第5回「キング・オブ・キングス」(DVD) | 新稀少堂日記

第5回「キング・オブ・キングス」(DVD)

 第5回は、「キング・オブ・キングス」(DVD)です。宗教には、それぞれに尊厳があります。私は無宗教ですが、それぞれの宗教者の主張を尊重することには、異議はありません。昨日、善光寺が、聖火リレーのスタート地点の地位を辞退したことには、大いに敬意を表するところです。同じ仏教者として、チベット問題に心を痛めたとの主張には、共感を感じます。


 キリスト者またはハリウッドは、キリストの事績とか、彼の映像化に、問題があるとは考えず、随分映画化されました。一方、ムスリムの主張としては、ムハンマドとかアラーを、実写として映像にすることを禁忌としてきました(多くは、光として描かれています)。私自身、三度ほど、翻訳された「コーラン」(岩波文庫版、全3冊)を読んだことがありますが、コーランが偶像を否定した記述には、気付いたことがありません。

 このキリスト物語は、極めてオーソドックスです。四大福音書を総合的に再編集したような内容になっています。キリストの事績を知るには、最適のテキストになっています。しかし、・・・・。私の好きなキリストをテーマ・モチーフとした映画としては、「最後の誘惑」、「ギャザリング」、「スティグマータ 聖痕」の3作品が特に好きです。


 「最後の誘惑」は、磔刑で死ななかったキリストの物語です。天使により、最後の瞬間、天使により救われます。その後、幸福な家庭生活を送った後、死の床につきます。そこに現れたのは、かって彼を救った天使です。彼は、実は悪魔だったのです。キリストは、選択を迫られます。このまま家族に見とられながら、幸福な死を選ぶか、それとも、磔刑の瞬間に戻るか、・・・・・。キリストは最後の選択をします・・・・・。


 「ギャザリング」は、興味本位で磔刑を観た集団が、ある事件を契機に集まるとの意味です、彼らは罰を受けます。世界中での惨劇を、永劫に見続けることです。若い女性が主人公です。彼女は、ある街にやってきますが、交通事故で、記憶を喪失します。そこで、ギャザリングの真実に出会います・・・・。トリック・ムービーです。


 「スティグマータ」は、死海文書がモティーフです。四大福音書ほか新約聖書に書かれていない、キリストの当時の言葉が記載されています。ある女性が、スティグマータの症状を発症します。スティグマータとは、キリストが磔刑の際、受けた傷の痕跡です。宗教的興奮の中、発現されるヒステリー症状だと言うのが、科学者の意見です。では、彼女に起きていることとは、・・・・。


 ですが、原点は全て、「キング・オブ・キングス」です。キリストの事績を知った上で、キリスト物語のヴァリエーションを観るのが正解かと思います。