本棚と名刺帳 | 店舗探し.comの過去コラム

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2010/4/13

 

劇作家・小説家の井上ひさしさんが亡くなりました。

テレビの人形劇『ひょっこりひょうたん島』は欠かさず見ていま
したし、『モッキンポット氏の後始末』という作品では、ギャグ
漫画よりも面白い小説があることを教わりました。
 
直木賞を受賞した『手鎖心中』の、ラストでの胸をすくような
どんでん返しに喝采し、800ページを越す大作『吉里吉里人(きり
きりじん)』などは、徹夜で一気に読み通したものです。
 
井上氏はユーモア溢れるエッセーの妙手でもあり、中でも氏が
NHKに下宿したなど、抱腹絶倒のエピソードが満載の『ブラウン
監獄の四季』は大好きでした。

 

同書では、『ひょっこりひょうたん島』の脚本で使った言葉が、
NHKのコードに引っかかるとの理由で、考査室から理不尽にも思
える書き換え指示を受け、氏がそれに抵抗するために、様々な
言い換えのアイデアを繰り出す、愉快なエピソードが紹介されて
います。
例えば・・・
 
と、ここまで書いて、内容を確認しようと『ブラウン監獄の四季』
を自宅の本棚から探そうとしたのですが、とても無理だと途中で
諦めてしまいました。

 

本棚には、アトランダムにぎっしりと、しかも何段にも重ねて本
が詰め込まれています。
その中から、お目当ての1冊を探し出すのは容易なことではあり
ません。
 
何冊もある名刺帳の中から、ある特定の人物の1枚を探し出すの
も、案外に手間が掛かることがあります。

 

名前のあいうえお順に並べていたとすると、その人の名前を思い
出せないときには、片端から順にめくっていくしか方法がありま
せん。

 

取引先別ごとなどと、大まかに分類していたとします。
それでも、会社名も名前も両方失念してしまい、思い出したのが、
探す相手が、丸顔でメガネをかけていたことだけ、だとしたら
どうしましょう。
やはり、運よく当人の名刺に巡り合えるまで、名刺帳をめくり続
けなければなりません。
 
その点、エクセルは便利です。

 

備考欄を用意しておき、「丸顔」とか「メガネ」とかの相手の特
徴を記しておけば、名前や会社名を忘れていても、「丸顔」や
「メガネ」で検索して、候補を絞り込むことができるのです。
 
『ブラウン監獄の四季』は、依然として本棚のどこかに眠った
ままですが、ひとつだけ、氏が考査室に認めさせた言い換えの例
を思い出しました。
 
貧乏人→金持ち途上人
 
やはり、井上ひさしさんは言葉遣いの達人でした。
ご冥福をお祈りいたします