先日のこと。帰宅するとポストに「入居者様」という茶封筒が差し込まれていた。中を開けてみると、地方裁判所の執行官名で「照会及び通知書」とあり、次のようなことが書かれていた。

「あなたが使用されているこの建物は、◯◯地方裁判所××支部に競売が申し立てられており(事件番号令和2年(ケ)第×××××号)、当職が裁判所の命令に基づき、調査を担当しております。この調査のため、あなたの使用されているこの部屋の間取りの確認と写真撮影等が必要となります。

つきましては◯月×日(水)午前10時00分から午後0時00分ごろの間に再度お伺い致しますのでご在宅をお願いします。その際に、賃貸契約書と直近3ヶ月の賃料の支払実績が分かる資料を見せていただきますようお願いいたします。また、ご都合が悪い場合は、速やかに当職までご連絡をお願いいたします。

ご負担をおかけ致しますが、何らご連絡がない場合は、民事執行法に基づき、ご不在でも解錠して立ち入って調査せざるを得ませんので、必ずご連絡をお願い致します。この調査についてご不明な点がありましたら、遠慮なくお問い合わせください。」

添付された物件目録にも目を通したが、まず思ったのが「この文書、何だか怪しいなぁ」ということだった。怪しいと思った理由は以下の通り。

①裁判所が発行している文書なのに公印の類が押されていない。
②書留ではなくてポストに差し込みというのが不自然。
③物件目録に書かれた住所が間違っているのみならず、その住所が存在しない。
④返信用封筒の字がものすごく下手。

以前、裁判所の文書を装った詐欺があるという記事を読んだことがあったので、その手のものかもしれないと思い、翌日裁判所に問い合わせをしてみることにした。通知書に書かれた電話番号にそのままかけるというのはリスクが高いと判断し、裁判所のホームページで電話番号を調べてかけることにした。ちなみに通知書に書かれた電話番号とホームページで公開されている電話番号は一致していた。その時の電話のやりとりは以下のような感じ。

私:昨日、住んでいるアパートのポストに競売に関する照会及び通知書が投函されていたのですが、その件について執行官の△△様をお願いします。

(執行官登場)

執行官:◯◯(アパートのある町名)の物件ですね?
私:昨日ポストに投函されていたのですが、通常裁判所の通知というのは書留などで来るものと思っていまして…。あと、物件目録の住所の地番が間違ってますが、こちらは確かに私の住んでいるアパートなのでしょうか?
執行官:昨日お伺いをさせていただきまして、ご不在でしたのでポストに投函させていただきました。住所については、普段使う住所と登記上の住所が異なるということがありまして…。

(ここまで聞いて、裁判所から正式に発行されたものと理解した)

執行官:お住まいのアパートの所有者の××さんという方が、銀行からお金を借りていたのですが、そちらの支払いができなくなったようで、銀行側から競売の申し立てがありました。

(その後、現地調査と競売成立後に考えられる動きについて説明を受ける)。

執行官との電話の後、アパートの管理会社にも確認した方が良いと思い電話した。通知書の内容と執行官との電話のやりとりについて説明したところ、この時点では管理会社の方に裁判所からの連絡は来ていなかったものの、所有者が債務問題を抱えていたため、こうなるのは時間の問題だと認識していたとのこと。管理会社を責めても仕方がないので(そもそも債務不履行になったオーナーの問題)、1週間後に訪れる執行官の対応をすることにした。

そして通知書を受け取ってから1週間後、裁判所から執行官と補助、不動産鑑定士がやってきた。10分ほどかけて部屋の写真撮影と間取りのを見て回り、契約書と家賃の支払状況を確認されて終了。その後、今後の流れについて執行官から説明を受けて終了した。

執行官は淡々と調査を行っているだけで、特に高圧的な態度ということでもなかった。わざわざ有休を取得して対応しなければならなかったのが癪に触るが、執行官と管理会社を責める気はさらさらない。諸悪の根源は債務不履行に陥ったオーナー。借りた金はちゃんと返すといことをしないと、色々な人に迷惑をかけることになるなと再認識した。