暁斎が描く狂言の会 伯母ヶ酒と茸 編 | murmure ♪ みゅるみゅ〜る

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フルーティスト宮川悦子の日記。
みゅるみゅーる!はフランス語でささやき・つぶやき・・・

昨夜の続き、、

暁斎が描く狂言の会 


野村万作さんの三番叟に引き続き


三井記念美術館の館長さんのご挨拶と

法政大学の名誉教授の西野春雄さんの解説と続き


伯母ヶ酒


と、行く前に

特別に

石田さん演じる暁斎がタイムトリップ!して現れました


橋掛かりではなく、上手の奥の切戸口から



これはこれは厳かな!心が洗われるようだ。

暁斎でござる。なんでここにいるかはわしにもわからん!

ゆめかうつつか うつつかゆめか 今風に言えばタイムスリップ パラレルワールドであるか

・・・・


と、出ていらっしゃいました!


お江戸が東京になってしまった。

と、、


暁斎はご自分も狂言を大蔵流でお稽古されていて

舞台にも立っているんですね、

狂言に出てくる

太郎冠者や大名、鬼や女房や、、

このキャラクターたちの事を


愛おしい。


という表現を使っていらっしゃいました。


この愛おしい。は石田さんが演出されて考えたセリフなのかもしれませんが

いずれにしても暁斎も石田さんも、きっと万作さんも、萬斎さんも

みんな、狂言のキャラクターを

愛おしい。

と心から思っているような雰囲気が伝わってきました


そして、後見の岡さんに肩衣を持ってこさせ、

大好きなカエルの絵を肩衣に


さら、さら、さらさらさらさら~と描いて


皆さんに見せて


ではこれを着て

伯母ヶ酒を演じよう。と


また切戸口から出てゆかれ

橋掛かりから、肩衣を召されて出てきました。


実際に肩衣は野村良乍さんが構成されて作られたもののようで、

これまた私の大好きな鳥獣戯画のようなカエルの絵が描かれた美しい肩衣でした


伯母ヶ酒は

市場で酒屋を出している伯母(高野さん)のところに酒のみの甥(石田さん、でも今回は暁斎さんとして演じている)がやってきて何とかしてお酒を飲ませてもらおうとするんですが

ケチな伯母は絶対飲ませてくれず、

とうとう暁斎さんは鬼が来るから気をつけろと言い残して帰った振りをして

鬼の面をつけて鬼になって驚かし、酒にありつくのですが、飲みすぎてしまいグーグー寝てしまい、

伯母に見やぶられ、追いかけられておしまい。


というお話です。


最初は暁斎さんと伯母はずっと向かい合って座っているので動きがなくて

セリフのみなんですが、今回は呼び名も全部暁斎。となっていて実際お酒が大好きだったという

暁斎さんが降臨しているような気持ちになりました。暁斎さん、本当にあの世で喜んでそう!



鬼になって戻ってくる所からは

高野さんに釘付けの私でした!


妻役の高野さんが大好きで!

しかもとくに節分の鬼に怯える高野さんの役が大好きなので

今回も鬼に怯える高野さんを見られてワクワク。でした

鬼が驚かすと間髪いれずに高野さんの

許されよ~許されよ~と怖がる所作がホント好きなんです!


暁斎さん、お酒を飲みながらお面をつけたりとったりがだんだん面倒になり

しまいには

膝にくっつけてお面を伯母に見せるようにしながら


さてはさては、しわい人か、



やい、みよるなよ、見たらとって噛むぞ。


というと、

橋掛かりまで逃げた伯母が


見ることではござりません。



繰り返しながら飲みすぎて寝落ちしてしまうのですが

このやりとりの高野さんのタイミングも私のツボにはまり、

ますます妻役の高野さんが見たい!(しつこい私!)


最後は暁斎さんが酔っ払ってふ~らふらで

伯母に怒られて追いかけられながら幕に入っていきました。


狂言の時代の女性は強いイメージがありますが強い中にもやっぱり鬼が怖い。

わらわの家に鬼がきた!という所作から伝わる

恐怖感がやっぱり女性なんだろうか。と思ったりします。


私もゴキブリきたら、深夜でも絶叫しますし、、(って関係ない。。)



暁斎さんの実物をもちろん見たことはありませんが

石田さんがとっても暁斎さんに乗り移った(あら、逆かしら?)ように演じていらっしゃって

普通の伯母ヶ酒を見たことはありませんが、今回このバージョンを見られたことがとても幸せな気がしました。

とっても温かい空気を醸し出していて暁斎さんがあの世で絶対喜んでいるような空間でした。



そして最後は

萬斎さんが山伏演じるクサビラ!


ある男の屋敷の中に人間大の気持ち悪い茸が生えてきて困って

山伏に祈祷してもらって駆除しようとするが

拝めば拝むほど色々な姿の茸が増えて最後は茸にいたずらされて

困って山伏と一緒に逃げる。お話。


萬斎さんの山伏はこれがまた・・

強烈な後光とともに現れ、そこだけスポットライトが追いかけているような輝きでした

なんて強烈なオーラ。すごいだろうなとは思っていましたが、想像絶する佇まいでした。


萬斎さんは色々なところで、

増え続ける茸を現代社会への風刺劇とする。とも解釈できる。というような事をおっしゃっていますが、

今回は暁斎は幽霊画や妖怪画も得意としていて、そういった部分からクサビラを見てみては?

というような

説明文がかかれておりました。

私はこの話の解説を初めて読んだときに、幼い頃読んだ日本の怖いはなし全集にあった

きのこのお化け。をまず思い出しました。

木に生えているきのこがある日可愛い子を見つけて毎日見ているうちに

食べたくなってきて念じているうちに手足が生えてきて顔も出てきて可愛い子を喰ってしまうという怖い話、、

なのでどちらかと言うと茸を直接的に妖怪として捉えておりましたが


今回は、

もしやこの茸たち、全部自分の心の中の闇だとすると、、と思いました

色とりどりの多彩な茸たちは様々な煩悩や自分の抱えている悩み、欲望、葛藤、

山伏が表面的なお祈りをしても全然意味を持たず、かえって逆効果になってしまう。

表面的なこだわりに憧れて、本質を忘れてしまった自分。を見ているような気持ちになりました。




萬斎さんの山伏の祈祷のぼ~~ろんぼ~~ろんもそうですが

やはり声のビブラートがすてき♫

出てきてまず最初のセリフの響きがやっぱり素晴らしくって、

なんとまあるい響き。と今回も感じました。

早く謡を聴いてみたいと思います。

シリアスなセリフから急におちゃらけ系のセリフにぱっと移行するところもほんとに素敵

これは、もう私の言葉では表せません。

テレマンのファンタジーのような、、一つの旋律の中に

沢山のキャラクターが出てくるような、、吹いていて楽しくなるような、そんなイメージです。



それから深田さんがときどき茸をバシっとセンスで叩くところの所作が面白かったです。

茸として叩いているのではなく、普通に後輩を叩いているような、、あれ、それは所作じゃない??

そんな事言ったら失礼ですね、、笑



最後の最後後見の飯田さんが茸たちの笠を片付け終わるまでみんなが席を立つのをまって

もう一度拍手を送ったあたりにクラシックの演奏会との違いを感じました!


そして自分がもっと古文的セリフを聞き取れるようになりたいと思いました。

現代語訳がわからず、ん?と思う箇所を少しでも減らして行けばもっと面白い部分を発見できるはず

ますます、古典にはまります。はまります。

高校時代も古典好きだったな~~


あーおもしろいおもしろい