歴史が終わるとき | 店舗探し.comの過去コラム

店舗探し.comの過去コラム

会員様向けメルマガに掲載された過去のコラムを掲載しています。

2015/11/28

名店との評判が高い、とある老舗の飲食店に行ってみます。
多くのお客様で賑わっています。期待に胸を膨らませてあれこれ注文
します。

ところが実際に料理を口にしてみると、どれも決してまずくはないけ
れど、特別においしいとは思えないのです。
そこらの並の店であれば納得がいきます。しかし、その店は、目の玉
が飛び出るほど値段が高いのです。不得要領なまま、店を後にします。
気の置けない友人に話したら、

「実は私もそう思っていたんだ。あまりに高級すぎて食べつけない自
 分の舌がおかしいのかと思った。やっぱりあそこ、高いばかりで美
 味しくないよねえ。」

さらに別の人にも訊いて回ると、同様にマイナスの感想を持つ人が少
なからずいることがわかります。
それでもその店には、相変わらずお客様が次から次と押し掛けている
のです。

とある老舗の名店にも、遥か以前に新装開店した日があったわけです。

開店以来、料理やサービスに工夫を凝らし、地道な努力を積み重ねる
ことで少しずつ評価を得てきたことでしょう。
たゆまぬ精進の積み重ねは、お客様の期待に応え続け、時代の洗礼
に屈することもありませんでした。長い歴史を重ねるうちに、押しも
押されもせぬ名店という評価を勝ち取ったのです。

しかし先人達が積み重ねてきたたゆまぬ努力を怠ったままで、利用客
がぼそぼそとつぶやく不平不満の声を拾い上げることができなかった
としたら、営々と築き上げてきたブランドへの信用は早晩失われ、長
い店の歴史に終止符が打たれてしまうことでしょう。

遠い遠い大昔。

人は裸でウロウロし、身近で見つけた木の美や小動物を食べていまし
た。食べ残した果実の種や小動物の骨はその場に投げ捨て、排泄は
そのあたりで済ませます。

付近の木の美がなくなると別の場所へと移動します。
移動を繰り返していると、別の集団と鉢合わせになることもあります。
相手の方が人数が少なければ、威嚇して立ち退かせることもできます
が、逆に打ち負かされてしまえば、その集団とは別の方角へ移動する
しかありません。

東西南北、いずれも強い集団に囲まれてしまうと、もはや移動するこ
とはままなりません。
安全な縄張りの内側に定住せざるをえなくなります。

一つ所に住み続けていれば、勝手に食べ残しを投げ捨て、あちこちで
排泄をしていたら、住環境はすぐに悪化してしまいます。
そこで、食べ残しは大きな穴を掘って捨て、排泄も決まった場所です
ることにして、住環境の安定を図るようになります。

限られた面積の中で生き延びるための智恵が、ゴミ捨て場やトイレの
発明を導いたのです。

ゴミ捨て場やトイレがしっかり機能するためには、もちろん集団全員
がルールを守らなければなりません。
ゴミ捨て場やトイレは、集団を律する【ルール】の成立とセットにな
っているのです。
トイレ使用のような単純なルールは、いずれ集団のあらゆる言動を律
する社会規範や法律へと発展していきます。

農耕や牧畜も、定住者が、限られた範囲内でも確実に食料を確保する
ためにと工夫した成果です。
農耕が確立すると、面積当たりの収穫量は一気に拡大しました。
食糧事情が良くなれば定住地域内で養える人口のキャパシティも増え
ます。

さらに、農機具の発明や農業技術の進歩は、労働生産性を向上します。
全員が朝から晩まで働かなくても食料が確保されるようになりますか
ら、強い者は自分の代わりに他人を働かせるだけで、何もしなくても
食べ物に困らなくなります。
こうして人と人の間に階級が生じるようになります。

開闢以来、人類は、様々な制約や困難に直面してきました。

しかし、そのたびに新しい技術や制度を生み出して制約や困難を克服
してきたのです。
文字通り、裸一貫から出発した人類が、現代の高度な文明社会を築き
あげるまでには、気の遠くなるような時間がかかっているのです。

人類の歴史とは、

“全ての人が幸せな人生を全うすることができる”

というハッピーエンドを目指す、壮大なサクセスストーリーを紡いで
きたのです。
少なくとも数十年ほど前までは・・・。

しかし、核兵器というお化けが登場して以降、人類は理想郷の方角を
見失ってしまったのではないでしょうか。
核兵器という存在が内包する本質的意味は、ある集団が別の集団を
自分たちの都合のいいようにコントロールするところにあるからです。

「全ての人」ではなく、「一部の人」だけが幸せになればいい、と方
針転換したことで、他のあらゆる技術や制度も足並みをそろえて質的
な方向転換をするようになりました。

貨幣経済も質的変換を遂げました。
金融工学を駆使したマネーゲームは世界経済を揺さぶり、紙幣を駆逐
しつつあります。
一部のゲーム参加者の思惑による綱引きは、むしろ資本主義の寿命
を縮めているようにしかみえません。

大量の情報は所構わず無秩序にまき散らされて、汚染された大気と共
に世界中に漂うばかりです。
どこぞの国では核廃棄物のゴミ捨て場の目途すら立っていないとか。

特に最近の世界情勢はきな臭く、不穏な空気が蔓延しています。
今人類が目にしているゴールは、ひょっとするともうすぐ目の前にあ
るかもしれません。
しかし、そのゴールテープには【カタストロフィー】と記されている
に違いないのです。