第9371回「朝松健編 神秘界 その8、蛇蜜 松殿理央著 ストーリー、ネタバレ」
第9371回は、「朝松健編 神秘界 その8、蛇蜜 松殿理央著 ストーリー、ネタバレ」です。中国の創世神話「女媧・伏義伝説」、古代中南米で広く信仰されていたケツァルコアトル、そして、クトゥルフ神話が織り込まれた80ページほどの伝奇小説です。
『 女媧(じょか)とは、古代中国神話に登場する土と縄で人類を創造したとされる女神。笙簧の発明者。伝説の縄の発明者葛天氏と同じく伏羲の号に属するとされる説と、三皇の一人に挙げる説がある。姿は蛇身人首と描写される。姓は鳳姓、伏羲とは兄妹または夫婦とされている。 』(ウィキペディア)
『 ケツァルコアトルの名は古代ナワトル語で「羽毛ある蛇」(ケツァルが鳥の名前、コアトルが蛇の意)を意味し、宗教画などでもしばしばその様な姿で描かれる。また、白い顔の男性とも考えられている。 』(ウィキペディア)
そして、ここで語られるインディアンが信仰する「イグの子」、超能力を秘めた半人半蛇の存在・・・・。なお、A.メリットの「黄金の蛇母神」のカバー写真はイメージとして使っています。また、本文では章代わりにサブタイトルが表示されていますが、それとは別途にサブタイトルを使っています。80ページほどの伝奇短編小説です。
「その8、蛇蜜」松殿理央著
『プロローグ ある予言』
「ジェイムズ・ジョンソン。おまえは1932年11月9日に死ぬ。そして息子はその1年後、上海で記録を受け取るだろう。そして偉大なる成就の日を迎えることになる。これは最後の予言だ。さあ、わが使徒よ。しかるべき日のために支度を整えるがいい」
ある啓示を受けたジェイムズは、自らの死の1年後に、真実を記した日記を息子アルバートに託すことにしました。そして、最後に「蛇神イグ」を讃えます。ジェイムズは予言どおりに亡くなりました。
『死体を抱かせる妓楼、屍愛の館』
ジェイムズの共同経営者であった李翻威(リ・ファンウェイ)は、ジェイムズの息子であるアルバートを上海の魔窟に誘い出します。屍体を抱かせる妓楼があると・・・・。アルバートはこれまで数知れぬほどの快楽を追及してきました。性愛だけでなく動物殺などは、父親の許可の元に幼少期から繰り返しています。
そんなアルバートでしたが、母親の記憶は全くありません。アルバートが生れた直後に亡くなっていたからです。アルバートは幼少期から残虐な子どもでした。アルバートにはふたつの欠陥がありました。10月から12月にかけて、狂おしいほどに血を求めたのです。父親は人殺し以外なら何でも許可しています。
そして、いまひとつの欠陥は短期記憶が消滅している時期がこれまでに何度もあったことです。父親とか、秘書から指摘されるまで、そのことには気づいていませんし、その記憶がよみがえることもありませんでした。自動車の中で、これまでの27年にわたる半生が脳裏が去来する中、ついにフランス租界の中にある妓楼に到着します。
部屋に入る前に、李は告げます。「抱かせる死体は、私の娘・春華のものだ。ジェイムズとの約束に従い、あなたと春華は許婚の関係にあった」、そんな話は父親からも聞かされていなかっただけに、アルバートに疑念が生じます。ですが、李は信頼に足る人物であることに間違いはありません・・・・。
『幕間:父親ジェイムズの成功』
ここで、ジェイムズと李の成功が語られます。ジェイムズは旧家の息子として生まれましたが、家は没落の一途をたどっていました。学生時代、ネクロノミコンなど魔道書などに凝り、論文「アメリカ大陸と東洋における蛇神崇拝について」を執筆しましたが、熱意のわりには、実に中途半端な内容に周しています。
放浪の末に、突如故郷に戻ってきたジェイムズは大変な資産家に変貌していました。油田の開発に成功し、今やレトルト食品を扱う一大食品業界の雄に上り詰めていたのです。そして、彼の傍らには、常に李の存在がありました。
時はまさしく大恐慌の時代です。ですが、何の実害もなく乗り切っています。そんなジェイムズでしたが、予言どおりに亡くなりました・・・・。
『蛇神イグの子』(ジェイムズの日記)
死せる春華はまるで生きているようでした、実は仮死状態だったのです。そして、李はジェイムズの日記と手紙をアルバートに手渡します・・・・。そこに書かれていた事実はアルバートを叩きのめします。手紙には、物語冒頭に記された予言が書かれていました。
そして、ジェイムズに振りかかった運命の出会いが、日記に綿々と認(したた)められていました。
1904年 6月 5日・・・・ かねて熱望していた平原インディアンとの接触を果たす。
7月10日・・・・ この地は「イグの聖地」だが、族長からは詳細は語られず。
10月 3日・・・・ イグの祭、開催される。
10月10日・・・・ 負傷せし族長の娘を、"私"が縫合し、李の漢方薬によって手当てする。
10月14日・・・・ 族長からイグの核心部分を聞かされる。「未成熟なイグ」は、成長するとひとまず人間の姿になるが、やがて半人半蛇となる。また、何らかの欠陥が存在する。その未成熟なイグが族長の娘であり、完治した娘はジェイムズと李が自分の夫と選ばれたと告げる。そして、やがて2個の卵を産むであろうと・・・・。
1906年 2月 8日・・・・ ジェイムズと李は、岩屋にて交互に娘と愛する。
3月 8日・・・・ 約束どおり1ヶ月後に岩屋へ行くと、娘は2個の卵を産んでいた。族長は、"私"と李を秘密の地に連れて行き、好きなだけ黄金を持って行けと言う。そして、1個ずつ卵を持っていったんこの地を離れろと・・・・。卵が成長した暁には、ふたたびこの地に戻すことを、族長は約束させる。
手帳に書かれた日記はここまででした。ですが、続きがあったのです。それでも、アルバートにはかなりのことが分かりました。自分が如何なる存在であるか・・・・。恐怖と好奇心が相半ばする中、続きを読み進めます。
1906年 5月15年・・・・ 2個の卵は孵化した。"私"の卵は雄、李の卵は雌だった。それぞれ、アルバート、春華と名付けられた。"私"の見ている前で蛇の姿から一気に人間の赤ん坊に変身したが、言葉もしゃべれた。
そして、かの高貴なる赤ちゃん(春華)の口から予言として、黄金によって得た金でオクラホマのタルサ・ウィチタで石油を掘削しろとの指示があった。 一発で石油を掘り当て、さらに農園の買収も命じた・・・・。
この後の日記では、李は春華を連れていったん中国に連れ帰ったことが書かれていました。そして、アルバートの成長ぶりも書かれていました。アルバートは、欠陥と思えた記憶が飛んでいる時期に、蛇神イグの予言を語っていたのです。そして、10月から12月にかけて血がたぎるのも「イグの子」ゆえだったのです。
アルバートと仮死から覚めた春華は、半神半蛇に変貌を遂げます。やがて、イグの聖地に戻る時のために・・・・。
(お詫び) 書きかけの状態でアップしましたが、その際、ジェイムズとアルバートを混同して書いた部分が多数ありました。申し訳ありません。
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