューニングのスライド奏法が楽しめるインストゥルメンタル・ナンバー。


"Goin' Brownsville"

1920年代末からメンフィスで活動したブルースマンスリーピー・ジョン・エスティスのナンバー。
この曲でライはマンドリンを弾いています。ギターと並んで彼の得意とする楽器ですね。
オリジナルではヤンク・レイチェルというブルース・マンドリンの名手が演奏しているようです。




では、ライ・クーダーのミニ・ドキュメンタリーをお楽しみください。




あのジャケット写真の奇妙な乗り物はキャンピングトレーラーだったんですね。
少し調べてみましたが、エアストリームというオハイオ州のキャンピングカーのブランドが1930年代頃から製造しているようです。
自動車で牽引するために、ボディにはアルミニウムを使用して軽量化を図っています。
日本ではあまり、見かけることがありませんが、アメリカではこういうキャンピングトレーラーで旅行しているんですね。いいなあ。


参加ミュージシャンのクレジットには、このアルバムのプロデュースも担当したヴァン・ダイク・パークス(ピアノ)、フライング・ブリトー・ブラザーズのクリス・エスリッジ(ベース)、 リトル・フィートのリッチー・ヘイワード(ドラムス)とロイ・エストラダ(ベース)の名前が見られます。やはり、ルーツ・ロック系の布陣ですね。


ライ・クーダーの作品は4作目の 『Paradise And Lunch』(1974年)以降、テックスメックス(アメリカ南部のメキシコ系音楽)に始まりハワイ、沖縄、インド、西アフリカ(マリ)、キューバへとフィールドを拡げてワールド・ミュージック化していきますが、このアルバムと『 Into the Purple Valley 』 (1971年)、『Boomer's Story 』 (同じく1971年)までのライ・クーダー初期3作品ではフォーク、カントリー、ゴスペル、ブルース、ジャズなどのアメリカン・ルーツ・ミュージックのエッセンスが存分に楽しめる内容です。


また、彼の創り出すサウンドは優れてBGM的です。
そこに流れているだけで、一瞬にして場の空気を変える力を持っています。
80年代以降、数多くの映画作品で音楽を担当していることも、そのことを物語っています。
私がライ・クーダーの音楽に最初に魅入られたのも、ご多聞にもれず1984年のヴィム・ヴェンダース監督作品のロード・ムービー『Paris,Texas』からでした。


子どもが小さい頃、よくキャンプに行ってました。
夜にバーベキューする時に、ライ・クーダーをBGM として流しながら酒を呑んでいると、アメリカの広大な大地を旅しながら野営をしているような気分に浸れました。
よろしければ、お試しあれ(笑)