第9402回「創元・岩波ウェルズ傑作選 その22~26、ザ・スターほか、ストーリー、ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第9402回「創元・岩波ウェルズ傑作選 その22~26、ザ・スターほか、ストーリー、ネタバレ」





 第9402回、「創元・岩波ウェルズ傑作選 その22、ザ・スター(海王星) 23、「最後のラッパ」の物語 24、赤むらさきのきのこ 25.剥製師の手柄話 26、クモの谷、ストーリー、ネタバレ」です。「創元・岩波ウェルズ傑作選」もあとわずかです。


「その22、ザ・スター(海王星)」(破滅テーマ)

 海王星の地球大接近を淡々と記した十数ページの短編です。読み応えのある掌編に仕上がっています。ここで、ウィキペディアから海王星の特性を引用することにします(写真もウィキから引用)。


 『 海王星は巨大な氷惑星で、太陽から非常に離れているため、わずかな熱しか受けていない。表面の温度は-218℃である。しかしながら、中心部の温度は、約5000℃である。 内部の構造は天王星と似て、氷に覆われた岩石の核を持ち、厚い大気が存在していると考えられている。


 木星や土星同様、内部に放射性元素の崩壊と考えられる熱源を有しており、太陽から受けている熱量の約2倍ほどの熱量を、自ら供給していると考えられている。また、海王星には磁場が存在する。天王星と同様に磁場の中心は惑星の中心から大幅にずれており、46.8゜自転軸から傾いている。 』


 海王星は地球の17倍ほどの質量を持っており、木星などと同じく太陽になりそこねた惑星です。そんな海王星が公転軌道から外れ、太陽に引き寄せられ始めたのです。1月1日には三つの天文台がそのことを公表しています。1月3日には、海王星の軌道変更について一紙が報道しましたが、大衆の関心を呼ぶことはありませんでした。


 ただ、従来の公転軌道から太陽よりに接近し始めたものですから、明るさは次第に増していきます。そのことは世界中の人々から観察されました。月よりは小さな大きさにしか見えないのですが、惑星固有の熱を発していますので、むしろ月より明るいほどです。


 海王星の地球接近の影響について多数派を占めたのは、良識派でした。海王星の影響を無視します。一方、ある数学者は「太陽とも地球とも激突することはないが、このままでは地球と極めて近接したコースを取り、多大な影響を与えるであろう」


 教授はロシュの限界を指しているのかと思います。『 惑星や衛星が破壊されずにその主星に近づける限界の距離のこと。その内側では主星の潮汐力によって惑星や衛星は破壊されてしまう。 』(ウィキペディア)


 当然、限界を超えなくても近くまで接近すれば、地球側には大地震、火山の爆発、暴風雨、津波などあらゆる惑星規模の災害が予測されます。教授はそのことを指摘したのですがが・・・・。良識派はあくまで良識派でした。何ら動こうとしません。


 そして、大接近の日、世界各地で災害が同時多発的に発生します。海王星に面した側では異常な大きさで海王星が天空を覆います・・・・。アジアでは大津波が太平洋一体に上陸し内部を席巻していきます。日本と東南アジアでは、あらゆる火山帯が噴火をはじめました。ヒマラヤの氷雪地帯、シベリアのツンドラも一挙に氷が融け去ります。


 ヨーロッパ、アメリカ、アフリカでも壊滅的な暴風雨が席巻し、文化文明を破壊し尽くしました・・・・。しかも、一種類だけの災害だけではなかったのです。複合的な要因で発生した気象異常は、南極・北極の気候を一変させました。


 人類にとって、まだしも幸運だったのは、文献、機械などのテクノロジーが保存されていたことです。ウェルズは記していませんが、9割以上の人々が亡くなったのではないでしょうか。それでも友愛の精神も生き残っています。ですが、それはまた別の話しです。


 ところで、この災害を火星人は観測していました。「第三惑星に起きた災害は実に軽微だった」、広大な宇宙では、この程度の災害は取り上げるに足りない、ウェールズはそう締め繰ります。



「その23、『最後のラッパ』の物語」(黙示録コメディ)

 『 "最後のらっぱ"とは、ハルマゲドンの時に吹かれるラッパのことです。7回吹かれ、地球上に災厄が荒れ狂うと言われています。プロローグで、天使がラッパを地上に落としてしまいます。地上に落ちたラッパは、いつしか骨董屋の棚に埋もれてしまいますが、工場の青年たちが買い受けます。


 しかし、最初は鳴らないのです。青年たちは苦労して直します。やっと音が出ますが、ラッパは爆発し消失します・・・・。その時、一瞬だけなのですが、世界中の人々に"神の国"が見えたのです。物語は、一人の牧師を中心に語られます。牧師は、上司である司教に報告するのですが、信じてもらえません。人々が見た神の国に関係なく、生活は続いていく・・・・というストーリーです。


 ウェルズの宗教観がよく現れています。ラッパを落とした天使に対する神の罰については、著者自身どうなったか、分らないと書いています。やはり、コメディです。 』


「その24、赤むらさきのきのこ その25.剥製師の手柄話 その26、クモの谷」

 『 「赤むらさきのキノコ」は、妻の自堕落に悩んでいた商人の物語です。彼は自殺を考えます。家を出て、川に身を投げようとした時、毒々しい色をしたキノコを見つけます。どうせ死ぬならと考えた彼は、毒キノコを食べてしまいます。途端に、彼はハイになります。家に帰った彼は、妻とその仲間を懲らしめます。そして、一家はハッピーになったというコメディです。


 「剥製師の手柄話」は、絶滅した種の剥製を作ったと豪語した剥製師の話です。日本にもありますが、人魚の剥製も作ったと話しています。「クモの谷」は、イメージとしてアメリカ西部を舞台にしたホラーです。男3人が、30センチほどのクモに襲われる恐怖を描いています。 』


(追記) 「創元・岩波ウェルズ傑作選」について過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですがブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"岩波ウェルズ"と御入力ください。