第9350回「世界一優美なワイン選び ジェラルド・アシャー はじめに&その1、シャンパーニュ」 | 新稀少堂日記

第9350回「世界一優美なワイン選び ジェラルド・アシャー はじめに&その1、シャンパーニュ」





 第9350回は、「世界一優美なワイン選び ジェラルド・アシャー はじめに&その1、シャンパーニュ」です。今回から9回にわたり、「世界一優美なワイン選び」、ジェラルド・アシャーのノンフィクションを随時取り上げたいと思います。プレイボーイ誌上に発表されたのは、1994年から96年のことです。


 章立ては、ワインの生産地、各一ヵ所に1章が割り振られており、フランスでは8カ所、アメリカとイタリアからは3カ所ずつ、そして、スペイン2か所にポルトガル1ヵ所の計17カ所の産地が選定されています。今回を除き、2章ずつ取り上げていきたいと思います。


 発表が20年ほど前の1990年代の半ばですので、ヴィンテージに関する記述は避けさせていただきます。


「はじめに」

 著者がワイン商になった経緯が記されています。そして、ワインへの想いも・・・・。著者がこれまで40年にわたりワインを取り扱ってきたのは、アルパイトでワイン販売店で働いたことが契機になりました。その店で問題となったのがヴィンテージでした・・・・。結論としては、ヴィンテージにこだわり過ぎた関係者が右往左往しただけだった、と言うのが実情のようです。


 そして、著者は経験から次のことに留意すべきだと主張します。

 『 所詮ワインは、いくらアルコールやPh、残糖の量や度数を分析したところで、正体がつかめない。また、どこかのワイン評論家が、アロマと風味のなかにかぎけたと称するペリー類やスパイスの類推もどきの一覧表もあてにはならない。


 ワインのスタイルというものは、造り手の各人が過去の事例を導きの糸とし、現在持ち合わせる腕だけを頼りに、風土の環境条件に適合しながらこしらえるものなのだ。 』(塚原正章氏・合田泰子女史共訳)


 さらに、ジャン=バチスト・パロニアンの言葉を引用して、「いつ、どこで、どのように」という技術的要素と、「だれが、なぜ」という人間的要素の総和の上に、ワインの味は決すると断じています。その人間的要素こそが、まさしくワイン歴史であると強調します・・・・。




「第1章 シャンパーニュ」

 『 シャンパーニュは、フランスの地方で、フランスの北東部、パリ盆地の東部に位置する。発泡ワイン(スパークリング・ワイン)の代名詞ともいえるシャンパン(Champagne)の産地として知られ、この地方の中心的都市であるランスを中心としたモンターニュ・ドゥ・ランス、ヴァレ・ドゥ・ラ・マルヌ及びコート・デ・ブランと呼ばれる3つの地域で特に良質のものが造られている。 』(ウィキペディア)


 シャンパンをある人は「洗練された軽薄さ」だと評し、オペレッタ「こうもり」では、「酒の王さま」と讃えています。"教えてGoo"での"operettatheater"さんの回答から、邦訳を一部引用させていただきます。「こうもり」の中でも、最高にノリの言いパートです。


 『 オルロフスキー 「燃えたぎる葡萄は  トラララララララ  それこそ人生だ  トラララララララ  王も皇帝も名誉好きだが  葡萄がなけりゃ生きては行けぬ!  乾杯! 乾杯! 共に讃えよ 酒の王様!酒の王様!」

全員 「乾杯! 乾杯! 乾杯! 」


オルロフスキー 「世界のだれもが 讃え褒める  輝くシャンパンは王様なのさ(王様さ) 」

アデーレ 「どこの国もみんな  トラララララララ  遠いところだって  トラララララララ  シャンパンがあれば悩みは消える  賢い者はそれを知ってる  乾杯! 乾杯! 共に讃えよ  酒の王様!酒の王様!」

全員 「乾杯! 乾杯! 乾杯!」・・・・ 』


 実に享楽的な歌です・・・・。そして、偶然生まれたシャンパンがいかにして現在に至るまで深化を遂げて来たか、著者は詳述します。そして、他のワインにも共通することですが、地域(クリュ)、個別農家、そしてメーカーについて触れます。


 そして、シャンパンを酒の王さまにまで上り詰めさせたドン・ペニリニョンの功績を讃えます。しかし、一方では、自ら招いたこととはいえ、カリフォルニアのスパークリング・ワインに押されていることも指摘します。「シャンパーニュの危機」であると・・・・。


 ところで、シャンパン・メーカーも離合集散を繰り返していますが、少なくともこの本の発表時には、4大メーカーがしのぎを削っていました。ルイ・ヴィトン=モエ・ヘネシー、レミ・マルタン、シーグラム、マルヌ・エ・シャンパーニュ(協同組合連合)・・・・。


 今はどうなっているのでしょうか、50歳ほどまでは100本は飲んでいると思うのですが、それ以降は数えられるほどしか飲んでいません。


(蛇足) ジェラルド・アシャーは、デゴルジェ(抜栓して、澱をぬくこと)など製造工程についても触れています。