UN GRAIN
今回、6/17(日)のメニューはこちら
焼菓子
「一粒の種から大切に育てられた素材を使って、作り手の想いとともに丁寧に仕上げる一粒のお菓子が、やがて新たな気持ちの種として生まれかわる。お客様それぞれの楽しく幸せなひとときを提案しながら、その一粒の種をゆっくりと大切に育てて行きたい」との想いから付けられたUN (=一粒の)GRAIN(=種)
ここは、ヨックモックさんが展開する南青山6丁目の、主に、フランス料理のコースの締めくくりとして提供されるプティデセールを指すミニャルディーズ専門店
左奥のショーケースに並ぶミニャルディーズ
ショーケース手前、3席のイートインスペースがシェフズカウンターの舞台です
今回のシェフズカウンターは昆布智成シェフ
ご先祖様が福井で昆布を扱う北前船に乗っていたから昆布さん
ご実家は、その福井で江戸時代から220年続く老舗の和菓子屋さん“昆布屋孫兵衛”だそうですが、ご本人は、敷かれたレールの上を走るのは嫌と、オーボンヴュータン、エルメで修行後渡仏、ロブションや南仏エクサン・プロヴァンスのパティスリー、MOFフィリップ スゴン氏の“リエデレ”などを経験された若手のホープです
月1回 日〜火曜日 各3名×3回のシェフズカウンター:¥4,500(ドリンク付き・税込)
テーマは“QURIOSITE”(Curiosité) 好奇心
以前の素材を並べたメニューに比べて“好奇心”を駆り立てる、そして、昆布シェフの食材や技術に対する好奇心を基に普段使わないような食材を使った挑戦的で実験的なメニュー
まずは、
ウェルカムドリンク
“青汁です、嘘でーす”
…あの昆布さんが、いきなり冗談かますとは
リンゴジュース/ミント/ライム/きゅうり/エルダーフラワー
初夏をイメージした緑のドリンク
きゅうりと、ミントと言っても厳密にはミントとは違う本場キューバのモヒートに使われヘミングウェイが愛したことでも知られるイエルバ・ブエナは、「 ベジタブル コミュニケーション」をコンセプトに、高知市春野町でハーブや野菜を育てる長崎雅代さんのファームベジコさんから届いたもの
パティシエらしい面白いドリンクをと昆布シェフ
5つの食材が見事に化学反応を起こした爽やかな完成品
Qu' une belle relation 美味しい関係
バジル/トマト/マンゴー/昆布/オリーブオイル/ドライフランボワーズ/塩昆布/レモンバジル
長崎さんの香り立つ“バジルの女王”で作ったブランマンジェの上に、昆布シェフがこのトマトに出会ったことで、砂糖使用をやめたという、高知県須崎市で土壌研究の専門家だった久保昭さんが始めた、ひとつのハウス内でトマトとイチゴの両方を栽培するakf久保農園さんのアスリートトマトにパティシエらしくマンゴーを加え奥行きを加えたスープを注ぎ、明治4年敦賀市で創業の奥井海生堂さんの羅臼昆布をトッピングして、グルタミン酸とトマトのイノシン酸の“美味しい関係”
このお皿のもう一つの主役が、「シルク・ドゥ・ソレイユ」で綱渡り芸人の経験もあるイタリア系フランス人セドリック・カサノバ氏がパリでシチリア産の食材を扱い、アラン・デュカスなどを顧客に持つラ・テット・ダン・レ・ゾリーブの6〜7種類のシチリア産オリーブオイルを昆布シェフがテイスティングして、もっともさっぱりしていてフルーツに合うと感じた、海に近いANTONINOさんの畑のビアンコリッラ種のエクストラバージンオリーブオイル
シチリア島の代表品種のひとつビアンコリッラのオイルは、軽やかさの中に青草の香りやトマトやスモーキーなアーモンドのニュアンスをあわせ持つバランスの良いオイルで、トマトと抜群の相性を発揮しています
C'est la Meringue ザ メレンゲ
卵白/ピスタチオ/抹茶/ライム/完熟梅/ナスタチウム
ピスタチオと京都で300年以上続く老舗一保堂さんの抹茶のソースを敷いた皿に、シェフの地元福井県で生まれた品種“新平太夫”を樹上で完熟させ 香りが最高潮に達した短い時期に自然落下した良品のみを出荷する黄金の梅のジェラートを添え、ライム風味の蒸したメレンゲと極限まで薄く焼いたメレンゲをミルフィユ状に重ね、ナスタチウムをあしらってライムの露をトッピング
メレンゲをこんな風に使ったデザートなんてないでしょ、と笑顔で語る昆布シェフ
めっちゃイキイキされています
次のお皿に使うメイン食材
アララガマ農園のピーチパイン
「アララガマ」とは宮古の方言で、“不屈の精神”という意味
元機械修理工だった池村英勝氏が、親戚の「空いた畑を使わないか?」の一言から始めた農園に得意の機械化を導入し、今や、生産するパイナップルの80%がピーチパインとなっている西表島で初めてピーチパインの栽培を行い、初めは全く売れなかったピーチパインを“不屈の精神”で西表島のブランド作物にまで育てあげたのもここアララガマ農園
Vietnam? ベトナム
シェフが、最近ベトナム料理、バインミーを食べた時に思いついた、ヴェリーヌ仕立てのエキゾチックなデザート
ピーチパイン/パクチー/ジャスミン/ライチ/ココナッツ/ミント/きゅうり/コーヒー/マンゴー/パッション/タピオカ
理系男子の昆布シェフが、いつもの足し引きの緻密な計算を封印し、敢えて入れたいものを全てぶち込んだ足し算のみのメリメロな一皿、というか、一Cup
ジャスミンとライチのゆる〜いジュレの上にココナッツソルベをのっけ、ピーチパインをミントとパクチーと長崎さんのきゅうりで和えてどど〜んとのっけ、ベトナム料理を食べた時にベトナムコーヒーを使った料理が出たので、こりゃいけるかもと、カフェファソンのコーヒーで作ったクランブルをトッピング
さらにマンゴー、パッション、タピオカ、仕上げにパクチーとパクチーの花を盛って、ココナッツと胡椒のメレンゲを添えて完成
パクチーの好き度合いで盛りが変わります
パクチー大好きと言うと、この量
昆布シェフの“やんちゃ”覚醒か
長崎さんのきゅうりがいい仕事しています
10以上の食材を使ったメリメロ状態で喧嘩しそうなのになんとなくまとまっていると昆布シェフ
緻密がウリの昆布さんの口から“なんとなく”という言葉が出てくるなんて…
でも、きゅうりやクランブル、メレンゲの食感のアクセントも絶妙で、その“なんとなく”が抜群の“なんとなく”なんです
紅さやか/トンカ豆/チャイ/グリオット/大葉/アマランサス
通常はフルーツにサバイヨンソースを掛けオーブンで焼くクラッシックなグラタンを皿盛りデザートで表現するという挑戦
Moscato d'Asti
イタリア起源の古典的カクテルだったサバイヨンがフランスに渡りソースとして進化
このサバイヨンソースに、原点に戻りイタリアピエモンテ州で白ぶどうモスカート・ビアンコ種を用いて作られる微発泡の飲み口が甘いDOCG認定ワインモスカート・ダスティを使用
そのままだと重いので生クリームを加えています
手前に、グリオットとミントに長崎さんの大葉を加えたソースの上に紅茶とトンカ豆で香り付けした紅さやかをあしらい、スーパーフードのアマランサスを添えて完成
アイスコーヒー
深煎り、豆はケニア
超クリアで、喉越しすっきり
左が
パート ド フリュイ フランボワーズ/ポワール右が
サブレ・テ・ベルガモット高知産和紅茶とベルガモットの組み合わせで、口の中で和のアールグレイになるという試み
真ん中が
マカロンピエールエルメでスーシェフの経験を持ち、リエデレではMOFフィリップ スゴン氏から作り方を教えてくれとまで言われ、“マカロン智”と呼ばれた昆布シェフの拘りがぎゅっと詰まった薄焼きマカロン
今回は、セドリック・カサノバのオリーブオイルの美味しさをストレートに引き出したマカロン
この小ささでピエが形成されるなんて、まさに神業
最後までチャレンジングな昆布シェフの熱量を感じる素晴らしい1時間半
今回は理論派昆布シェフの“なんとなく”という新たな一面も垣間見ることが出来た楽しいシェフズカウンターを大いに堪能させていただきました
もちろんまた伺います