第二十五話 | ジュセー 徒然。

ジュセー 徒然。

てきとーに。
創作とかやってます。

暗い部屋に、男が二人。一人は赤っぽい茶髪の青年。椅子に座り、組んだ足を机の上に投げ出している。もう一人は、彼より年下の黒髪の少年。ベッドに腰掛け、俯いている。二人とも無言。かれこれ数十分はこうしていた。

「あー……なんだ、その。電気点けていいか?あと窓。窓開けていいか」

赤っぽい茶髪の青年、木崎 達也が口を開く。黒髪の少年、灰崎 黒星は無言で彼に目を向け、再び視線を下に落とした。木崎は肩を竦め、電気のスイッチを押す。部屋に明かりが灯る。続いてカーテンを開け、窓を開けた。そこそこに新鮮な空気が入り込んでくる。木崎は椅子に戻り、座り直し。言葉を紡ぎだす。

「……ま、なんだ?改めて自己紹介ってとこ……俺は木崎。木崎 達也。異能力者だ。『ゲーム』には肯定的。異能力は……そうさな。今は隠しておくぜ。まだまだ、何が起こるかわからんからね……一つぐらいは教えてやってもいいが?」

黒星が顔を上げた。表情らしい表情のない顔を。そして何を考えているのかわからない瞳を。木崎に向ける。口を開く。

「一つ?」

「ああ、一つだけならな」

「だけ?」

「……あん?」

木崎が目を細めた。
どこかで話が食い違っている?

「クロボシ。お前、まさかとは思うが。異能力……異能力、お前、複数持てるってこと知らねぇの?」

「知らん」

即答である。思わず吹き出してしまった木崎を、黒星はただジッと見つめている。木崎はニヤつきながら説明を続けた。

「異能力ってのはな、こう……異能力者を殺せばそいつの異能力が手に入るのさ……ただしランクは一番下になっちまってるが。ランクは知」

「知らん」

「……異能力にはそれぞれランクってもんがある。AからDまでだったか。で、異能力を使って異能力者を殺せばランクがどんどん上がっていく」

「そうか。異能力者は殺したことがない。対決したこともない」

黒星は淡々と言う。木崎は片眉を吊り上げた。

「なに?お前……マジか。4、5人は殺ってそうな雰囲気してるってのによ」

「マルジャークのトモダチなら10人ほどは殺している。はずだ」

「ハァン……なるほどね」

椅子から立ち上がる木崎。彼は黒星の隣に腰掛けた。

「まぁ、いいさ。これから殺していけばいい。好きなだけ……好きなだけ。俺は退屈屋なのさ。だから、極限の暇潰しを愉しむ。お前も精々愉しめよ」

口元に弧を浮かべながら、木崎は黒星に言の葉を投げかける。刹那的な享楽への誘いだ。黒星が木崎の方へと顔を向けた。

「ああ……ああ、ああ。そう、させてもらう。殺す……壊す。虚無は、嫌いだ。嫌いだからな」

「ああそうさ。誰だって虚無は嫌いさ。さあ、解放しようぜ、好きなだけさ。解放連盟の盟主様よ……お?もうこんな時間かよ」

木崎は時計を見ると、立ち上がり。玄関へと向かっていく。背を向けたまま手を振りながら。

「じゃあな。バイトに遅れちまう……金は欲しいからさ。また会おうぜ」

気怠げな声を出しながら、彼は扉に手をかけた。その背に向かって黒星が言葉を放つ。

「金が欲しいのか。奪えばいいだろ。胃能力を使って」

「……異能力者ん中にはさ、正義漢ぶった面倒な奴もいるのよ。そういう奴とぶつかるのは、心底面倒だ」

「殺せば同じだ」

木崎は振り返る。髪色と同じ、異様なまでに黒一色の瞳が彼を見据える。幾分か、感情が滾っているように木崎には思えた。彼は鼻で笑い。扉を開け、去っていったのだった。

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部屋には黒星一人。白星が居なくなって久しい。電気は点いている。窓も開いている。黒星はベッドの上に寝転がり、天井を見上げていた。右手を天井に向け、掌を開く。握り締める。

「……あいつ。中々、面白いじゃないか。キサキ。いい退屈凌ぎ……」

彼は自分が笑みを浮かべていることに気づいた。血の匂いがこびりついた笑みではない。新鮮な感覚だった。