第9349回「北村薫のミステリー館 その18、バトン・トゥワラー マイベスト2、ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第9349回「北村薫のミステリー館 その18、バトン・トゥワラー マイベスト2、ネタバレ」

 第9349回は、「北村薫のミステリー館 その18、バトン・トゥワラー ジェーン・マーティン著、+マイベスト2 ストーリー、ネタバレ」です。「北村薫のミステリー館」(全18編)も今回で終りです。文末にマイベスト2と次点を記すことにします。


「その18、バトン・トゥワラー」ジェーン・マーティン著(村上春樹氏訳)

 わずか数ページの掌編です。冒頭と末尾に、ひとり舞台であることを意味する表記がなされています。


 主人公は黒人女性です。バトン・トゥワリングを通じて、いかに自分が豊かな気分にいられたか、そして、挫折をいかにして克服できたか、観客席に向かって静かに、しかも熱く語っていきます。そして、決して自分はニガーではなくバトン・トゥワらーであるかを強調します・・・・。


 『 いいてすか。私はこの私の銀色のバトンをあなたのためにここに残していきます。・・・・   照明がフェイド・アウトする。 』



「マイベスト2及び次点」

 このアンソロジーは、正しくはミステリ(推理もの)ではありません。絵本などを含め、広く文学をミステリの範疇ととらえています。そのため、私の作品に対する評価も、大きく作者の意図と質に拠っています。


 なお。番号は順位ではありません。URFを付しておきますので、興味がありましたらアクセスしてください。

 

1. 「滝」(奥泉光著)

 120ページほどの中編です。教派神道に帰依する少年たちの山岳行に焦点を合わせ、少年たちの意識を追っていきます。このアンソロジーをブログに取り上げましたのも、この作品が収録されていることが大きく影響しています。素晴らしい中編です。

http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-12041752568.html


2. 「フレイザー夫人の消失」(ベイジル・トムスン著)

 19世紀の三都を舞台にしたメタ・ミステリとも言うべき推理小説です。夫人と部屋の消失、ふたりの探偵はいかなる推理を展開するでしょうか・・・・、ミステリ・ファンにとっては楽しい一編に仕上がっています。

http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-12039067779.html


次点 「きいろとピンク」(ウィリアム・スタイグ著)

 絵本で描く人形2体の実存証明と創造主(神)の出現・・・・。子どもには難しすぎますが、面白さは伝わると思います。

http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-12037179951.html


次点 「二世の契り」(ヘンリイ・スレッサー著)

 『 新興宗教と金と輪廻転生、短編ではもったいないほどのモチーフをうまく処理しています。この小説で登場する教祖アーチボルト・シング博士は、アメリカに実在していそうなネーミングでありキャセクター設定です。 』(この作品について書いたブログの評価部分を再掲)

http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-12038678672.html


(追記) 「北村薫のミステリー館」につきまして、過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですがブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"北村薫の"と御入力ください("の"まで入力してください)。