第9347回「浅田次郎短編 その8、ろくでなしのサンタ、ストーリー、ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第9347回「浅田次郎短編 その8、ろくでなしのサンタ、ストーリー、ネタバレ」

 第9347回は、「浅田次郎短編 その8、ろくでなしのサンタ、ストーリー、ネタバレ」です。短編集「鉄道屋」に関しましては、今回で終りです。最後に取り上げるこの作品は、10ページ余の掌編です。映像化するのであれば、三太には若かりし日の西田敏行さんがぴったりです。そして、三太の肝っ玉母さん役には・・・・、そういう女優が思いつかなくなりました。


「その8、ろくでなしのサンタ」

 柏木三太が保釈されたのはクリスマス・イブの日でした。引受人として出迎えたのは、三太のおふく

でした。「誘われても、事務所には関わらない方がいいよ」、三太の逮捕理由はポンビキ行為でした。おふくろに連れられ、中華街で饅頭を買いに行きます。


 三太が思い出したのが、北川という同房の中年男でした。北川は唆(そそのか)されて、勤務しているメッキ工場から一億円相当の金の地金を横領しました。どう見ても、悪いことをしでかすような男ではありません。理不尽なことですが、そんな男が最も重い刑を受けそうな事態になつています。


 聞けば聞くほど、テキトーに使われたことが明らかですので、同房の者から憐みとも侮蔑ともつかぬ同情を寄せられた男です。「おっかあ、十個ほど余計に買っておいてくれ」、北川にはおふくろと妻だけでなく、小学6年と3年の娘もいます・・・・。


 そして、三太が駅前でありったけの金で買ったのが、馬鹿でかいスヌーピーのぬいぐるみでした。ミッキーマウスでもよかったのですが、でかいほどいい、というのが三太の選択基準でした。手では持ちきれませんので、店員に手伝わせ背中に背負います。


 「ばばあには饅頭、娘にはスヌーピーと・・・・、いけねえ女房のこと忘れてた」、残ったわずかばかりの金でシクラメンの鉢植えを買います。そして、北川から聞いていた住所のアパートの階段を上り、プレゼントを置きます。あとはピンポン・ダッシュの要領で逃げ出します。


 姿が見えないように隠れている三太の耳に、「わあサンタさんだ!」と子どもの悦ぶ声が聞こえます・・・・。三太が気になったのが、本当のサンタクロースが橇(そり)に乗ってやってきたらどうしようということでした。


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