【台本】「団子売」文楽の床本 | さきじゅびより【文楽の太夫(声優)が文楽や歌舞伎、上方の事を解説します】by 豊竹咲寿太夫




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団子売

 









今度、今度仕出しじゃなけんけれど、雪か花かの上白米を、痴話と手管でさらせて挽いて、情けで捏ねてしっぽりと。



「さあさあ、これはこの度大評判」
「ご贔屓高い飛び団子、その真似ごとのひと踊り」
「そんならお臼」
「杵造さん」
「さらばこれから、始まり始まり」
「飛び団子」

やれもさうややれやれさてな。
臼と杵とは夫婦でござる。
やれもさうややれやれさてな。
夜がな夜ひと夜、おゝやれやれな。
父んが上から月夜はそこだよ。

やれこりゃよい子の団子ができたぞ。
おゝやれ、やれさ。
あれはさて、これはさて、どっこいさてな。
よいと、よいと、よいと、よいと、よいとなとな。
これはいさのよい夫婦。臼と杵との仲も良や。

『お月様さえ、嫁入りをなさる。やっときなさろせ』
とこせ、とこせ
『年はおいくつえ。十三、七つえ』
『ほんにえ、お若いあの子を産んで、やっときなさろせ』
とこせ、とこせ
『誰に抱かせましょうぞえ。おまんに抱かそゞえ』
「見ても美味そな品物め」

そうだよ、高砂尾上の爺様と婆様が箒を手に持ち、熊手を担いで目籠を背負いそろ。
小松の枯葉をさらりと集めて、戻ろとしたれば上の枝には鶴の巣籠り。
下の小池にゃ女亀と男亀が空を眺めて、このや松はな、めでたい松にて高砂文句もここらで止めましょ。
尾上。
かくては尽きじと夫婦連れ。
かしこを指して。


 

 

 

 

 

 

 



とよたけ・さきじゅだゆう:人形浄瑠璃文楽
 太夫
国立文楽劇場・国立劇場での隔月2週間から3週間の文楽
公演に主に出演。


その他、公演・イラスト(書籍掲載)・筆文字(書籍タイトルなど)・雑誌ゲスト・エッセイ連載など
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