「長いお別れ」中島京子(著)を読んで | ほっこり 知恵袋

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認知症の父と家族の10年に渡る、心温まる物語。
家族とは何だろう?お互いに持ちつ持たれつのバランス関係を保っている不思議。支えてつもりが支えられることもある。ふとした瞬間にホロッとくる。
本文では認知症を、少しづつ記憶が遠のく病気の表現として「長いお別れ」と言っている。なるほど、そういう言い方もあるものだと思った。
在宅介護の現実のドタバタと、時にきゅんとくる切なさをユーモラスに描いている。ほろ苦いコーヒーを飲んでいるような気分になる。
記憶と愛着、時間と共に失われていくその人の体験。
時代を行き来する中で、本人はどう感じているのだろう?
さ迷いながら何を求めているのだろう。
謎を残しながら、読者へ問いかけているようだ。小説のよいところは、読者の想像力を掻き立ててくれることだ。微妙なニュアンスと表現。
「さあ、あなたならどうする?」そう問いかけている。
読者によって感じ方がまちまちになることも、面白い。
楽しむための読書として、オススメしたい。