Now this is not the end. It is not even the beginning of the end. But it is, perhaps, the end of the beginning. (by Sir Winston Lenard-Spenser Churchill)
(今は終わりではない。これは終わりの始まりですらない。しかしあるいは、始まりの終わりかもしれない)。

今日でサウジアラビアに赴任してから100日が経過した。サウジ入りした時から最初の100日間を「ハネムーン」と位置づけて、この期間中はとにかく失敗を恐れずに色々なことに挑戦をしてみようと考えて行動してきた。結果的にこの取組は少なくとも失敗していないという程度の成果を上げることができた。

この3ヶ月間本当に色々なことを経験できたと思う。自分の振り返りも兼ねてどんな仕事をしたかを列挙してみた。

・各種人事制度の整備・運用(出張、経費精算など)
・就労Visa取得関係手続(サウジ側での準備書類に関する手続全般)
・Exit Re-entry Visa取得関係手続
・Visiting Visa Extension関係手続
・Iqama(居住許可証)取得関係手続
・タクシー、巡回バス、運転手関係手配
・引越実務(引越業者手配、社内調整など)
・エンジニアリング協会登録手続
・赴任者名簿の整備(パスポート、ビザなどの情報一元化)
・新規赴任者・出張者の対応
・諸会合のアレンジ
・運転免許取得関係手続
・健康診断関係
・各種トラブル・シューティング

主業務はVisaとIqama取得関係の業務なのだが、この実務の「型」を作るまでに何度も何度もアラブ人担当者の元を訪れては門前払いにあったり、申請書類を却下されたり、怒られたりしてきた。それでも何度も何度も足を運んで、コミュニケーションを取って、本当に少しずつだけど信頼関係を構築してきた。最近では会社の中やコミュニティの中ですれ違えば向こうから挨拶してくれるくらいにまでなった。まだまだ全幅の信頼を置いてもらえるまでには至っていないけど、少しずつ良い方向には向いていると思う。

この小さな努力が大きな成果につながったこともあった。ある大きなトラブルが起きた際に、これまでに築いてきた自分のチャネルが実に大きな役割を果たした。通常であれば1週間かかる手続を、たったの1日で完結するように協力していただくこともできた。

まだ海外勤務を始めてたったの100日しか経っていないから、「海外勤務に成功する秘訣」のようなものを語ることはできない。きっとあと数年仕事をしたとしても、そんなものを語ることはできないと思う。それでも、たったの100日で「海外勤務に成功しない秘訣」については語れるようになった。そしてこの「秘訣」はこれから数年仕事をした後も決して変わることはないと思う。

「海外勤務に成功しない秘訣」はただ一つ、「挑戦しないこと」だと思う。一般的な日本人にとって海外勤務というのは「できないこと」のかたまりだと思う。英語ができない、現地人とコミュニケーションが上手く取れない、食事が口に合わない、満足の行く住居に住めないなど、住居のメンテナンスがなってない、タクシーが来ない、不満を言い出したらキリがない。人事の仕事をしているとよくわかるが、とにかくうんざりするくらいの不満が寄せられる。そのほとんどが、「挑戦する」ことさえすれば解決できる物事ばかりだ。

何かを「やらない」ことと、「できない」ことは本質的に異なる。挑戦もせずに「できない」と言うのは言葉の使い方が間違っている。それは「できない」とは言わない、「やらない」だけだ。挑戦をして失敗することだってたくさんあるけど、その失敗から学べることもたくさんある。挑戦しなければ失敗をすることもできない。

業務をしてゆく上で「失敗をすること」はやはり恐ろしい。それでも「何もしないこと」、「挑戦をしないこと」よりは恐ろしくない。自分が「ハネムーン」と位置づけた100日間で学べたことは、とにかく「挑戦を怠らないこと」である。このたった一つのことを学べただけでも、この100日間には意味があったと思う。

「ありがとうございます。助かります。アドミがしっかりしていると大変助けられます」

先日、プロジェクト内の若手マネジャーの方からこんなメールをいただいた。大手プラント・エンジニアリング会社から転職してこられて海外プロジェクト経験の豊富な方からの評価だけに本当に嬉しかった。色々と考えて、動いて、挑戦しているからこそこういう評価をいただけたのだと思う。

今日で「ハネムーン期間」は、「始まりの始まり」は終わった。折しも昨日までで海外に散っていたプロジェクト・メンバーの9割以上がサウジアラビアに集結した。人が増え、プロジェクトが本格化すれば当然人事の仕事は大変になるし、人と人とのぶつかり合いも増えてゆくだろう。これまで以上に難しい課題にも直面しそうだけど、この100日間で学んだ「挑戦することを怠らない姿勢」を持ち続けよう。

If there's a will, there's a way. (意志あるところに道は開ける)。