討伐依頼売りの少女 | 月と共に日々を生きるドラクエⅩ

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ドラクエ10のアストルティアでの生活をのんびり楽しむブログです。

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むかしむかしでもない現代、あるところに討伐依頼売りの少女がいました。





少女の両親は病床に伏し、満足に動く事もできません。


少女は毎日朝4時に起き、ランガーオ村からメギストリスの都へと5時間の道のりを歩き討伐依頼を売り、日銭を稼ぐという生活をしていました。


討伐隊員が届けてくれる依頼はいつも安いものばかり、1万を越える依頼が来たためしがありません。


「これではお父さんとお母さんを養うことができない・・・」


日に日に弱っていく両親を見て少女は嘆き悲しみます。


しかし、そんな不幸な少女にもある日転機が訪れました。




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「これは・・・!」


今までに見たことが無いような高額報酬、しかも人気のスポットです。


「これを売ればお父さんとお母さんに十分な食事を食べさせてあげることができるわ・・・!」


またとない好機に討伐売りの少女は歓喜します。


もうこんな依頼は二度と来ないかもしれません。


少女は夜を徹して依頼を売り続ける決意をします。


「まずは英気を養う夜のお供を揃えなくちゃ」




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そう言うと少女は手近なコンビニに駆け込むと、レッドブルを大量購入します。


装備を万端にした少女は意気揚々とメギストリスの都へ向かいました。




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「よし、頑張るわよ!」


そう言うと少女はレッドブルをいっき飲みします。


少女は討伐依頼を売り始めます。


「お客さんをより多く呼び込むためには景観が良い所で売らなくちゃね」


そう考えた少女は花壇の隅に陣取り販売を開始します。






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「メッサーラの討伐依頼はいりませんか~!」


そう叫びますがお客さんは他の売人の元へ駆け寄るばかりで一向に少女の元へは集まる様子がありません。


「そんな、どうしてかしら・・・」


他の売人の売り文句を見ると、





「デマ/ダクパン/40/24180p1000G石両方花壇12時」


「ヴァース/Wタイガ50/石〇/黄23180/1500G/花8時!」


「グール40ゴブル砂漠西15040/1000/花壇中央」


などまるで人間の言語では無いような不可思議な言葉を口にしています。


「そうか、討伐依頼を効率的に売るには人の心を捨てなくちゃいけないのね・・・!」


何かを得るには何かを犠牲にする必要がある。


この世は等価交換の法則で成り立っている事を理解した少女は、自らも人の心を捨てる覚悟をします。


「風車メッサ50/19150P/石〇/1000G/花壇9時」




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まるで機械の様に淡々と言葉を一言唱えると、ウェディの女性が話しかけてきました。


「討伐依頼くださーい!」


先ほどまでは一切見向きされなかったのに夢のようです。


ウェディの女性を皮切りにたちどころに人が押し寄せるようになります。


暫くすると少女の手には余るほどの人が詰め掛け、また短時間でかなりの金額を得ることができました。




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少女は今までに無いほどの人ごみに押されてんやわんやになりながらも、嬉しくて笑顔がこぼれます。


「凄い、凄いわ。これだけ短時間でこんなに稼げるなら、もっともっと頑張ればお父さんとお母さんにいっぱい楽をさせてあげられる!」





もっと効率的に売る方法が無いかと考えた少女は、討伐商会の仲間であるオーガの女性に助けを求め、主要な区画で宣伝をしてもらい自分は比較的すいいる区画で人を捌くことにしました。


すると宣伝を聞いた人が沢山集まってくれて、周りの混雑に影響されることもなくさらに沢山の依頼が売れるようになりました。




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「ふぅ、疲れたわ。レッドブルを飲まなきゃ・・・」


そういうと少女はレッドブルをいっき飲みします。


「これで後10年は戦えるわ」


気力を取り戻した少女は販売に戻ります。




少女は討伐依頼を売り続けます。




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「ブログミテマス!」


唐突にそんな言葉が聞こえました。


依頼を売った女性の一人が発したのです。


攻撃呪文ブログミテマスを言われた少女は反撃魔法を唱えます。


「アリガトウゴザイマス!」


そんな攻防を繰り広げながら販売は続きます。




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と、そんな中一際目を引くおしゃれなウェディのお姉さんが現れました。


なんとそのお姉さんはとある業界で有名なお姉さんだったのです。


興奮した少女は代金を受け取った他の客を招待するのも忘れ、攻撃呪文を放ちます。


「ブログミテマス!!」


反撃呪文アリガトウゴザイマスを唱えると思っていたお姉さんはなんと予想外の呪文を放ちます。


「ワタシモミテマス!」





「!?」


あまりにも予想外の呪文に少女は硬直します。


頭が真っ白になり何も言えなくなります。


脇でお客が「招待まだ?」と言っているのも耳に入りません。


興奮した少女はたどたどしい言葉で挨拶とお礼を交わしながらも討伐販売商会の仲間にその興奮を伝えます。




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少女の心は粉々に砕け散りました。




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先ほどのショックを無かった事にするため少女はレッドブルをいっき飲みします。


「まだだ、まだ終わらんよ・・・」


気を取り直した少女は討伐販売を続けます。




少女は討伐依頼を売り続けます。




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と、ふと気づくと隣にアフロの男性が居ました。


男性は討伐を購入するわけでも無く少女の傍らに佇んでいます。


「・・・?」


多少訝しみながらも特に迷惑をかけられている訳でも無いので、少女は販売を続けます。


結構な時間が経つにもかかわらず男性がいなくなることはありません。


少女は一度休止するために宿屋へ向かい休息をとりました。


わずかの時間を休みまた元の場所へ戻ると男性は居なくなっていました。


(あれ、いなくなっちゃった・・・)


そうは思いましたが特段気にせず少女は販売を再開しました。





しばし販売を続けていた時




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「!?」


いる。


服装は変わっていますが間違いない、先ほどのウェディの男性がまた傍らに立っています。


(そんな、いつの間に・・・)


少女の心に少しの恐怖が生まれます。




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しかしウェディの男性は何をするでもなくそこに座り、じっとこちらを見続けています。




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【何もされない脅威がずっとそこにある】ということに少女は恐怖しながらも販売を続けます。




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「!!?」


アフロが二つに増えました。


二つのアフロは何もせずじっとこちらを見つめています。


怖い、怖い、怖い。


少女の心に恐怖が満ちます。


このままどこかに逃げてしまいたい。


しかし今はまだ販売の途中だ、逃げるわけにはいかない。


二つの想いが少女の中で鬩ぎ合います。


やっとの思いで行列を捌ききって、少女が一呼吸ついた時。





「あの」


ずっと黙っていたウェディの男性が話しかけてきたのです。


「ひっ・・・!」


突然の事に少女は息をのみます。


続けて紡がれるであろう言葉に恐怖し、少女は思わず目を瞑ります。





「ブログミテマス」


どうやら列が捌き切れるまで待ってくれていただけのようでした。


「ア、アリガトウゴザイマス」




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疲れた少女はレッドブルを一気飲みします。


「父さんと母さんは死なないわ、私が護るもの・・・」


時間も経ち、盛況時に比べて随分と人も少なくなりました。


少女はオーガの女性に礼を告げ、また中心区画へと戻り販売することにします。





少女は討伐依頼を売り続けます。


販売を続けているとふと少女に大きな影が差しました。


「え・・・」




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見上げると、そこにはこの世のものでは無いような奇妙な生物がいました。


「とうばつ、ください」


大男はどっしりとした声でそう告げます。


「は、はい・・・」


(気にしちゃだめだ気にしちゃだめだ気にしちゃだめだ)


少女は心の中で必死にそう唱え続け、大男を見なかったことにしました。





少女は討伐依頼を売り続けます。


と、傍らから元気な声が響きます。


「討伐依頼、900Gでどうですか~?」




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見ると、そこには別の討伐依頼商会の可愛らしいエルフの娘。


娘は愛嬌たっぷりの笑顔で討伐依頼を次々に売り捌いています。


こちらの販売価格は1000G。


娘がお客を次々に取って行ってしまうので、少女の元にはお客さんが全然来ないようになってしまいました。


「そんな、このままじゃ依頼が売れなくなってしまうわ・・・」


しかしこの機会を逃したらもう2度と良い依頼は来ないかもしれません。


「負ける、訳には、いかないのよ・・・!」




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覚悟を決めた少女はレッドブルを一気飲みします。


「もうこれで終わってもいい。二度と討伐販売が出来なくなる覚悟・・・!」




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少女は高らかに叫びます。


「討伐依頼、800Gでどうでしょうか!」


ライバルの娘の販売価格よりも100G安い価格を。


「く・・・!?」


ライバルの娘は驚き、苦虫を噛んだ様な顔でこちらに被せるように叫びます。


「こちらは700Gですよ~♪」


「こっちは600Gです!」


執拗に、粘着質に。


娘が値段を下げようものならその100G安い価格に。


下がりすぎた値段を戻そうとしたらこちらもその100G安い価格に。


どこまでも、どこまでも執拗に。


もはや少女の瞳に両親は映っていません。


そこには商売に勝つことのみが映っていました。





しばらくしてライバルの娘はここでの販売を諦め、ルーラで飛び去っていきました。




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「はは、勝った。勝ったわ・・・!」


少女は自らの勝利に震えます。


そこにはかつての両親を想い日々を細々と生きていた少女の面影はありませんでした。


「もっと、もっと稼ぐのよ・・・!」





少女は討伐販売を売り続けます。


鬼気迫る様子で売る少女の周りには、ライバル商会は近づこうとしません。


さくさくと売り捌いていた所に可愛らしい声がかかります。




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「おねーさん!おねーさん!」


少女が見るとそこには一人のドワーフの女の子がいました。


討伐依頼を売ってあげた子でした。


「おねーさんがすっごい頑張ってるから、依頼を売ってくれたお礼に獅子門の石を持ってきたどわ!」


獅子門の石は、少女の依頼にさらに付加価値を加えてくれる、言うなれば売り上げアップが見込めるとてもありがたいものでした。


しかし少女は金にくらんだ目で女の子に言い放ちます。


「あぁん!?獅子門の石なんか使ってたら一人一人の回転率が落ちるだろうがよぉ!嬢ちゃん、思いやりのつもりかもしれないけどね、もっと商売を勉強してから出直してきなさい!」


わざわざ遠い獅子門まで行って来てくれた女の子に対してあるまじき暴言です。


しかし少女は自身の失言に気づくことも無く、女の子に睨みを利かせ、


「ほら、商売の邪魔だよ!さっさといきな!」


そう言い放ちました。


ドワーフの女の子は顔をくしゃくしゃにして泣きながら走り去ります。


「ふん、私には金が必要なのよ、金が・・・」





少女は討伐依頼を売り続けます。


「おい、そこの君」




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自分が呼ばれた事に気付き振り返ると、そこにはバニーヘッドのウェディの男性と、ピンクのユニフォームに身を包んだ婦人が居ました。


(げ!こいつらは確か・・・)


そこにいたのは少女が所属する商会の会長とその婦人だったのです。


この二人は変わり者な事で有名で、社員の仕事現場に突発的に現れては仕事の妨害をし、その中でもちゃんと販売を続けることができるかどうかを試す事で有名でした。


(よりによってこんな時に・・・)


少女の思惑とは外れた所で二人は小芝居を始めてしまいます。




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「ふぉっふぉっふぉ、お前よ。この辺りにマッチ売りの少女がいるらしいのだが見かけなかったかね?」


「あらあら、それなら私の後ろにいるじゃありませんか。うふふふ」





(うふふふ、じゃねぇよ!)


隣でこう言われては商売にも集中できません。


少女は必死に気にしないようにしながらも商売文句を言い続けます。


少女が意に介していないと分かると二人の行動はエスカレートしていきます。




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少女の前後に回り包囲すると様々なポーズを取り妨害してくるのです。


(邪魔!邪魔だよおい!)


しかし相手は組織のトップ。そんなことを口にしてしまえば首が飛びます。


堪える少女に会長は言います。


「時に君、先ほど聞いた噂なのだが、我が商会の社員がお客に暴言を放ったと報告があったのだが、何か知らないかね・・・?」


少女の背筋が冷えます。


まさか先ほどの出来事がばれてしまったのでしょうか。


「いえいえ、私はそんなこと知りませんよ?酷い人がいるんですね」


「あぁ、全くだ・・・」


どうやらばれては居ない様子。


少女が内心ホッとなでおろすと




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「どわ!お父さん!」


(げぇ!)


ふと見れば先ほどのドワーフの女の子が居ます。


そしてお父さんと呼んだ相手は目の前の会長。


「あ、はは・・・。会長のお子さんだったんですか・・・」


「あぁ、話は娘から全て聞いた・・・。非常に残念だよ、真面目だった君がそんな暴言を吐くとは・・・」


そう、全ては最初からばれていた上で、少女は試されていたのです。


「え、あ・・・そんな私は・・・。そうだ、レッドブル、レッドブルをください・・・。あれがあればまだまだ頑張れるんです・・・」


「レッドブル?何を言っているだ・・・?」


「はは・・・レッドブルを・・・。お願いですからレッドブルをください・・・」


短時間に多量のレッドブルを飲んだためどうやらレッドブル中毒になってしまったようです。


そしてその禁断症状で少女はガクガクと震えます。


「れっどぶル・・・れっドブるを・・・」


「ふむ、何を言っているかわからんが・・・。残念ながら君のような者をわが社においておくわけにはいかない。君は今日限りで・・・」





「クビだ」








ランガーオ村への帰り道を少女は歩きます。


「アハハ・・・ワタシはお金をかせがなキャいけないん・・・でス・・・」


「おねがイですかられっどブるを・・・もっトもっとレッドぶるを・・・」


もはや何もかもを無くした少女はよろよろと歩きます。


ふと懐から何かがごろりと転がり落ちます。




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「ア・・あア・・・!」


それは全部飲んでしまったと思っていた、最後の一本のレッドブルでした。


「アハ!アヒャ!れっどぶるダ!マダアッタ!ハヒャハハアハ!!」


嬉々とした表情で少女はレッドブルを一心不乱に飲みます。


それはそれは幸福そうな表情でした。


「ウマいなぁ・・!これでマダまダ売れル・・・!もっTOもっどかせげれう!」


その時ブツンと、少女の頭の中で何か大事なものが切れる音がしました。




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「アギャ!ヒ・・・ヒヒヒ・・・」


「ウマい・・・もっとカネを・・・ヒヒ・・・」


「カネ・・・ウマ・・・」


こうして少女は金に目が眩んだせいで誰にも看取られること無く、報われる事無く、急性レッドブル中毒でこの世を去ったのでした・・・








※この物語はフィクションです。実在する人物は何も悪くありません。実際はこんな殺伐としていません。





来て下さったフレのみなさんありがとうございました!


長い討伐依頼も楽しくできたよ!


ちなみに今回の収支

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515661G


もっと行けるかと思ったけど同じ依頼の人との競り合いが凄くて思ったより稼げませんでした。


やっぱり黄色文字依頼は強い・・・





良い討伐販売を引いた人が一様に言う名言があります。





「まぁ、たまにでいいよね」





うん、本当にそう思います。



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