株式を公開(上場)している会社の株価が、証券取引所での取引状況によって決まるというのはご存知の通りですが、では非上場で取引市場がない中小企業の株価はどうするのかというと、相続税法上における「取引相場のない株式」として一定のルールに基づいて株価を算出することになっています。そのうちで、同族株主が株式を取得する場合は、原則的評価方式を使って評価します。たとえば、オーナー社長が、後継者の息子に自社株を売るような場合です。
原則的評価方式というのは、会社の規模に応じて「類似業種比準方式」「純資産価額方式」「両者の併用方式」のいずれかで評価していく方式です。三方式のどの方式で評価するかは財産評価基本通達で決まっていて、大会社は「類似業種比準方式」、小会社は「純資産価額方式」、中会社は「両者の併用方式」で評価することになっています。
小さい会社ほど純資産価額方式で評価する比率が高くなるので、純資産(剰余金など)が大きければ、株価は高くなります。何だか難しげな感じになってきましたが、要は、小規模でも業績が良い会社は、自社株が高く評価されやすいということなのです。
業績が良い、純資産が厚いということは、うまくいっている会社ということですから、大変好ましいことなんですが、自社株の価値が高くなって、後継者にかかる相続税の負担を大きくしてしまう負の一面も持っているんですね。
ちなみに、オーナー社長が社員に自社株を売るような場合には、特例的な評価方式と言って、配当金から割戻して計算した配当還元価格で評価します。配当還元価額は、10年分の配当金額の価値を表しているとも言えるので、通常は非常に低い金額になります。
中小企業の自社株はオープンな市場で売買することができないので、換金性に乏しい資産ではありますが、議決権と結びついていますから、後継者と仲の良くない兄弟姉妹や第三者が保有すれば、後継者が安定して経営していく環境からは遠ざかってしまいます。自社株は、散逸させることなく承継する必要があります。
さて、そんな場合の解決策の一つが金庫株なのですが、これにも資金が必要です。続きは次回(社長の引退と事業承継について③)に…。