第25回「ハサミ男」(ミステリー) | 新稀少堂日記

第25回「ハサミ男」(ミステリー)

 第25回は、「ハサミ男」(ミステリー)です。最近、女子高生殺害事件が連続して、発生しました。残念ながら、いずれの事件も、未だ未解決です。このハサミ男も、女子高生殺人事件を扱っています・・・・。


 かって、アガサ・クリスティは「アクロイド殺し」で、掟破りの叙述ミステリーを書きました。ミステリー・ファンには、評判が悪いと思います。しかし、クリスティは多くのトリックを遺してくれました。


 「ハサミ男」では、犯人は一人称で語ります。ある意味で、犯人は最初から分かっています。捜査陣につきましては、三人称による叙述です。章割りにつきましては、犯人サイドは、「××」と数字で表記され、捜査陣につきましては、「第××章」と印されています。


 これが、アクロイド殺しとは一味違うトリックを構成しています。そして、「18」は、最大のトリックを駆使しています。私は、.ルール違反と考えますが・・・・。そのため、この章につきましては、ラストで、詳細に引用されます。


 犯人は、多重人格者です。「医師」という別のキャラクターが存在します。犯人のキャラクターがリアルなのです。こういう事件が、実際起こりましても不思議ではありません。ミステリーではなく、一般的なクライム・ノベルとして書きましたら、大変な傑作になったと思います。


 それでも、この作品は記憶に残るミステリーとなっています。未読の方には、おすすめミステリーです。犯人のターゲットに対する事前調査には、現実の事件を想起させるものがあります。

(5月23日捕捉)小説は、犯人が第3の「ハサミ男」事件を計画することから、始まります(犯人は、「ハサミ男」として既に二件の殺人を犯しています)。平日は、小規模出版社で、アルバイトしています。正規社員になろうという希望はありません。会社の繁忙期を避け、休暇を取り、犠牲予定者の身辺・日常行動を詳細に調査していきます。犯人は、自殺常習者です。もう一つの人格である「医師」から、自殺に失敗するたびに、揶揄されます。


 調査段階で、「ハサミ男」の模倣者により、同様の手口でターゲットの女子高生は殺されます。「ハサミ男(犯人)」は、現場にやってきたもう一人の人物と共に、第一発見者となります。別人格の医師は、犯人探しをそそのかします・・・・。こうして、ハサミ男の模倣犯探しが始まります。女子高生の葬儀のシーンは、手を抜かず描かれています。それも、犯人サイドと、捜査サイドとの両面から描かれています。トリックは、叙述です。