『親になって初めて、

 親のありがたみが分かる』



誰もが一度は耳にしたことがあるであろうこの言葉は、親になって19年目の今日も、私にはよく分からないままだ。



きっと一生分からないと断言できる。



親の愛なんて所詮、親のエゴが漏れなくくっ付いてくるもので、むしろ愛の方がエゴのオマケとちゃうん?ぐらいなもんだし、



こんなもんを、親のありがたみとか言って振りかざすやつの気がしれんわと、割とマジで思ってる。



私が親になって実感したのは、親も未熟なただの人間にすぎないことと、



その親の未熟を補って余りある、子どもたちのありがたさだ。



どんなに私がダメ母でも、ちゃんと母ちゃん子でいてくれるうちの子どもたちは、マジで天使だと思っている。



だから今、子育てに悩む全てのお母さんたちに伝えたい。



目の前のその問題は多分、あなたの愛情不足のせいなんかじゃないと思うよって。



だって、愛情が足りている親なんか、いるわきゃないもの。



それでもどうにかやっていけてるおうちが、世の中いくらでもあるわけで。



てゆーかそもそも、子育てに悩んでいる時点でその親御さんは、ある程度の愛情があるわけで、親の愛情なんてその程度あれば充分だと思う。



それを、愛情不足のせいだ云々宣うのは、ぶっちゃけ呪いだよね。



その呪いの出所こそ、昔のエライ人が、親の愛だとかありがたみだとか呼んできたモノだったりするんじゃないかと……あ、炎上するかな、これ笑



でも、まぁ割と真面目にそう、思ってる。



だから、今、目の前にあるそれは、あなただけのせいじゃないよ。



でも、現状を変える力を持っているのは、あなたかもしれないけど。





4つ子の魂

テーマ:

【4つ子の魂】

 

 

「3つ子の魂百までも」の“3つ子”とは、3つ子ではなく、3歳(数え歳で)の子どもの事を指しているらしいと知ったのはいつだったか。

 

 

今回はそんな、ママのお話から。


きっかけは、ランドと、久しぶりに、登校拒否の頃の話をしたことだった。


初めての登校拒否は、年少の頃。


保育園だから、登校拒否ならぬ登園拒否だった頃だ。


それを皮切りに、一年生、四年生と計3回。


3年ごとに訪れた登校(園)拒否時代の話を。


当時の頃を振り返って、あれこれと話しているうちにふと、ランドがこんなことをこぼした。


ランド「大人ってさ、なんであんなバカなんだろうね」


母「……え、ナニそれ母ちゃんに喧嘩売ってる?」


ランド「母ちゃんの事は言ってない」


母「……(念のため)父ちゃんは?」


ランド「父ちゃんも違う」


母「……(それは良かったけど)どゆこと?」


ランド「父ちゃんも母ちゃんも、なんか違うじゃん。普通の大人と」


母「……………」


どうやら、先ほどの“バカ” 発言の中に、パパとママは入っていないらしいが、それはそれで、


母「え?何か、母ちゃんディスられてる?」


ランド「ディスってないよ」


母「だって今、変人って言ったよね?」


ランド「いや、いいかた」


母「違うんかい」


ランド「だって父ちゃんも母ちゃんも、おいらたちの事、子ども扱いしないじゃん」


母「……まぁ、そうな」


ランド「でもさ、保育園とか、小学校の先生とかさ?」


母「うん?」


ランド「何かさ、“子ども” って名前が付くと、全員に対して、おんなじノリで扱ってくる大人いるじゃん」


あぁ……なるほど。


ランド「対子ども用っていうか、なんかさぁ、あれだよあれ、歌のお姉さんみたいな」


ーー歌のお姉さんに謝れ。


ランド「じゃなくって、あれはテレビだからいいやん?実写であれやってたらなんか、アレやん?」


ーーー語彙力。


しかも実写て笑


まぁ、言いたいことは分からんではない。

 

要は、いかにも “子どもってこう接しとけばいいんでしょ” 的な扱いが嫌だと。


そこまで話して、ふと、思い当たったことがある。


ーーママも、なんかそんなような、いやちょっと違うっちゃ違うけど、まぁ似たような感じの事を、考えていたことがあったなと。


いや、決して大人を馬鹿だと思っていたわけではない。


ではないけれど……なんていうか、あれだ。


子どもの世界って、子どもにとっては当たり前で、間違いなくほぼ全員がその世界を共有していて……でも、どうもそれは、大人には分からないらしいって事。


それを、4歳の頃のママは不思議に思っていた。


何で大人って、こんなに子どもの事が分からないんだろうって。


まぁ今にして思えば、単に当時のママにとっての大人、つまり、ママの母親が…不思議ちゃんというか空気読めないちゃんというか、まぁそんな感じだったというだけのことなのだけれど。


でも、子どもの世界というか、子どもであるという感覚とか、そういったものは、どうやら大人になると忘れるというか、きれいさっぱり抜け落ちてしまう人が大半であるってことはまぁ、間違ってないと思うわけで。


いやでも大半ってことはさ、少数ながらいるんだよね、子どもの世界とか感覚を、ちゃんと共有できる大人って。


当時のママにとってそれが、幼稚園の担任の先生だった。


その先生は、ちゃんとした大人でありながら、子どものことを分かってくれる、ママにとって有難くも希少な存在だった。


それはママにとってすごく、すごく大事な出会いだったと、今にして思う。


あの先生がいなかったら、ママは多分、


「大人ってバカだなぁ…」


とか言っちゃう子になっていたかもしれないのだ。


と、そんなことを思いめぐらしていてふと、思い出した。


4歳の頃ママが、


“今の、この、子どもであるっていうこの感じを、

 この世界の見え方を、このまま、

 これを持ったまま、私は大人になる 

 何歳になってもずっとこれを忘れずに持ち続けていつか、


 「お前も大人になったら分かるよ」


 とか、口が裂けても絶対!!言わない大人になる!! ”


と……誰にだか、何にだかは分からないけど、


いや多分きっと、自分自身に。


齢4歳にして、固く誓った日のことを。


もちろん、当時の言葉はこのままではなかったけど、

 

 

心に誓ったあの感じを、今言葉にするなら、こういう事だったと。


何せ40年以上昔の話で、すっかり忘れていたけれど、なんだかんだ、多分ママはその初心を、それなりに貫いて生きてきたのかも、しれない。


だから、学生バイトの時代から、子どもに関わる仕事を主に選んできたわけだ。


ストン、と、なにかが腹に落ちてきた。


子育ては面白い。


実に色んな事を、思わされたり、思い出したり、させてくれる。


ママは多分、いわゆる子ども好き、というやつではないと思う。


子どもを見ると無条件で可愛がりたくなる、みたいなのは、申し訳ないけどそんな、無い。


だけど、子どもの成長を助けるのは大好きだ。


これまでもそうだったけど、多分、この先も一生、そういうことをしていくのだろうな、と思う。


だけどママは、少なくともあの頃よりもは多少、大人になって、一つ分かった事がある。


子どもの世界を共有できる大人は、思うよりずっと…本当に少ない、ということ。


皆ね、忘れちゃうんだよねきっとね。


ママみたいにさ、4歳であんなことを誓う子どもなんかそうそういるわけないから。


忘れちゃうんだよ。


でも、やっぱりいるよ、たまにはね。


ほらあれ、ミステリというなかれ?でさ、言ってたじゃん。


『子どもはバカじゃないですよ。自分が子どもの頃、バカでしたか?』


って。


少なくとも、あれを書いた作家さんはさ、知ってるってことだよ。


とかとか。


ランドに話してみたところ。


ヤツは堂々とこう、宣いやがった。


「子どもをバカだと思ってる人はさ、自分が子どもの頃、バカだったんだよ」


ーーーえ~っとぉ………。


ママは、それについてはノーコメントでいきたいと思います。





大人なので!!


 

【マリンの学力向上委員会5~療育整体~】

 

 

 

療育整体に出会ったのは2023年。



マリン中3の夏。


例によって、花風社の書籍がきっかけだった。

 

 

 

 

 



療育整体に出会う約2年前、ママは他の整体院の養成講座を受講し、既に整体師の資格をもっていたのだけれど、


療育整体に強烈に惹かれたのは、その手技の圧倒的な簡単さと、所要時間の短さだった。


書籍のQRコードを読み込んで動画を見てみると、マジで2秒!とかの手技もある!


整体で血流を上げると発達が進むというのは知っていたけど、そのあまりの簡単さに、


広めたい!!


と……ちょっくら堺市と立川市まで、講座を受けに行ってきた。


講師の松島先生は、ご自身のハゲいじりをちょいちょい交えつつ笑、


実にサービス満点、ぶっちゃけ情報量過多な講座で。



でも、動画撮って良いよとの、ありがた~いお言葉のおかげで、ママはその後もせっせと講座を受講し、


気づけば昨年秋、


療育整体師プロ


になっていた☆


その間、約一年。


子どもら全員(たまに旦那にも)に、せっせと療育整体の施術を続ける日々。


療育整体、マジですごい。


何が一番すごいって、子どもたちが毎日のように、


「ねぇねぇ、今日整体できる?♡」


と、かわいくおねだりしてくるところ。


いや、こんな療育ある!?


今まで数々のトレーニングを、どんだけ辛苦しながらやってきたことか!?


……とまぁ、それは置いといて。


毎日とはいかねど、週に何日かの施術をせっせと続けること一年。


最初に変化を感じたのは、集中力の持続時間。


以前より明らかに、伸びている。


ついで現れたのは、表情。


「マリンは明るなったなぁ」


と……(ママの)父に言われてはっとした。


そういえば、中3の頃に比べて、表情がぐっと明るくなっている。


そんな小さな、でも着実な変化に、ママが密かにニヤニヤしていた昨年夏の終わり。


ーーついにその日はやってきた。













【追試無し!!】



満面の笑みが見えるようなLINEが、マリンから送られてきたのは前期の終業式のこと。


9教科中、最低でも3教科はひっかかりそうとの、本人の予想を大きく裏切って、マリン史上未曾有の高得点をたたき出した成績表&得点表が写メられてきた。



「お、おぉう……?」



確かに、全部合格している。


どころか。



「80点台が、ある……!?」


しかも、


「現国が、72点、だとう……!?」


にわかには信じられなくて、何度も何度も確認する。


……てゆうか……27点の間違いとちゃうやろか!?!?


脳裏に浮かぶのは、ベソをかきながら、現国のレポートの難問(マリンにとって)と闘っていたマリンの横顔。


子育て始まって以来、もう何度目か分からない10度見は、知らぬ間にあふれていた涙で強制終了。


通信の試験レベルが、全日制よりどんだけ低いとか、そんなんええねん。


マリンは、マリンの全力で、この点数を勝ち取った。


それがどんだけすごいことか、ママが一番知ってんねん。







ーーこうして。



  試験終了から10日あまり、ママ毎日のように必死で考えていたマリンへの慰めの言葉は、どれ一つとして、日の目を見ないで終わったのだった笑

 

 

 

 

【マリンの学力向上委員会…だったはずが…!?~プロテイン迷走記その後~】

 

 

苦心惨憺してたどり着いたプロテイン作戦

 

「プレーン+ミロ」

 

だったが、その後、アメリカ産の70%以上?だったかな?

 

のプロテインから、基準値を越える重金属が検出されたという記事を見て、

 

重金属まで検査しているプロテインに乗り換えた。

 

 

今飲んであるプロテインはこちら↓

【ハイブリッド腸ファイバープロテイン】

 

 

これまでの格安プロテインと比べると、結構お値段がアレなんだけど、

 

 

うちの子らの場合、玉子も鶏肉も大好物なので、

 

 

プロテインはそう毎日は飲まなくていいしと思って、

 

 

定期便を適当にスキップすることで、

 

 

何とか予算内に収まっている。

 

 

このプロテインもやっぱり、ランドは最初、ココア味にやや難色を示した。

 

 

どうやら甘味料の味がお気に召さないらしい。

 

 

贅沢者め。

 

 

ということで、ココアはママとマリンが飲んで、ランドにはプレーンを買ってあげる事に。

 

 

ランドはそのプレーンにミロを混ぜて、牛乳に溶かして飲んでいる。

 

 

元々、マリンの学力向上のために始めたプロテイン生活だったのに、

 

 

この半年ちょっとで、ランドの身長は10cmも伸びた。

 

 

まぁ、そもそも成長期だったり、

 

 

部活動を水泳部からバレーに変えたりしたので、

 

 

プロテインだけが原因なわけはないのだけれど、

 

 

本人はいたく満足のご様子だ。

 

 

スカイの身長に追いつくまで、あと、11cm。

 

 

ふぁーいと☆

 

そんなこんなで、ランドがちょっとだけやる気を見せた今がチャンス!

 

 

と思い。

 

 

早速、情報集めから始める事に。

 

 

とはいえ、その情報も、闇雲に集めても仕方ないので、

まずは、ランド自身のご希望を聴き取りすることに。

 

 

「とりあえず、どんな高校行きたいん?」

 

「どんなって?」

 

「いや、何でもええねん。

 

 近いとこがええとか、校則少ない方がええとか、

 

 女の子の顔面偏差値(←え)が高いとか、

 

 何かあるやろ?」

 

 

「まぁ、そんなめちゃくちゃ遠くは嫌かな」

 

「そやな」

 

「電車に乗ってる時間が1時間以内で」

 

「うん」

 

「校則ゆるくて」

 

「うん」

 

「行事楽しくて」

 

「うん」

 

「部活も楽しくて」

 

「うん……(要望多いな)」

 

「受験せずに入れるところ💕」

 

 

 

 

「あるかぁ💢」

 

 

 

 

「無いの?」

 

「受験無いっちゃ通信やけど」

 

「うん」

 

「通信は部活が無い」

 

「あぁ……推薦は?」

 

「推薦入試かぁ……」

 

 

ーー仕方ない。

 

取り合えず、調べるだけは調べてやろう。

 

 

 

 

 

 

てなことで、まずはスカイの時にお世話になった塾の資料をお取り寄せしてみた。

 

 

折しも春の入塾キャンペーン的なものが展開中の今日この頃につき、

 

 

早速、説明会のご案内をいただいて……2日後に出動!!

 

 

そこで、今の受験事情その他を色々と教えていただけたのだけれど……

 

 

 

 

 

「ランドよ」

 

「うん?」

 

「公立の推薦は、ミズモノやから当てにするなって」

 

「……そうなん?」

 

「目ぼしい高校の倍率聞いたら、年によるけど、4倍とか、なることもあるらしい」

 

「4倍……⛄」

 

「やから、受けてもええけど、当てにはできん」

 

「がーーーん……」

 

「私立なら推薦でいくらでも受けられるところあるけど……」

 

「けど?」

 

「リソースには限りがあるゆえ」

 

「学費が高いのはアレってことね」

 

「そゆこと。うちは3人兄弟の上、兄ちゃんは院まで行きたいとかぬかしとるし、

 

 姉ちゃんは通信のサポート校でまぁまぁ学費アレやし。

 

 お兄もお姉も、精一杯頑張った上での今ここやから、それはしゃーないのは分かっとるな?」

 

「まぁ」

 

「まぁそんなわけで、ランドが私立に特待生以外で進学した場合…」

 

「…場合?」

 

「大学は、国公立でよろ」

 

「!?!?!?!?そんなぁ~~~💦」

 

「ちなみに、国立大に指定校推薦は無い」

 

「……………( ;∀;)」

 

「つまり、自動的に、恐怖の共テを受ける事になる……」

 

「恐怖の共テ……?」

 

「今の共通テストってさぁ、その昔は共通一次って呼ばれてて、

 

 その後センター試験って呼ばれるようになって、

 

 そっから一周回って今は、共通テストって呼ばれてるんだけど」

 

「うん(どうでもいい顔)」

 

「例えば数学ね、数Ⅰ数Aの受験時間70分で、

 

 昔は問題枚数が4枚とかだった時代があったらしいんだけど、

 

 何故か年々増えていて、去年はついに18枚」

 

「うぇぇ~」

 

「からの今年。何枚だったと思う?」

 

「20枚とか!?」

 

「28枚」

 

「!?!?!?!?!?」

 

「つまり、日ごろからどれだけしっかり訓練を重ねてきたかが問われている」

 

「そんなぁ💦」

 

「要は、頭の良さとか、学力そのものというよりは、

 

 地道に努力できる人かどうかを判定、

 

 振り落としをするのが共通テストってことだな」

 

「それ、おいら絶対向いてない…」

 

「そうね(笑)」

 

「大学入試は絶対、推薦が良い……」

 

「うん。んだから、大学入試での私立推薦の道を担保するためにも、高校は公立の方がよろしいかと」

 

「私立は特待生とかあるじゃん?学費安くなったり、タダになったりするやつ!」

 

「あるには、ある。ただし。」

 

「また、“ただし”!?」

 

「高校によるけど、例えばここ(一覧の中でランドが行きたそうなところを指さして)の場合、

 

 ここ数年、入試で特待生が決まることが無いらしくて、入学後の試験で決まる上、一年更新だから、

 

 特待生確定で入学とか、無いらしい。つまり。」

 

「私立に入ってから特待逃したら、恐怖の共テが待っている……」

 

「ご名答」

 

 

 

 

 

「おいら勉強する……」

 

「そうね。それがいいね」

 

「塾とか行くの?」

 

「とは?」

 

「おいらおうちが好き💕」

 

 

 

 

てなことで。

 

 

とりま、リモートで受講できる塾と、家庭教師を調べることになった。

 

 

ーー続く!!

 

 

子育ても3人目となると、色々と、データが蓄積してくるもので。

 

スカイとマリンの時の経験を活かして、ランドの学習は計画的に行きたかったのだけれど…

 

中学校入学から程なく、ママはランドの勉強に口出しするのを断念した。

 

何せ末っ子。

 

それも登園拒否からの登校拒否を、計3回も堂々と(!?)やり抜いた自由人である。

 

やりたくない事は、やりたくない。

 

とりま、塾は行きたくないし、学校の勉強も勝手にさしてくれと。

 

 

 

……分かったよう……

 

 

ランドの勉強に関しては一切口出ししないと決めてスタートした中一一学期。

 

そうはいっても、上二人を見て育ったランドは、中一ショックを予想してか、

 

それなりに勉強し、そこそこの成績をたたき出した。

 

 

 

……まぁ、この調子なら放っておいてもいいけど………一発屋にならなきゃいいけどなぁ……

 

 

と、生温かく見守っていたママの予想通り、好成績の続いたランドは、2学期後半、すっかり油断しまくり、

 

ガクッと成績を落とした。

 

……そらもう、気持ちいいほど真下に落下しよった笑

 

 

ーーほれみい!!

 

  調子に乗ってるからじゃ!!

 

 

と、内心思って(多分口からも出て)いたママであったが、

 

この程度で堪えるランドではないことは重々承知である。

 

なんたって、半年間の登校拒否明けに、学級委員に立候補できる面の皮の厚さなのだ。

 

この程度で殊勝な面して「僕頑張るから塾に行かせてください」とか、言うやつじゃないのだ。

 

分かってる分かってる。

 

 

 

 

ってなことで、冬休みも引き続き放置。

 

三学期が始まっても、学年末テスト期間に遊び惚けていても、放置。

 

 

 

 

ーーそんなある日のことじゃった。

 

私達が通う教会が、老朽化のため、会堂(礼拝するとこ)を移転することになり、

 

現会堂を取り壊すことになった。

 

最後の礼拝があった日の午後、皆で礼拝堂の大片付けをやったのだけれど、

 

カーテンレールやら、

 

スピーカーやら、

 

延長コードやら。

 

諸々、壁の高い所に取り付けられたものたちを、脚立に上って取り外す作業を……実に楽しそうに、ノリノリでやり始めたランド。

 

 

 

さすが、赤ん坊の頃からありとあらゆるもの(グランドピアノとか!!)に登りまくってきただけあって……似合う笑

 

 

周囲の大人たちが笑いながら、

 

 

「ランドくん、大工さんになったら?笑」

 

 

と、声をかけると、

 

 

「それって儲かるの?」

 

 

ときた。

 

いやお前な💦

 

まだ中一の洟垂れ小僧のくせに、発想がいやらしいわ!!

 

可愛い顔してやめなはれ💦

 

 

恥ずかしさも相まって絶句するママを横目に、

 

フォローなのか何なのか、マリンがランドに、

 

 

 

「○っくん(ランドの愛称)は、将来何になりたいの?」

 

 

 

と……マリン、お前良い子だな(^▽^;)

 

 

うんうん。

 

そうやでランド。

 

こんぐらい、ふわっとしててもいいから、夢のある感じのアプローチでお願い。

 

あんたまだ中一なんよ??

 

マリン程ふわっふわでおれ、とは言わんけど、もそっと何かあるやろ??

 

ついこの前まで、プロ野球選手とか言っとったんやから💦

 

 

 

ーーと、そんなママの心のつぶやきを知ってから知らずか、ランドは一言、

 

 

「お金持ち💕」

 

 

ーーおい!!

 

 

 

 

 

“お金持ち”は、職業ではありません!!!

 

 

 

 

 

「お前さぁ、何でそんなに守銭奴なん!?

 

 うちはそりゃ、そんなお金持ちとかじゃないけどさぁ。

 

 明日のご飯の心配するほどの生活はしとらんじゃろ!?

 

 父ちゃん、ちゃんと働いて、普通に稼いできてんねんで!?」

 

 

と、何故かパパのフォローまで交えて言い募るママに、ランドは、

 

 

「分かってるよ」

 

「ほな、何でなん??」

 

「おいら、今より生活水準落としたくない。

 

 だから、父ちゃんより稼げる仕事がいい」

 

 

 

 

ーーいや、生々しいわ!!

 

 

 

 

と、思ったものの……これは、チャンスかもしれん。

 

 

「稼げるかどうかは、どんな仕事に就こうが、お前次第っちゃ次第やけど」

 

「うん?」

 

「建築系やったら、一級建築士を持っとれば、かなり稼げる可能性は高い」

 

「おぉ……父ちゃんより?」

 

「父ちゃんより!!」

 

 

ーー力舌してごめんパパ。

 

 

「いいね💕」

 

 

ようし、ノッてきたな。

 

ふふん。

 

所詮は中一男子。

 

ちょっとぐらい小賢しくたって、実に単純なもんである。

 

 

「ただし、すんごい難しい」

 

「どれぐらい?」

 

「○大とか、○△大とか、□○大あたりの建築科で頑張れるほどの学力なら、

 

 取れる可能性はある」

 

 

「ふぅん……」

 

 

と……別段とっても食いつく風でもないようなふりをして、

 

その実、ランドの目の奥が光るのを、ママは見逃さなかった。

 

 

 

ーー手ごたえは、アリと見た。

 

 

やはり、馬を走らせるには人参がないと。

 

 

やっぱり、勉強頑張るには、目標がないとね!!

 

 

 

 

 

そんなわけで、

 

 

ランドの受験戦略は、思ったより早くに始動したのだった。

 

 

 

ーー続く!

 

 

とりま、通信制高校にしたのは、正解だったと思う。


とにかく、全日制の高校に比べて、無駄な時間が圧倒的に少ない。


何を話しているのかさっぱり分からない集団授業を、毎日6時間もボーっと妄想に費やしていたかもしれない事を思うと、今の状況は本当に合理的だ。


通学時間も日数も、必要なだけでよくて、でも、お楽しみ系の行事(遠足とか文化祭とか)は、むしろ全日制の高校より沢山ある。


ーーお楽しみ系行事、毎月あるんだよね笑


マリンは優しい先輩に囲まれて、別に必須でもないのに、ほぼ全部の行事に参加している笑


ーー別料金だけど。


授業の履修の仕方はちょっと大学に似ているかもで、最低限の時間数をクリアすればあとは自由なので、バイトする時間も充分ある。


1年次は、英数の補習コースがあって、マリンみたいに、中学の勉強に遅れがあっても、フォローしてもらえる。


ーー別料金だけど!!笑


演技の勉強のために、毎月2日休んでも、その他の日に出席しておけば、スクーリングは全然クリアできる。


学校に行かなくて良い日もいっぱいあるから、通学時間も無駄が少なくて、その分、実のある勉強に時間を充てられる。


バイトも自由にやっていいので、社会力も育つ。


総合して、マリンにとっては本当に良かったと思う。



少なくとも、今のところ。


ーー授業料高いけど笑


あとは、テストを頑張るだけ。


こればっかりは、助けてあげられない。


ふぁーいと!!

 

 

そんなこんなで、わりと順調に始まった高校生活の中、5月も半ばになったころ、当初の予定通り、学習問題が持ち上がってきた。


レポートが……全然、進んでいない。


いや、決してさぼっていたワケではない。


むしろマリンは優等生と言ってもいいぐらい、それはそれは毎日せっせと、規定数を遥かに越えた数のスクーリングをこなしていた。


が……行けども行けども、提出レポート数が増えていく気配がない。


気配とか、曖昧に書いたけど、実際は何枚出してるか、保護者も明確に把握できるようになっている。


ーーやばい……すっごい出てない……


ママ「マリン、授業の後半て、レポートさせてくれるって言ってたよね?ちゃんとやってる?」


マリン「やってるよ!」


ママ「じゃあ、なんでこんなに提出できてないの?

   すんごい少ないんだけど」


マリン「だって……」


ママ「だって?」


マリン「難しくって全然進まないんだもん…」


ママ「分からなかったら先生に聞けばいいじゃん」


マリン「聞いてるよ!」


ママ「聞いてるのに、何でこんなに進んでないの??」


マリン「だって、難しいんだもん…」


要は、考えたり、教科書を調べたりするのに、異常に時間がかかっていて、授業を聞いた後の、残り時間ごときでは、全然1個もレポートを仕上げられないと。


とにかく、空き時間にも自習室でレポートするように言い含め、しばらく様子を見ていたものの……マジで全然、進んでいかない。


5月後半、ついに、作戦を変更することにした。


当初の作戦としては、とにかく規定数以上に授業に出まくって、授業後半のレポートタイムに全てを終わらせる、というつもりだったんだけど、それでは全然、時間が足りないことが分かった。


何せ、1つのレポートに、2~3時間かかるのだ。


中には10近いレポートを出さないといけない教科もあって、


とにかく余分なスクーリングや通学に時間を取られている場合じゃない!!


と分かった。

 

ここはもう、タイパを優先して、既定のスクーリングを終えた教科に関しては、学校行かずにひたすら家でレポートをやりまくろう。


ママは大変だけど…もうそれしかない。


ということで、まだ規定のスクーリングを終えていない教科をチェック。


……そこそこ、ある。


ま、まぁ、まだ5月なのだから、当たり前、だ。

 

 

ーー多分。


それでも、規定数に達していない教科だけ受けることにすれば、通学してくていい日が週に何日も、ある。


ただ、マリンは現在、演技スクールの授業料と交通費を自分のバイト代でまかなっているので、そのバイトを極端に減らすわけにはいかない。


バイトも、最低限の時間数は入りつつ、最低限の必要な通学はしつつ、省ける予定は全部カットすることにした。


1年次の履修教科は13教科。


うち、数Ⅰは半年でクリアするのはさすがに無理と判断して、後期に回すことにした。


もう一つ、英語コミュニケーション1については、他教科と授業時間が被っている都合上、前期でスクーリングを終えるのが無理と分かり、これも後期に持ち越し。


あと、体育については、そもそもスクーリング回数が15回とバカ多いので、これも通年で取るしかないと割り切ることにして。


上記3教科を除く、10教科について、できるだけ、前期でクリアする事を目標に……来る日も来る日も、自宅で限界までレポートにくぎ付けの日々が始まった。


最初は学校の自習室でやることも考えたのだけれど、何せマジで時間がかかるので、通学時間もカットした方がいいとなった。


ということで、先生の代わりに、ママがサポートすることに。


ただ、いざ始めてみると、国語は、9個のレポートのうち、サポートしたのは最初の2~3個で、問題のパターンに慣れてくると、どうにか一人でやれるようになってきた。

 

 

保健や教養系の科目も、一人で問題なくやれる。


よしよし。


数学と英語は後期に回したので、問題は理社である。


この2教科が……特に社会が、びっくりするほど、難しい。


社会なんて暗記科目でしょ?


一問一答でしょ?


教科書見ていいなら楽勝じゃん♪


なんて、なめてかかっていたら大間違いで、ほぼ全単元で、内容を深く理解したうえで、自分なりの意見を述べるという、20年前には全然無かった形式の問題が、山盛りてんこ盛り。


……これは……マジで難しいわ……


理科に至っては、教科書を一読しただけではまず、理解できない問題の、山、山、山!!!


ってゆーか、J(ジュール)って何!?


K(ケルビン)って何!?!?



………ママは文系だったのだ。


高校物理なんか!!


一回も!!!


お目にかかったこともないのだ!!!!!


……そこはしかし、現代たるもの、ありがたいもので。


ママに分からなければ、Google先生が大体の事は教えてくれる。


Google先生に聞いて分からない事は、YouTube先生に聞けば大体分かる。






…………ママ、は。






ということで……



マリン「お母さん、ここ分かんない」


ママ「どれどれ」


ママも分かんない

 ↓

マリンには、他の教科(保健とか、比較的取り組みやすい教科を)をやるように指示して、
その間にママが、Google先生に聞いてみる

 ↓

それでも分からないときはYouTube先生に聞く

 ↓

高校物理の入門を、3時間がかりで(ママが)勉強

 ↓

(ママが)ノートにまとめる

 ↓

マリンに説明する

 ↓

ママのまとめノートを見ながら、別紙で一緒に問題を解く

 ↓

一度解いた問題を、今度はマリン一人で解いてみる

 ↓

レポート画面(デジタル)に解答を記入



というプロセスを、何度か…いやむしろ、何度も!!通りつつ、進めていった……


いや、ママ仕事できひんやん!?!?


という日も、何日もありつつ。


それでも、マリンなりに、自分で教科書と向き合うやり方(索引を使ったりとか)を、ちょっとずつでも身につけていき。


時には泣く泣く、ダンスやお楽しみの予定をキャンセルしたりもしつつ。


何と。

 

 

〆切を1週間残して、10教科全てのレポートを提出しきった!!



えらいぞマリン!



頑張ったね!!!



あとは、テストさえ受かれば、単位取得だよ!!


……いやもちろん、ここが最大の難関と思われる。


が……マリンの通う学校は、本当に親切で、わざわざレポート復習用プリントなるものを用意してくれてあった。

 

 

多分、テスト勉強はこれを頑張ればいいんだろう。


ただ、解答は配布されなくって、イチイチ職員室に行って、解答ファイルを貸し出し手続きをして、プリントアウトしたレポート復習用プリントに書き写す必要があった。


多分あれだ。


不正対策だな笑


マリンはこの、レポート復習用プリントが配布(データ)された翌日から、学校で2日間缶詰、前期に試験を受ける教科について、全ての解答を書きとった。

 

 

マジ頑張った。

 

 

その日から、時間のある時に着々と、レポート復習用プリントに取り組んでいるマリン。

 

 

やると決めたら案外頑張り屋なのだ。

 

 

中学2年まで、今一つ勉強を頑張れなかったのは、ただ、分からなかったからというだけなのだ。

 

 

決して、なまけていたわけではない。

 

 

むしろ、最初から要領よくやれてしまうランドなんかより、マリンの方がよほど努力の人だと思う。

 

 

正しい方法で、正しい場所で、充分な量続けた努力は、裏切らない。

 

 

by林先生?

 

 

いつ、どこでかは分からないけど、ちゃんと実を結ぶ日が、必ず来ることを、

 

 

ママは知っている。

 

 

頑張れマリン。

 

 

ーー前期テストまであと、2週間ーー

 

 

 

 

通信制高校といっても、今は大体は通学するものらしく…しかも愛知県には、山ほど通学サポート校がある。


その一つに、この春から通い始めたマリン。


花の女子高生である✨

(古いゆーな!)


とは言え、大体の人がそうであろうが、ママも通信制高校にそもそも詳しくない。


どんな高校生活が待っているのか、説明だけではイマイチイメージしきれない部分もありつつ…全日制の高校よりも、少し遅れて、マリン達の授業はスタートした。


授業、といっても、いわゆる全日制の高校によくあるような、集団で受ける一斉授業ではない。


週2時間ずつある数英の補習クラスをのぞいては、基本的に少人数授業だ。


マリンの入った高校では、これが、いわゆるスクーリングとしてカウントしてもらえる。


スクーリングは、教科によって最低何コマとか決まっていて、例えば数学はたったの2時間だった。


………2時間で数Ⅰ全部なんか理解できるかぁ!!!!!


と……思わんでもないけど、ぶっちゃけ数学は、教科書見ればやれちゃう子はやれちゃうと思うので、スクーリング回数が少なく設定されてるんだろう。


もちろん、マリンはそんなんじゃ全っっっ然!!足りないので、せっせといっぱい通っていた。


何せ、数学はレポート数が多い。


ここでちょっと、通信制高校の説明をしておくと。


通信制高校の場合、全日制と全然違って、

① 各教科のスクーリングを規定回数受講する
➁ 各教科の「レポート」と呼ばれる問題集みたいなプリントを、規定枚数解いて提出する
  ※レポートは、教科書を見て解いていい。定められた合格点に満たないと再提出となる
③ ①と②を満たした教科について、テストを受ける


テストにはもちろん合格点があって、これは高校によって違う。
その合格点をクリアすると、単位が取得できる。


マリンの学校は、テストが前期と後期の二回あって、一年次に履修する科目の中で、①②を前期の〆切までにクリアすると、前期のテストが受けられる。


①②が前期の〆切に間に合わなかった教科は、後期に①②を頑張って、後期のテストを受けることになる。


つまり、年に2回、単位を取るチャンスがある。


前期でも後期でも単位を取れなかったら、2年次に持ち越すことになる。


こういうシステムなので、留年は無い。


3年間、これを繰り返して、卒業までに、必修科目を全部含んだ74単位以上を取得すると、卒業が認められる。


細かくは、学校の行事に参加するとか、追加の条件があるにはあるけど、まぁそれは置いておいて、とにかく主な課題はこの74単位のクリアとなる。


マリンの学校は、2年次にはわりと自由に単位を選べるけど、1年次は取れる単位が決まっていた。


ただし、単位数は26単位と28単位の2択。


当然、1年次に沢山とった方が2年3年が楽になるわけで、とりま、28単位を履修登録した。


4月頭に入学式があって、それから1週間程、謎のお休み期間があった後、4月の半ばに授業(スクーリング)が始まった。

マリンは中学時代、大体毎日学校に行けていたので、大丈夫だろうとは思っていたけど、自由度の高い学校で、朝型の生活をどれだけ維持できるか、ちょっと心配しないでもなかった。


が、結論から言うと、全っ然!杞憂だった笑


マリンは自閉っ子にあるまじき(!?)朝に強い子なのである。


夜寝る時間も早い。


21:00を過ぎたあたりでトロンとし始め、大体22:00にはご就寝の毎日。


んで、6:00過ぎには起きてくる。


そこからがまぁ、ごゆっくりではあるのだけれど、なんせ6時に起きてる訳だから、さすがに8時過ぎの出発時間には間に合っている。


ちなみに我が家では、高校生は自分で弁当を用意するシステム(!?)を、スカイの頃から採用している。


なので、マリンも朝からせっせとお弁当作りに勤しむ毎日がはじまった。


ママが弁当用に仕込んだ小分け野菜を含む、各種弁当用の冷凍食品をほぼそのまま詰めていたスカイと違い、マリンはなんだかんだ、ほぼ毎日弁当を手作りしていっている。


ゆうても、玉子焼き焼いたり、ウィンナー焼いたり、きゅうりをハムで巻いたりぐらいなんだけど、マジで冷凍庫の在庫をinしていただけのスカイに比べれば、遥かに手の込んだ弁当を、毎日ご機嫌で仕込んでいるマリン。


楽しそうで何より。


去年の秋に書いた通り、マリンの学校選びは、それはそれは大変だった。


マジで。


物理的に。

くわしくはこちら。


 

ただその甲斐あって、思っていたよりずっと良い学校だった。


思ったより、というのも失礼な気がするので一応書いておくと、別にそんなにアレな想像をしていたわけではない。

 

 

ただ何せ、通信制高校自体をよく知らないので、とにかく3年間無事に通って、単位を修めて、卒業資格を取れればそれでいい、という位の期待値でしかなかったわけで。


でも入ってみたら、思っていたよりずっとずっと良い学校だった。


いやまじで。


まず、説明会で聞いていた通り、まじで先輩たちがめっちゃ優しくってしかも親切だった。


全日制高校だと、部活や生徒会以外で先輩と関わる機会ってそうそうないと思うんだけど、マリンの高校では、授業の空き時間に、空き教室で先輩がいっぱい、色んな事を教えてくれる。


マリンは、前期のレポートで1個だけ再提出になった教科があったのだけど、先輩に教えてもらって、無事にその日のうちに再提出できたらしい。


先生たちも、基本的にみんな優しくて親切。


入学前からの友達が、偶然同高校だったりしたのもあって、マリンの高校生活は、まずまず順調な滑り出しと言えた。


まずは一安心……と言いたいところだけれど、もちろん、当初の心配はちゃんと心配な感じで噴出した。


当初の心配……勉強である!!


いや、そりゃ勉強するよね、高校だもんね。


分かってる、分かってる。


高校の勉強がそんな簡単じゃないってことぐらいはちゃんと分かってた。


何せママは独身時代に10年程、プロの家庭教師をやっていたワケで、教え子の中には高校生もいた。


中学の時点で、普通クラスの授業についていけなかった子にとって、高校の…普通科の学習内容が簡単なワケないってことぐらいは、ちゃんと分かっていた。

 

 

分かってはいたのだけれど…何せ、勝手の分からない通信制高校、何がどう、具体邸に “大変” になってくるのか、全然、想像できていなかった。


ーーー長くなったので続きは次回。

 

あの日

テーマ:

高速バスなう。


石川県にある、旦那の実家に、私一人で向かっている。


旦那と子どもたち…マリンとランドは、昨日、ひと足先に出発した。


私だけ、カッタ(柴犬)のお世話があるので、昨日は家に居残りして、昨夜と今朝、散歩とエサと水を済ませてからの、今、日帰り旅。


北陸行きのバス旅は、景色が良くってなかなか楽しい。




今年のお正月は、スカイと旦那が、それぞれ一日ずつ、カッタのお世話のために、時間差で帰省した。


今年…2024年の元旦。




そう。




ーーあの日である。




大晦日、スカイを残して、旦那と私と、マリンとランドの4人が、先に石川県に向かった。


スカイは、地元で過ごす最後の大晦日を満喫すべく、お友達との予定確認に忙しそうな様子で…翌日の一人旅も、それは楽しみにしていた。


そんなこんなで、旦那の実家で大晦日を例年通り…美味しい海鮮に囲まれてすごし、年越しそばを早めに食べて、実家近くのホテルで4人で一泊。


翌日の元旦は、朝ものんびり、ホテルのバイキングを食べたあと、旦那らは初詣へ。


マリンもランドも、従兄弟のお兄ちゃんズに遊んでもらって、大満足。


遅めのお昼はお雑煮で、やっぱりのんびり。


スカイは、当時、名古屋ー金沢間が直通だった特急しらさぎで、ルンルンの一人旅模様を、Instagramで上げまくりながら、石川県へ。


お昼過ぎに無事到着して、やっと家族5人が揃ったところで、ご近所へお土産の買出し。


午後二時過ぎ、カッタのお世話のために、旦那だけ、愛知県の自宅へ出発。


私と子どもら3人と従兄弟のお兄ちゃんズは、おじいちゃんおばあちゃん、それから叔母さんにご挨拶して、ニ日目の宿泊先へ出発。


チェックインを済ませて、和室の畳でのんびりすること一時間ほど…


全員のスマホとガラケーから、ほぼ同時に、けたたましい音が鳴り響いた。









ーー南海トラフ⁉︎







なんて言うか、とりあえず地震が来たら、南海トラフと思ってしまうのはまぁ、仕方ない、仕方ない。


(仕方ないよね⁉︎)



当日、私たちの居た部屋は、七階建ての建物の五階。


P波と思しき、小刻みな…でもそれなりの震度の横揺れがおさまった後、同じくけたたましい警報音に続いて、S波らしき激震がやってきた。


ーー地震アラートは、案外使える。


とかなんとか、動揺を通り越した現実感の無さで、あさってな方向に余計な頭を使いつつも…


ーー咄嗟に、上を見る。


ーー部屋中を見回す。


落ちてきそうなものはない。


危ないのは、窓ぐらいだろうか?


「窓から離れて!柱につかまって!」


ーー揺れが大きい。


ーー長い。


ーーー長いっっってっっ!!!!!



ーーーマジでめちゃくちゃ揺れてるしっっっ!!!!!



ーーーこれ……これ、本当に、
   ヤバいやつなんじゃあ………。



♾️形の揺れが何分も続いて、ランドとスカイは乗り物酔いの様相を呈していた。


「母ちゃん、おいら気持ち悪い…」

「吐く?」

「吐くかも…」


とりあえず、ビニール袋をランドに渡した。


「吐くなら、そこに吐きな。
 我慢しなくていいから」



言ってる間にまた、警報音と次の揺れが来る。


マリンは言葉を失ったように、蒼白な顔で、薄っすらと開いた口で息をしていた。


ろくな対処も出来ない私とは対照的に、従兄弟のお兄ちゃんズの一人が、入り口のドアを開けた状態で、スリッパをかませてくれた。


スーツケースを横に倒すように指示してくれたのも、彼だった。


さすが教職員…学校の避難訓練は、伊達じゃない。


年齢だけダブルスコア越えのおばちゃん(私だよぅ…)より、よっぽど使える。


震度五とは思えない大激震の中で、子どもの頃、避難訓練をちょっと馬鹿にしていたことを、猛省した。


ニ度目の揺れがおさまって、とにかく水を確保した。


今のうちにと、スマホを充電。


旦那と実家に、LINEで取り急ぎ、今のところ無事と伝える。


テレビをつけると、当たり前だけど地震速報の最中だった。


三度目の揺れ、四度目の揺れ…


ーーこれ、この建物、いつまでもつのかな…


一度目は耐えられても、何度も度重なると、持ち堪えられなくなることがあるとか、聞いた事がある…。


でも多分、♾️の形に、大袈裟に揺れるということは、免震がしっかりしているからなんだろう。


ーーそうだと思いたい。

ーー誰かそうだと言ってくれ!!


てゆうかこれ、もしここで、私たちに万一の事があったら、残された旦那が可哀想すぎるだろ………


従兄弟のお兄ちゃんだって、まだ二十代前半だ…


ーーどうにか、この子らだけでも助からんものか。


こうゆう時、人間は案外と、自分のいのちよりも、その他の人たちの事を考えられるものなのだと、この時初めて実感した。


まぁでもそりゃそうか。


危機に直面した時に、自分の事しか考えないように出来ていたら、人類なんてとっくに滅びているに違いない。


とは言え、ここまできたらもう、この建物の耐震性頼みである。


ここは五階。津波の心配は、まず大丈夫だろう。


ここまで持ち堪えているんだから、どこに逃げるより、このままここにいるのが最善策のはず。


どちらかと言えば、津波が心配なのは、実家の義父母の方だ。


この地震の数十分前、従兄弟のお兄ちゃんズのうち、兄の方が、マリンの忘れ物(携帯電話💧)を取りに、旦那の実家に戻ってくれていた。



携帯を忘れてきたとマリンが言った時は、正直、


馬鹿者ーーー!!


と思ったが、こうなったらむしろ超ファインプレーである。


従兄弟のお兄ちゃんが、義父母を無事に誘導して、避難させてくれると信じよう。


と、祈る思いで、旦那の実家の様子をLINEで尋ねたところ…


ーーまさかの義父、避難拒否が発覚!!




大馬鹿者ーーーーーー!!!



いや、お義父さんごめんなさい🙏



でも……でも、あのですね?



四の五の言ってないで、とっとと避難してもらえませんかね⁉︎⁉︎⁉︎


ーーいつも温厚なお義母さんが、流石にまじギレしているらしい。


当たり前だよ!!!


てゆーか、Mくん(従兄弟のお兄ちゃん)!!


今すぐおじいちゃんを何とかしてあげて!!


ーーと…その場の全員が、離れた場所で祈る思いでいたのを知ってか知らずか。


義父は最後まで避難拒否のまま通したらしい…


ーーあの家の辺りには津波、来なかったからよかったものの……😱😱😱



さて、そんなこんなで、当然、宿泊先の宿も、一時チェックインをストップ。


スタッフ総出で館内点検中と、館内放送が流れてきた。


夕飯も遅れるもよう。


ーーいや、夕飯遅れるとか全然大丈夫だけどね。


さっきからアドレナリン出っ放しで、全っ然!!空腹感ゼロだから😂


ともあれ、二時間ほど遅れただけで、バイキングは普通にスタートした。


ーーマジ、プロだわ。


他の部屋のお客さんたちも、誰一人パニックする事なく、誰一人文句も言わず、粛々と、自分たちの順番がくるのを待ち…


なんていうか、こんな時になんだけど、いい国だなって思った。


スタッフさんも、お客さん達も、皆んな皆んな素晴らしい。


などと…続く余震の中、一周回って感動の域に達した頃。


館内放送よりも、なんなら地震アラートよりも頻繁に鳴り始めたのは、スカイのLINEだった。



ーー石川来る途中、Instagram上げまくってたって言ってたもんねぇ…


鳴るよねぇ、そりゃあ…


ママの方は、流石に相手も大人たちなので、こんな非常時にLINEでスタ連してくるようなおバカはいない。


が、そこはそれ、スカイの友達は相手も高校生なワケで…


『大丈夫か⁉️」


のスタンプの嵐、嵐、嵐…いやもう、地震だけでお腹いっぱいだから‼️


とは言え、ママの友達たちだって、何も言ってこないだけで、心配はさせているに違いない。


お正月は石川だって、皆んな知ってるし。


とりま、LINEのステイタスと、タイムライン、それからFacebookのタイムライブにも、



「とりあえず家族全員無事です」


と、上げておいた。


その夜は一晩中、余震の度に、うたた寝を中断され……温泉宿でゆったりまったりの予定が、非常事態中の非常事態という、まさかの正月となった。


一夜明けて、一月二日。


どのテレビ局も、地震、地震、地震…📺


新幹線も、特急も、一旦全線ストップ。


払戻しに行った駅では、駅前の建物の渡りの屋根が崩落していた…


前日、愛知の自宅に帰っていた旦那が、カッタのお世話をした後で、迎えに来てくれることになった。


しかも、当時の北陸は高速も止まってる所があって。


加賀インターから下道を走って、宿泊先まできてくれた。


わずか3日の間に、愛知ー北陸を2往復。


大変かたじけない…でも、運転は代われません。


ごめんなさい🙏


(被災云々の前に、ママの運転は単に危ない)


ーー私たちは、これで被災地を離れて、それで多分、今回は助かる。


ーー私たち、は。


どうすることもできない後味の悪さに後ろ髪を引かれて……かと言って、その時は何一つ…本当に何一つとして、出来ることはなく。


無事に、ちゃんと帰宅して、ちゃんと日々の生活を回して。


復興支援をすることぐらい、しか、無いって分かってる。


ーー分かっては……いる……。





そうして。


家族全員が無事だったものの、それから数ヶ月間、何となくみんな……おかしかった。


特にマリンは、いつにも増して、ストップしている時間が増えていて。


ママは、人生イチ、というか、生まれて初めて、こんなにもやる気の無い自分というものに、出会った。


ランドは、いつにも増してママにべったりになり、スカイは…受験が終わったのをいいことに、糸の切れた凧みたいになっていた。


多分それぞれが、口では無事を喜びながら、助かった実感が持てずにいた。





ーーそうは言っても、時間は待ってくれない。


中高大一斉進学の春はすぐそこで。


3人分の入学関係手続き、購入品の山、制服準備、◯◯金、△△金と、湯水のように消えていく学資金……次々と押し寄せる、書類の〆切……


今書いているこの書類は、誰の、何なのか!?


3月には卒業式が3つ🏫


しかも、なぜか3回とも、雨上がりのやたらに寒い日だったり。


それでも、ちゃんと(?)全部が涙の卒業式で。


お世話になった先生方にお礼をして、いっぱい写真撮って。


写真撮って。


写真撮って。


写真撮って。


写真……まだ、撮るの……?


長くない……?




そんな卒業式三連発の後は、当然、入学式三連発。


からの、入学後書類関係の嵐……っっっ!!!


スカイも。


どんなに遠くたって、容赦なく、書類は飛んでくる!!


リモート時代、恐るべし……!!


そんなわけで。


ママが通常モードに戻れたのは、5月も下旬に差し掛かった頃だったのは…


だから、まぁ、仕方ないと思うんだ。