「アサッテ君」の連載終了に思うこと | 高木圭介のマニア道

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~浮世のひまつぶし~

 昭和49年6月以来、毎日新聞の朝刊に40年以上にもわたって連載され続けた4コマ漫画「アサッテ君」(東海林さだお作)が今年大晦日の掲載をもって終了することが発表された。

 サラリーマン(アサッテ君はヒラ社員)の悲哀やら家庭内で立場のないお父さんを描いた悲喜劇的漫画。サラリーマン物とはいっても社内における仕事その物のアレコレはほとんど描かれていなかったりする。特に面白いと感じたこともなく、特別に好きだったというワケでもないが、「アサッテ君」の前に掲載されていた4コマが横山隆一作の「フクちゃん」(昭和31~46年=戦前は朝日新聞に掲載されていた)だったことを考えると、やっぱりその歴史的な重みには敬意を払わざるを得ない。


 子供の頃、父親の本棚に並んでいた同じく東海林さだお作の「ショージ君」やら「タンマ君」を漫画であるというだけで手にとって読んで見ても、その面白さは理解できなかった。新聞に掲載されている政治風刺の一コマ漫画などを見ても、サッパリその面白さは分からない…。「これの何が面白いの?」という質問に母親は「アンタも大人になって、世の中の仕組みや政治のことが分かるようになったら、この面白さが分かるのよ」なんて答えていたモノだが、45歳となった現在も笑えた経験はない。「上手いこと表現するな」と感じることはあるが…。きっとそういうものなのだろう。


 少年時代は新聞に掲載される漫画というモノは古くて笑えず、漫画界の中では大御所的なポジションの漫画家が描き、ある種の権威に位置されるモノという認識が強かった。だが現在の新聞漫画界は、いしいひさいち(「ののちゃん」=朝日朝刊)、しりあがり寿(「地球防衛家のヒトビト」=朝日夕刊)、山科けいすけ(「らいふいずびうちふる」=朝日土曜版)、植田まさし(「コボちゃん」=読売朝刊)、唐沢なをき(「オフィスケン太」=読売夕刊)、霜田あゆ美(「水よう日の花子さん」=読売夕刊水曜日)、西原理恵子(「毎日かあさん」=毎日朝刊・月曜日)、森下裕美(「ウチの場合は」=毎日夕刊)、森栗丸(「おーい栗之助」=東京朝刊)、新田朋子(「ウチのげんき予報」=東京夕刊)と、かつてニューウェーブと呼ばれていた漫画家やイラストレーターの手にバトンタッチされ、気がつけば、すっかりと代替わりが済んでいるし、彼ら彼女らの漫画を愛読していた私のような中年男は、すっかりそれらの新聞漫画を楽しみにしつつ愛読、ついでにせっせとスクラップしているのが現状だ。


 そうなると「アサッテ君」こそはオールドウェーブの最後の砦として、古き良き4コマ漫画の伝統を受け継ぎ守り抜いていたことになる。それらオールドウェーブの新聞4コマの歴史を担ってきた漫画家の皆さん、長谷川町子(「サザエさん」=朝日朝刊)、園山俊二(「ペエスケ」=朝日夕刊)、鈴木義司(「サンワリ君」=読売夕刊)、加藤芳郎(「まっぴら君」=毎日夕刊)、馬場のぼる(「バクさん」=日経夕刊)、はらたいら(「ゲンペーくん」=日経夕刊)、福地泡介(「ドーモ君」=日経夕刊)などなど、皆さんすでに鬼籍に入られて久しい。


 それほど好きでもなかった「アサッテ君」だが、連載終了が決まると何だかとても寂しい…と同時に、毎日新聞が新春からの4コマ漫画に一体、誰のどんな漫画を起用するのか?が、とても楽しみなのである。私的には年末最大の焦点だ。