第9375回「世界一優美なワイン選び その16、リベラ・デル・ドゥエロ その17、ポルト」 | 新稀少堂日記

第9375回「世界一優美なワイン選び その16、リベラ・デル・ドゥエロ その17、ポルト」

 第9375回は、「世界一優美なワイン選び その16、リベラ・デル・ドゥエロ その17、ポルト」です。ワインをめぐる旅も今回で終りです。最終回には、リオハに続いてスペイン・ワインとポルトガル・ワインの生産地が紹介されています。


「その16、リベラ・デル・ドゥエロ(スペイン)」

 リベラ・デル・ドゥエロは、シンデレラのように突如ワイン業界に現れた新星です。決して安いワインではありません・・・・(私は飲んだことがありません)。サブタイトルは、「世界の愛好家が熱狂するスペインの新星」と付けられています。


 アシャーは、先ず乳離れ前の子牛料理「コルデロ・レチャル・アル・ホヘロ」を肴に、リベラ・デル・ドゥエロを味わうところから語り始めます(ラストもこのエピソードで締めくくっています)。そして、この地域はカリフォルニアのナパに匹敵する大きさだと紹介します。


 そして、リベラ・デル・トゥエロ銘柄のワインの中でも突出しているのが、ベガ・シシリアだと強調します。100年以上続いているワイナリーですが、生産量は雀の涙程度、たまたま手に入ったとしても目が飛び出るほどの値段・・・・。至高のワインのようです。


 著者のアシャーは、この地域は古くて新しいと言います。ローマ帝国時代からの生産地であり、11世紀にはシトー派修道院によってワインが作られましたが、スペイン版のドミナシオン(産地認定)に登録されたのは近年(1982年)だったからです。


 アシャーは奇跡の生産地の立役者のひとりとして、アレハンドロ・フェルナンデスの名前を挙げます。さらに、アメリカで手に入るリベラ・デル・ドゥエロの生産者名を列挙し、最後に冒頭の子牛料理で締めくくりす。


 ところで、成獣のイルカを水族館向けに捕獲することと、乳離れ以前の子牛を屠畜し食することと、いずれが残虐なのでしょうか。欧米人との価値観との差は埋めがたいと言うのが実感です。最後にホームページ『WINES from SPAIN』から引用させていただきます。


 『 1982年に原産地呼称に認定されたリベラ・デル・ドゥエロはソリア、ブルゴス、セゴビア、バリャドリッドの各県にまたがリ、ドゥエロ河に沿った東西約120キロのあいだに広がる産地です。リベラ・デル・ドゥエロのワイン産地は、アランダ・デル・ドゥエロの町からとくに西の地域に広がり、地形は河の両側に高い丘が平行して連なる渓谷で、ぶどう畑は河に近い平地から丘陵の斜面に位置しています。


 大陸性の気候の影響を強く受け、夏は暑く乾燥しますが、夜には気温が下がり、冬には凍てつくような厳しい寒さが訪れます。・・・・ 以前からスペイン最高のワイン、ベガ・シシリアの産地として知られていたリベラ・デル・ドゥエロですが、1980年代前半のペスケーラの国際的な大成功によって、この産地名が内外で知られるようになりました。


 1980年代後半以降、この地域への関心がさらに高まり、外部から実業家や異業種の企業がリベラ・デル・ドゥエロに進出し始めました。現在もその動きはとどまることを知らず、品質を重視したぶどう畑の開墾や拡大、近代機器を導入した醸造所が次々に建てられています。


 この結果、リベラ・デル・ドゥエロは産地全体の品質の高さを認知され、欧米諸国への輸出も盛んになり、その名声は世界中へと広がり、今やリオハと並びスペインの高品質ワイン産地のリーダーとなっています。 』




「その17、ポルト(ポルトガル)」

 ポルトガルから紹介されているのは、ポルト(ポート)・ワインです。日本人にとっては、もっともなじみの深いワインかもしれません(写真はウィキペディアから引用)。


 『 ポートワインまたはヴィーニョ・ド・ポルトはポルトガル北部ポルト港から出荷される特産の酒精強化ワイン。日本の酒税法上では甘味果実酒に分類される。ポルト・ワインともいう。ポートワインは、まだ糖分が残っている発酵途中にアルコール度数77度のブランデーを加えて酵母の働きを止めるのが特徴である。


 この製法によって独特の甘みとコクが生まれる。また、アルコール度数は20度前後と通常のワインの10~15度に対し5~10度程も高く、保存性が非常に優れている。このためポートワインは一度封を切っても通常のワインのように急激な風味の劣化、変化が起こることはなく、またタンニンの多少によらず長期保存が可能である。


 ベースとなるワインはあちらこちらで作られているが、最終的に熟成する地域が指定されていて、そこで最低3年間、樽の中で熟成されたものだけが、ポートもしくはポルトと呼ぶことができる。 』(ウィキペディア)


 著者のアシャーが紙数を費やしているのが、ポルト特有のヴィンテージ・ポート制度です。シッパー(ワイン商)がロッジ(倉庫)に蓄えたポート(ポートワイン、港の意も)に対して、この10年のうちのワインはすごいぞ、と宣言する制度のようです(複数年の指定も可ですが、与える印象が薄くなります)。


 当然、ポルト・ワインのワイナリーとしても、この制度からの独立を目指す生産農家兼輸出業者(キンタ)が出てきます。ボルドーのように何年物のボルドーで十分ではないかとの主張です。そして、著者は、樽熟(たるじゅく)と瓶熟(びんじゅく)に敷衍します。


 そして、全17章を次の言葉で締めます。『 そういえば、「シンポジウム」の語義は「共に飲む」ことでしたっけ。 』(塚本氏訳)


(追記) 「世界一優美なワイン選び」について、過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですがブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"アシャー"と御入力ください。