12月28日に2016年度のサウジアラビアの予算が発表されたので概要を見ておくこととしたい。なお、邦貨換算にあたっては直近レートに基づき1SAR=32JPYで換算することとする。(2015年度予算策定時のレートも1SAR=32JPYであったため、同じレートを使うこととする)。

1-1 2015年度実予算(歳入)

2015年度の実歳入は6,080億SAR(19兆4,560億円)であり、当初予算の7,150億SAR(22兆8,800億円)から1,070億SAR(3兆4,240億円)、約15%の減少となった。なお、実歳入全体に占める原油収入は444.5SAR(14兆2,240億円)であり、73%の依存率となっている。当初予算と比較して歳入が15%の減少となったのは原油価格下落を受けたものと考えるのが自然であろう。

1-2 2015年度実予算(歳出見通し)

2015年度の歳出見通しは9,750億SAR(31兆2,000億円)であり、当初予算の8,600億SAR(27兆5,200億円)から1,150億SAR(3兆6,800億円)、13%の増加となった。上述の歳入から歳出を差し引くと、3,670億SAR(11兆7,440億円)の財政赤字となっている。当初予算上の赤字額は1,450億SAR(4兆6,400億円)であったので、赤字額が当初予算の2.5倍に膨らんでいる。

当初予算と比較して歳出が増加した背景には、当初予算では想定していなかった公務員や軍人に対する給与引き上げ(この政策はサルマン国王即位にともなって実施された)、対「イスラム国」およびイエメン空爆の戦費の増加が主要因と言えるだろう。また、近年開発が進められているメッカとメディナという二大聖地の整備費用が増加したことも歳出増加の要因である。

2-1 2016年度予算(歳入)

2016年度の歳入予想は5,138億SAR(16兆4,416億円)の見通しであり、2015年度の実歳入から942億SAR(3兆144億円)の歳入減となる。2015年度実歳入よりもさらに歳入が減少する見込みとなるのは、言うまでもなく原油価格に歯止めがかからないことに起因していると考えるのが自然であろう。

2-2 2016年度予算(歳出)

2016年度の歳出は8,400億SAR(26兆8,800億円)であり、2015年度の歳出見通しよりも200億SAR(6,400億円)の歳出削減が見込まれている。財政赤字は3,262億SAR(10兆4,384億円)となっており、2015年度の実財政赤字からは縮小する形となる。とはいえ、2015年度当初予算からは財政赤字が2.2倍まで膨らむ形となる。

予算内訳としては、第一に、教育関連予算として1,917億SAR(6兆1,344億円)が計上されており、予算全体の23%を占めている。2015年度当初予算においては2,170億SAR(6兆9,440億円)が計上されており、予算全体の4分の1を占めていたが、今回1割強を削減された形となっている。

第二に、厚生・社会開発予算として1,049億SAR(3兆3,568億円)が計上されており、予算全体の12.5%を占めている。2015年度当初予算においては1,600億SAR(5兆1,200億円)が計上されており、今回は3割以上も削減された形となっている。

第三に、軍事予算として2,134億SAR(6兆8,288億円)が計上されており、予算全体の25%を占めている。2015年度当初予算においては軍事予算について明記はされていないものの、明記されている予算から差し引くと最大で2,460億SAR(7兆8,720億円)が計上されていると推定され、予算全体の3割近くを占めていた可能性がある。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の統計によると2014年度のサウジアラビアの軍事費は808億ドル(9兆7,177億円)とされるから、軍事予算は表向きは大幅に削減されている形になる。もっとも、今後のイスラム軍事連合による対「イスラム国」作戦とイエメン戦争のの戦況によっては、戦費が拡大すると考えた方がよいだろう。