映画「セッション」を観る | 世日クラブじょーほー局

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 偉大なドラマーになるという野心を抱いて、全米屈指の名門校であるシェイファー音楽院の門をくぐったニーマン(マイルズ・テラー)。そこに待ち受けていたのは、同音楽院のスタジオ・バンドを率いる伝説の教授、フレッチャー(J・K・シモンズ)。彼のバンドレッスンは、殺気に満ち溢れたサディストそのもの。メンバーに絶対服従を要求し、独裁者として君臨している。それでも皆、歯を食いしばってしがみ付こうとするのは、そこにあくなき音楽の高みへの追求があり、畢竟、プロへの近道と確信するがゆえ。よってメンバーのポジション争いも熾烈を極める。

 ニーマンもいつしか我知らずフレッチャーの虜となり、ドラマーのポジション獲得が人生の目的となっていく。ニーマンが事故による負傷で血だらけになりながら、這いつくばってもステージに立とうとするシーンは唖然とするが、途中から本作は、まさにサイコスリラーの様相を呈していく。一流と狂気は紙一重、否一枚の紙の表裏なのか…。果たしてニーマンの運命はいかに。

 多くの言葉はいらない。本作はただどこまでもフレッチャー役J・K・シモンズの名演に尽きる。彼の名演あってこそ、ニーマン役のマイルズ・テラーの迫真の演技も引き立てられたし、脚本も映像も見事に生かされた。観客はジャズや音楽にまったく門外漢でもスクリーンに引き込まれていく。これほどの俳優がいたとは、やはりハリウッド恐るべし。そしてこのシモンズをキャスティングした新進気鋭28歳(当時)の監督デイミアン・チャゼルの異能には感服する以外にない。

 本作の原題は「WHIPLASH(ウィップラッシュ)」で、劇中使用されるジャズの曲名だけれども、これは邦題のほうが優れていただろう。自らも学生時代にドラマー経験があるというチャゼル監督が本作に託した渾身のメッセージは、人生は最後に「破局でなく、セッションを起こせ」ということか。

(出演)
マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、メリッサ・ブノワ、ポール・ライザー、オースティン・ストウェル、ネイト・ラング
(監督)デイミアン・チャゼル