大分一家6人殺傷事件加害者 | 少年犯罪事件史

少年犯罪事件史

2013年11月からスタートしました。少しずつ記事を書いていきます。

少年A 15歳

おとなしいところはあるものの
表面上、不安定な部分を見せることなく
坦々と日常を過ごしていたため、
彼の心の中が表にあらわれることはなかった。


少年が心の中をあらわさなかったのは
意識して、それを隠していたからである。


厳しい両親に、自分の心を出すことはできない。

そうして、すべての感情を内側に隠す習慣がついてしまっていた。


今回の事件も、自分の秘密にしていたことが
ばれることへの恐れから犯行に及んでいた。



家族構成は、父・母・兄・少年A。
少年の両親は共働きだった。
兄もおり、集落の独特の団結力もあったとはいえ
一人で過ごすことが多い幼少期であった。

両親の夫婦仲は良くなく、少年が3~4歳の頃に別居している。
父親の暴力が原因だとも言われているが、

かといって母親が常識的だというわけでもなく
勤務先で別の男性と付き合ったことが別居の要因でもあった。


小さい集落のため、これらの出来事は
近所の人も知っていた上で付き合っていた。

別居当時、父親が勤務先に少年Aを同行させて
面倒を見ていたこともあった。


どちらにしても、両親の不仲が
当たり前の環境の中で育っている。

また、父親からの暴力は、母親だけでなく
子供達にも及んでいた。


この頃すでに、近所の住民が少年の動物虐待を目撃している。

このことから、すでに少年の心の中に闇があることが分かる。


気が短く、先の行動が読めない両親に
自分の感情をだせることもなく

少年は、だんだんと無感情・無表情になっていく。
(この状態を他人が見たら「おとなしい子」というとらえ方になるのだろう)

自分の感情は、誰も見ていないところで出すか
もしくは秘密にするしかないという思考回路を持つようになっていった。



小学校5年生になり、少年は新聞配達のアルバイトを始める。


昭和の時代ではないのだから
これも一般的に考えれば
普通とはかけ離れた家庭といえる。

なぜアルバイトをしなければいけない状況だったのか、
その辺りは資料がなく不明だが

金銭的な問題か
もしくは両親からの強制ではないかと推測できる。


小学生の子が、みずから

「僕はアルバイトをします」

という時代ではない。仮にそうだとしても
それは本心を隠した上で演じているのだろう。


演じることはなれている少年であるから
周りの人は、これが彼の本心と信じて
疑うこともしない。

だから「真面目ないい子」という代名詞を
少年は持ち続けられていた。


中学生になりバスケ部に入部する。
ここでは被害者のIさんの長男とは、
先輩と後輩の間柄で親しくしていた。

また、Iさんの小学生の次男ともよく遊んでいた。
自分より年下の子と遊ぶことが苦ではないらしく
犯行時の夏休みには、小学生のラジオ体操にも
参加していた。

このあたりに、精神面が成長できていない部分が顕著にあらわれている。
同年代の子と遊ぶことに抵抗があり、年下のこと遊ぶことでしか
コミュニケーションがとれないことが分かる。


興味があることが全くないわけでもなく
ホラービデオの鑑賞が、唯一の趣味だった。
新聞配達でのアルバイト代は、レンタルビデオ代に使っていたようである。

そこには、自宅から自転車で1時間かけてでも借りに行って
ホラービデオをどうしても見たいと言う、強い執着が感じられる。


また、親がレンタル料金を払ってくれないと言う背景も存在する。
だからなおさら隠して行動し、さらに執着を深めて行ったようにすら感じる。


そんな少年にも、それ以外に興味が持てるものができた。
学校で習ったコンピュータグラフィックに
興味を持ち、それが学べる専門課程のある高校へと進学を希望する。

しかし、それはかなわなかった。
少年の要望は両親に却下され、
親の望む普通高校への進学となった。
ここでも、自分の意思を押し通すことができなかった。



一方で、この時期に「強さ」への憧れには強いものがあった。
不良っぽい人と一緒にいることで
自分が強くなれたような錯覚を持ち
満足していたようであった。

とはいえ、同年代とのコミュニケーションが苦手な少年は
パシリ的存在になっていく。

髪の毛を染めたり、ピアスをしたりと
見た目は派手であっても、
内面は以前と変わらないままであった。


唯一、少年が表面にあらわした
自己表現でさえも、両親は注意し
やめさせる(そりゃそうだが)。

逆らうことの出来ない少年は
それに従うことしかできず、
もとのおとなしい少年に戻っていった。

そのような時に、一緒にいた
不良仲間との間で殴られる出来事があった。

遊びから発展したものらしいが、
少年にとっては不快きわまりないいじめ。

ここで、学校と双方の親が介入したことで
友人間の少年の立場はますます悪くなっていった。


思春期における葛藤は誰でもあるものだが
この少年は、発散できる方法を知らない。

どんどん心にためていくだけしか出来ない。


無意識にゆがんだ形で、どこかで発散せざるを得ない。

同時期、少年が子猫を虐待しているのを
見ている地域の人がいる。


このあたりから、隠し通すことのできないほど
心の闇が大きくなってきていたのだろう。


少年は、小動物を虐待したり
盗みを犯すことでしか、精神のバランスを
保つことが出来ない状態になっていった。


しかし、徐々に彼の性癖はうわさになってしまっていた。
自分の秘密にしていたことが
周りにバレはじめてしまったのである。

これは、彼にとってはあってはならないことであって
防がなければいけないこと。


そのために、見つかってしまった
Iさん一家を殺すことしかない、という
おかしな方向に考えがいってしまった。


もし、誰かが彼の心の闇に気づいてあげていたら
隠し事をしなくても良い家庭環境であったとしたら



罪のない、関係のない家族は
殺されることはなかったかもしれない。



大分一家6人殺傷事件