単行本「闘魂三銃士30年」発売~破壊王の殺害予告? | 高木圭介のマニア道

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~浮世のひまつぶし~

 本日(12月17日)、ベースボール・マガジン社より単行本「闘魂三銃士30年 今だから明かす武藤敬司、蝶野正洋、橋本真也、それぞれの生きざま」(税抜き1900円)が発売される。私も橋本真也パート担当の構成として執筆しております(武藤敬司パートは元週刊プロレス記者の鈴木健.txtさん、蝶野正洋パートは週刊プロレスの佐藤正行編集長が担当しています)ので、興味のある方はぜひ手に取ってお読みいただけたら幸いです。


 闘魂三銃士が結成からもう30年…とは言っても、三銃士は正式ユニットではなかったし、3人が結束して活動という歴史はそれほどない。あくまで「人呼んで闘魂三銃士」という存在だ。後になって歴史を振り返りつつ、この3人を知った若いファンにはユニットやトリオとして誤解されがちなのはジャニーズアイドルの「たのきんトリオ」と一緒。後のシブがき隊や少年隊とは違い、たのきんトリオの3人(田原俊彦、近藤真彦、野村義男)は「3年B組金八先生」や「ただいま放課後」などドラマで共演することはあっても、ユニットとして大々的にレコード発売するような活動がなかったのと同じ感じだ。


 私は、橋本真也夫人のかずみさんにインタビューさせていただいた。本来ならば故人を偲ぶノンフィクションとして「いい話」にまとめたいトコロなのだが、これがどうしても、どの話題に関してもオチが橋本さんの女性問題に転がってしまうという不思議…。かずみさんも「何かもっといい話はないのかな…。あの人(橋本真也)はまったく!」と首をかしげるばかり。死してもうすぐ10年、改めて破壊王の破天荒ぶりに驚かされる結果となった。


 東京スポーツのプロレス担当時代、橋本さんとの思い出は尽きない…というか、そばにいると必ず何か面白おかしい出来事があるのだから、取材対象としては迷惑なほど面白い人ではあった。ただし「デブ」とか「音痴」と書かれると烈火の如く怒ってはいたが…。いつだったか?高級ホテルのレストランで食事をした際に、地下駐車場の白い柱の横に白いベンツを停めてからレストランへと向かったのだが、食事を終え満腹になって駐車場に戻ってくると、柱があるためにベンツのドアがフルには開かず、そのため満腹で膨らんだお腹が邪魔となって運転席へと乗り込めず、替わって破壊王に比べればはるかにスリムな私がスルリと運転席へと乗り込み、車庫からベンツを出したなんてことも。お腹が膨らみ車に乗れなくなる人間が、漫画ではなく現実の世界に存在することに驚かされたものだ。2005年に橋本さんが急死した時も、葬儀場にて遺体のお腹が膨張し過ぎたため、棺桶のフタを閉じることが出来なくなってしまい、代わりに母校柔道部の旗をかけてその場をしのいだもの。その光景を目にした瞬間、悲しいはずなのに、あまりの「らしさ」に不覚にも笑ってしまったほどだ。


 あれは1995年末のことだったか。東京スポーツの年末特大号の企画とて「プロレスラー、なんでもトップ3」みたいな企画を上司から命じられ、新日本プロレスや全日本プロレス、FMWをはじめとする各インディー団体の巡業先、道場へと出向いて、色んな調査活動に励んでいた。各トップ3の項目には東スポらしく「巨根トップ3」とか「変態トップ3」みたいな項目もある。新日本プロレスの道場にて、そんな調査に励む私を見て、黙っていられる破壊王ではない。さすがに「オレを巨根のトップにしろ!」みたいなことは言わないにせよ、「おい、だったら巨根だけじゃなく粗チンのトップ3もやれよ」と企画自体にグイグイと参入しようとしてくる。私はYESともNOとも言っていないはずだが、破壊王はタバコをふかしながら周囲のレスラーに同意を求めつつ、企画どころか記事の内容まで勝手に構想し始めている。


 さらに破壊王は「おい、粗チンのトップ3にはな、必ず長州●と後●達俊さんを入れろ。絶対だぞ。もし入っていなかったら、お前を取材拒否…いや殺すからな」と一片の迷いもない表情で言い放つ。プロレスラーの世界で「殺す」とか「死ね」って言葉は、一般社会における「今日はいい天気ですね」「そろそろ寒くなってきましたね」程度の日常会話にせよ、こんなことで命を奪われてはたまったものではない。古今東西、ジャーナリストとしての正義を貫くがために尊き命を奪われた方はたくさん存在する。ところが私ときたら「長●力と後藤●俊は粗チン」と記事にしなかったという理由で、破壊王に命を奪われようとしている。有史以来、これほどマヌケな死に方もないだろう…。


 この手の下半身考察モノは、実際に見て触って取材するワケもないので、あくまで第三者による伝聞が頼り。結局、巨根トップ3に選ばれたのは本田多聞(全日本)、西村修(新日本)、冬木弘道(WAR)あたりだったと記憶している。巨根トップ3に選ばれて怒るレスラー…というより男性は少ないだろうが、勝手に粗チン認定されたレスラーからは文句を言われるに決まっている。ってなワケで破壊王の意見は命を賭けて完全無視したのだった。


 で、数日後、記事となって東スポに掲載された「プロレスラー、なんでもトップ3」を見た破壊王は、自分が言い放った殺害予告の件はすっかり忘れており「おい。何でオレが巨根トップ3に入ってないんや?」と、またまた新たな視点で文句を言ってくるのだった。


 橋本真也は本当にハタ迷惑で楽しい人だった。かずみ夫人も指摘していたが、経済的にも倫理的にも9年前より確実に窮屈化している現代ニッポンに生きていたとしたら、さぞかし色んな問題を巻き起こしていたことだろう。