結弦くんの「初4Lo成功」についてですが、私も、その前にクラスノジョン君が成功していたと勘違いして、ちょっと残念に思っていた時期がありました。

その後、「認定」と「成功」は違うということを知り、目から鱗がポロポロ落ちているところですが、世の中には、いくら説明されても
「ジュニアの選手が認定されていたのに、羽生がISUによるエコヒイキでそれを奪った」
と騒いでいる妄想ドリーマー達がいることも知りました(笑)

まあ、私も「ジャンプにエラーがつかなければ認定である」と思っていた部分があったので、少し反省し、自分なりに勉強したことをまとめてみることにしました。




私も今まで、リッポンが何度4Lzにチャレンジしても、<や<<が付くのを見て
「ああ~、今回も認定されなかったなあ」
なんて思っていたのですが、つまり、その認識がそもそも間違いだったんですね。


プロトコルに4Lzと表記されていたら、そのジャンプは4Lzとして「認定」されているということなんですよ。

ただ、回転不足や転倒をしていて「成功していない」というだけのことなのです。

「認定」されているからそのジャンプの基礎点が入っているわけですよね。
で、成功していないから点数が引かれているわけです。

そして、プロトコルには回転不足やダウングレード以外のエラーの表記は無いので、その部分だけを見れば、お手つきをしていてもステップアウトをしていても分からないということなのです。

なので、プロトコルは「認定」に見えても、「成功」しなければ「初めてそのジャンプを跳んだ選手」として認めてもらえない、というのが正解だったのです。



理解してみれば簡単なことだったのに、クラスノジョンくんのプロトコルにエラーがついていなかったのを見て、単純に「成功したんだ」と思ってしまった自分の勉強不足が本当に情けないですね。





とはいえ、じゃあ、どんなジャンプを「成功」というのか。

今回の勘違いの原因は、その「成功ジャンプ」とはどういうジャンプを言うのかを、実は分かっていない人が案外多かったことに尽きるのだと思います。




ジャンプにおけるエラーの基準はこうです。
(コンボエラーにおける記述は省略)

◆SP: 1 つのジャンプのみからなるジャンプ・コンビネーションの最終のGOEは必ず -3
◆SP: ジャンプの前に要求されているステップ/動作が無い -3
◆SP: ステップ/動作から直ちにジャンプしない,ジャンプ前のステップ/動作が1つのみ -1 to -2
◆転倒 -3
◆1ジャンプの着氷が両足 -3
◆1ジャンプの着氷でのステップ・アウト -2 to -3
◆F/Lz での重度の踏み切りエッジ違反 (記号 “e”) -2 to -3
◆F/Lz での不明確な踏み切りエッジ (記号 “ ! ”) -1 to -2
◆F/Lz での不明確な踏み切りエッジ (記号無し) -1
◆ダウングレード判定 (Downgraded)(記号 << ) -2 to -3
◆回転不足判定 (Under-rotated)(記号 < ) -1 to -2
◆回転が足りない (記号無し)(ジャンプ・コンビネーションにおけるハーフ・ループの回転が足りない場合を含む)-1
◆スピード,高さ,距離,空中姿勢が拙劣 -1 to -2
◆ジャンプで両手がタッチ・ダウン -2
◆片手またはフリー・フットがタッチ・ダウン -1
◆拙い着氷 (悪い姿勢/間違ったエッジ/引っかき等)-1 to -2
◆拙劣な踏み切り-1 to -2
◆長い構え-1 to -2


この中で、明らかに「ジャンプの失敗」と見られるのはどれだろうかと考えた場合、まず「転倒」「回転不足」「ダウングレード」は完全アウトです。

回転が足りていなければ、そもそも跳んだと言えませんし、転倒は論外です。



それと、「両足着氷」「ステップアウト」「両手タッチダウン」も確実アウトだろうと思います。

「両足着氷」は、右足で着氷できなかった時点で転倒とほぼ同じ扱いのエラーです。
「ステップアウト」「両手タッチダウン」は、着氷した右足から重心を失っているということで、これも明らかなミスになります。

残るは「片手、フリーフットのタッチダウン」「稚拙な踏み切り」「スピード,高さ,距離,空中姿勢が拙劣」「拙い着氷」あたりがグレーゾーンに思われました。


が、今回の問題で分かったのは、このグレーゾーンも「成功したジャンプ」とは認められないということなのだと思います。



つまり、「成功」とは誰が見ても成功したジャンプ(右足で着氷し、フリーフットはきれいに流れ、入りも出も躓きやステップアウトがない)ことを言うわけです。



これらを踏まえて、成功認定を受けた演技をその年代順に見ていきたいと思います。



【4T】カート・ブラウニング/1988年世界選手権(ブタペスト)
※着氷の後オーバーターンしていますが、左足はついていないのでセーフです。
このビデオの冒頭に、それまでの失敗ジャンプが流れるのですが、こういうのはダメですよというのが分かってためになります(笑)
あ、ちなみにカートさんのこの時の成績は6位です苦笑



【4S】ティモシー・ゲーブル/1998年Jrグランプリファイナル
※フル演技の映像が見つけられなかったのですが、テレビの特集のようなのでこの映像でいいのだと思います。
因みに、この試合は優勝。ソルトレイクオリンピックの銅メダリストです。




【4Lz】ブランドン・ムロズ/2011年NHK杯
※ムロズくんは、公式記録としては12年のNHK杯で成功と残っていますが、実際にはそれより前の、コロラドスプリングスで行われた9月のローカル大会で成功しているのだそうです。
ただ、ローカル大会なので、後から映像を確認し、あくまで「認定」という範囲に留められ、その後のNHK杯での成功を受け、晴れて「4Lzを初めて成功した選手」として承認されたようです。
この時のNHK杯は9位。4Lzの成功者としてのみ名前が残っている感じです。




【4F】宇野昌磨/2016年チームチャレンジカップ
※昌磨くんの認定に1週間かかったのは何故だ?という疑問は、チームチャレンジカップはISU公認大会ではあっても、普通の試合ではなかったからだと考えれば納得できます。
あれは、スコアが公式記録に残らない変則的な大会だったので、成功を判断するにはISUに持ち帰る必要があったのかもしれません。





【4Lo】羽生結弦/2016年オータムクラシック
※誰も成功したことのないループジャンプをイーグルサンドつけて跳んだというのに、GOEの低いこと(笑)
確かに出来は良くないかもしれないけど、入りと出の難しさはもう考慮のうちに入らないのかしら泣き1


で、これがクラスノジョンくんの演技。


アレクセイ・クラスノジョン/2016年JGPスロベニア大会





こうやって見て行くと、オーバーターンまでは許されても、ステップアウトはダメのようです。

じゃあオーバーターンとステップアウトは何が違うのか、分かりにくいところもありますが、つまり、右足で着氷し、そのままターンに流れているのがオーバーターン、バランスを崩しフリーフットを氷につけてしまうのがステップアウト、…という感じでしょうか。

どちらも見た目には失敗に見えますが、バランスを崩しても左足をつくかつかないかは大きな違いのようです。

クラスノジョンくんは、左足をついてさらに片手もついたので、明らかにジャンプは失敗という判定なのでしょう。


じゃあ、何故すぐに「非認定」と公表しなかったのかというと、チャレンジするだけなら結構多くの選手がやっているので、失敗したものに個別の対応をする気はないということだと思います。

それをスケカナの直前に公式見解を出したのは、単純に、日本のメディアが「すでに認定されている」と誤解しているのが分かったからではないでしょうか。

ジュニアの大会と言えど、グランプリ大会は公式試合です。
そこで成功していたら、その場で認定されていたのでしょうから、ISUがすぐに公式見解を出さない時点で「成功とは言えない」と判定したと捉えていいということなのでしょう。



挑戦しているだけなら結構多くの選手がいます。

例え転倒しようが回転不足がつこうが、プロトコルに「4Lo」だの「4F」だのと記載されていれば、そのジャンプはそのジャンプとして認定されているということです。

ただ成功しなかっただけです。


そういう意味では、ケヴィン・レイノルズは4Loを跳び、プロトコルではそのジャンプは4Loと記載されています。

大ちゃんの4Fも同じです。
プロトコルには4Fとなっているはずです。

ただ、回転不足が付いているので成功はしていません。


そういったジャンプにいちいち「非認定」判断をするかというと、そんなことはしません。
クラスノジョン君の4Loも、見る人が見たら明らかに「失敗」だと判断がつくものだったのでしょう。

それを「成功!成功!」と騒いでいた人たちは(自分も含め)まだまだフィギュアを知らないということです。




というわけで、成功の明確なラインをまとめてみると

□右足で着氷し、フリーフットはついていない(ツーフットはアウト)
□バランスを崩さない(手が氷に触れたら当然アウト)
□転倒しない。
□回転は足りている。
□両腕はきちんと伸びている。

以上の、いわゆる普通のジャンプの成功ラインをクリアしなければ、「成功」とは呼べないのだと思います。


ここで、GOEはどうなるのだろうという疑問も湧いてきます。
全員がプラスのGOEをつけなければ成功とは呼べないんじゃないか?という疑問です。

これは、どうやらあまり関係ないようです。


ジャンプの減点ガイドラインには、長い助走なども入っていますが、例え助走が長くても、クリーンなジャンプを決めれば成功は成功です。

上記のエラーの基準に照らすと、GOEで-1~-2点されるみたいですが(笑)

結弦くんのように難しいターンやステップを入れて跳ばなくても、ただ「初」の称号が欲しいだけなら、長い助走の後に跳べば確率は上がったはずです。

もちろん、ショートでそれをやればGOEはー3ですが、認定の確率は上がりますから、ただ称号が欲しいだけならそれも可だったと思います。

でも、明らかにマイナスと分かっていてプログラムに入れるなんて、それは結弦くんにはできなかったんですよね?



まあ、とりあえず、これでクアドラプルジャンプも出揃いました。

残るはクアドアクセルのみ、です。

これは平昌の後に、引退してからジャパンオープンあたりで成功させてもいいじゃないかと思っているのですが、レベルアンポンタンの思考回路はどう判断するか、恐ろしいところでもありますね(笑)

あれ?引退した選手がオープン戦で初を跳んだらダメなのかな?
現役選手じゃないとダメとかってルール?

うう~ん、わからないことがいっぱいだわ~号泣