第43回「家畜人ヤプー」(小説) | 新稀少堂日記

第43回「家畜人ヤプー」(小説)



 第43回は、「家畜人ヤプー」(小説)です。ブログディンナムとか、フウイヌムという固有名詞を聞きまして、すぐ分る人は少ないと思います。「ガリヴァー旅行記」に登場する国名です。有名なところでは、リリパット(小人国)とか、ラピュタですが、後者は宮崎駿監督の「天空の城 ラピュタ」として広く知られています・・・・。


 プロデグディンナムは、巨人国です。そして、馬が支配する国がフウイヌムです。支配されるのは、卑しい人間であるヤフーです。


 「家畜人ヤプー」が書かれましたのは、進駐軍支配の傷がいえていない頃です。白人へのコンプレックスが残っています。それが、結晶しましたのが、この作品です。当初発表されましたのは、SM雑誌のようです。単行本化されましたのは、1970年です。当時、覆面作家であった沼正三氏は、三島由紀夫氏ではないのかとの憶測が流れていました。


 主人公の麟一郎は、恋人のクララとUFOと遭遇します。その空飛ぶ円盤は、宇宙帝国「イース」のものでした。イースは、女権が優位な帝国であり、共通言語は英語。日本人は、家畜となっています。両脚羊(食材としての人間)としてだけでなく、改造され生体家具としても使われていた・・・・。


 麟一郎とクララは、帝国へと連れて行かれます。麟一郎に待ち受けるおぞましい運命とは、・・・・。この小説の面白さは、イースで使われる多くの普通名詞が、日本語を語源にしているところです。強引な牽強付会(こじつけ)には笑えますが、日本語に対する知識・ユーモアには、感動さえ感じます・・・・。


 究極のコンプレックス小説であり、M小説ですが、作者の知的側面に驚嘆させられる作品でもあります。それが、三島由紀夫氏が著者ではないかとの憶測を呼んだ一因かと思います。