第9404回「創元・岩波ウェルズ傑作選 その27、タイム・マシン(小説版+映画版)、ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第9404回「創元・岩波ウェルズ傑作選 その27、タイム・マシン(小説版+映画版)、ネタバレ」





 第9404回は、「創元・岩波ウェルズ傑作選 その27、タイム・マシン(小説版+映画版)、ネタバレ」です。今回で「創元・岩波ウェルズ傑作選」も終りです。


 手抜きとなりますが、小説版つきましては、既に書いているブログから再掲することにし、映画化はバリエーション作品を含めて何度も公開されていますが、ジョージ・パル監督版の「八十万年後の世界へ タイム・マシン」(1959年)を"MovieWalker"から引用することにしたいと思っています。


「小説版 タイム・マシン」

 『 ジュール・ヴェルヌとH.G.ウエルズとは、SFの祖とも言うべき存在です。ジュール・ヴェルヌは「悪魔の兵器」などで、科学の危険性もテーマとしましたが、基本的に楽観的です。人類に対する信頼が基底にあります。一方、ウェルズは、社会学的なアプローチが多く見られます。その分、ペシミスティックです。フランス人とイギリス人という、国民性だけでは語れないものを感じます。


 ウェルズ以前にも、タイムスリップものは存在しました。マーク・トゥエインの「アーサー王宮廷のヤンキー」(※)が代表作かと思います。しっかりした大長編です。19世紀のヤンキーが、中世にタイムスリップする話です。ただ、このヤンキーの凄いところは、19世紀のテクノロジーを中世に持ち込むことです。当然一から作っていきます。「JIN  -仁-」も、医療器具とか、ペニシリンを一から作っていきますが・・・・。


 ですが、マシンを使っての時間旅行を可能にしたのは、ウェルズを嚆矢(こうし)とします(あくまで想像でですが)。本書は、一人称で書かれ中篇です。主人公は、"タイム・トラヴェラー"とのみ呼ばれています。"わたし"が、タイム・トラヴェラーの体験を聞くという構成を取っています。


 タイム・トラヴェラーが、ユークリッド幾何学に疑問を呈するところから、物語は始まります。「一次元である線分には、太さがない。上位の次元(二次元)を、既に取り入れられているから、そのように線分を書くのだ。同じことが厚さのない平面でも言える。また、立方体には、時間が欠けている。立方体を概念するとき、四次元のレベルで、既に考えているのだ」(要旨) 


 タイム・トラヴェラーは、この三次元世界に時間を加えた、四次元世界を力説します。四次元世界では、未来でも、過去でも、理論的には移動できるはずだとの理論に基づき、タイムマシンを創ったと語ります。彼は、私を含めた友人たちに、実験して見せます。そして、実際に旅行します・・・・・。ここから、タイム・トラヴェラーの物語が始まります。一人称"ぼく"で、小説は進んでいきます(阿部知二氏訳)。


 タイム・トラヴェラーが向かったのは、80万年先の未来です。そこは、「1984年」とか、「すばらしき新世界」に通じるアンチ・ユートピアです。しかし、近未来と80年先の未来とですから、内容は大きく異なります。人類は、大きく二つに分かれています。エロイとモーロックです。


 エロイは、一見理想郷を実現しているように見えますが、モーロックの侵略におびえています。モーロックとは、地下世界に住む労働階級なのですが、大きく人類とは変異しています。モーロックは、時に地上に進出し、エロイを食糧として調達していきます・・・・。


 命からがら、この世界を脱出した"ぼく"は、さらなる未来にタイムマシンを飛ばせます。そして、地球の終末を目撃します。そこでは、人類は既に滅亡し、わずかな退化した動物が生息するだけです・・・・。正規の訳で読みましたのは、中学生の頃ですが(小学校の時、児童版で読んでいますが)、地球の終わりと太陽の終焉を重ねてイメージしていましたので、かなりの違和感がありました。


 そして、"ぼく"の物語は終わります。そして、タイム・トラヴェラーは姿を消します、どこかの時間軸に行ったのでしょうか・・・・・・。ウェルズですから、ジュラ紀に時間旅行するなどの話は出てきません。やはり、社会学的なアプローチに終始しています。 』(以上再掲)




「映画版 八十万年後の世界へ タイム・マシン」

 『 1899年の大晦日のロンドン。青年発明家ジョージ(ロッド・テイラー)は、親しい友人を呼んで夕食会を開いた。その席上、彼はタイム・マシンという機械を披露した。これは、第4次元の時間の世界を飛んで、過去と未来に自由に旅することの出来る機械であった。


 客を帰したジョージは実験室に入って、タイム・マシンに乗りこんだ。レバーを引き、機械が停止したのは1917年の世界であった。さらに、1959年から、時代は1966年に飛ぶ。ロンドンは恐るべき原子爆弾攻撃をうけ、どろどろの溶岩にうまっていた。なお未来への旅は続く。


 タイム・マシンのダイヤルは紀元80万2701年を示している。珍しい樹木の生い繁る中を清流が流れ、ロンドンの面影はない。エロイという未来人種が群がって遊んでいた。彼らは周囲のできごと一切に無関心な人種だった。1人の美少女が溺れかかっても救けようとするものがない。


 彼女を救けたジョージは、ウィーナ(イヴェット・ミミュー)という名のこの美少女に好意をもった。彼女によってジョージは、この世界でエロイ族が地下に住むモーロック族に支配されていることを聞いた。モーロック族の地下洞窟に呼びこまれたエロイ族は、生きてかえった者がないという。


 やがてエロイ族の人々は洞窟に行進をはじめた。モーロック族が人喰人種で、火を恐れることを知ったジョージは、エロイ族を団結させて反抗させた。火でつつまれた洞窟から逃れたジョージは、タイム・マシンに乗ってレバーを引いた。たちまち時代は1900年1月5日にかえった。


 自宅では、5日前に呼んだと同じメンバーが夕食会に集まっていた。一同はジョージの話を一向に信用しようとしなかった。ジョージは客たちが帰ったあと、タイム・マシンにのって再び未来の世界に出発した。 』("MovieWalker"から引用)


(追記) 「創元・岩波ウェルズ傑作選」について書いたブログに興味がありましたら、お手数ですがブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"岩波ウェルズ"と御入力ください。