サイドストーリー第1話「私たちをもっと頼って」 | 看取り看護師めぐ〜死ぬとは最期まで生きること

看取り看護師めぐ〜死ぬとは最期まで生きること

どうか大切な人の最期を穏やかに看取れますように
どうかあなたが最期まで、笑って楽しく生きられますように
最期まで笑って楽しく過ごせる生き方をサポートしたいと奮闘中。

ヨミドクターで漫画を連載させていただいています。

8コマ完結の漫画です。

よかったら見てくれると嬉しいですウインク

 

ヨミドクター連載「看取りのチカラ」

第1話「一人で悩まないで」

 

こちらの連載は、毎回主人公が変わります。

主人公は、その回の患者さんの家族になります。

 

 

第1話は、【おばあちゃんを看取る孫】が主人公でした。

5月に掲載予定の第2話は、【姑を看取る嫁】が主人公になります。

 

ちなみに連載は第1週の木曜日

5月の掲載は7日(木)

 

 

 

今後、メインの看護師が2人登場してくる予定です。

一人目は、第1話の8コマ目に出てきたこの子

 

 

 

 

名前は、愛(あい)ちゃんと言います。

 

 

もう一人は男の看護師 

恋(れん)くんです。

 

 

 

 

この2人の目線で、サイドストーリーを連載していこうと思います。

今回は、第1話「一人で悩まないで」のサイドストーリーをご覧くださいキラキラ

 

 

 

 

さきに「看取りのチカラ」第1話「一人で悩まないで」を読んでもらえると嬉しいです。

 

 

 

 

 

サイドーストーリー 

第1話

「私たちをもっと頼って」

 

 

「今日も来てたね。三津さんのお孫さん」

ナースステーションで記録を書いていた恋(れん)に話しかける。恋はこちらを見ずに「そうだね」と応えた。

 

私は愛(あい)。3年目の看護師だ。恋は私と同期の男性看護師。恋なんて可愛い名前なのに、ちょっと無愛想。看護師としてどうなのかと思うけど、頭が良くて頼りになる。

 

頼りになるから、つい恋にはなんでも相談してしまう。

「三津さん、だいぶ衰弱してきたし、そろそろお孫さんにも伝えておかなきゃじゃない?」

そう恋に言うと、「何を?」と聞き返された。

 

「えっと、そろそろ命の終わりが近づいていることとか、臨終のときに立ち合わせたい親族は誰かとか、亡くなった後に着せたい服とか、葬儀のこととか…」

私はこれからの段取りを連ねていった。恋は「はぁ」とため息をついてから

「あのさ、愛。こないだそれで失敗したでしょ。僕らは先のことがよめるけど、先回りしすぎちゃだめなんだよ」

 

そうだった…。以前、こんなことがあった。

そろそろ息が続かなくなりそうだと思ったから、私はさっき恋に言ったようなことを家族に伝えた。

「葬儀屋さんは決まってますか?亡くなった後は、こちらで浴衣を用意することもできますが、着せたい服があったら、用意しといてもらえば、それを着せることもできますよ?」

「父が亡くなると思ってるんですか? 看護師のくせに、患者の死んだあとの心配するんですか?」 

 

こちらが先走りすぎて、家族に怒られたんだった。あまりにショックで脳内から消し去っていた…

 

私たち看護師は、大まかだけど先のことがよめる。これからどうなっていくか、どういう準備が必要か、どういうことをしておくとあとで困らないか。よめるからこそ、後悔して欲しくないと思ってあれこれいいたくなってしまう。だけど、患者さんにとっては初めてのただ一度の死。家族にとっても初めてのただ一度の看取りなのだ。価値観は人それぞれだから、その人がなにを望んでいるのかをまず聞かなくてはいけない。

 

苦しみは、「現実」と「理想」のギャップだ。ギャップが大きいほど、苦しみも大きくなる。

 

まだまだ生きていて欲しいと生に対する「理想」が高ければ高いほど、死という「現実」を突きつけられる苦しみは大きくなる。少しずつ「現実」を伝えながら、「理想」のレベルを下げていき、ギャップを小さくしていく努力が必要なのだ。それをすっ飛ばして怒られることもよくあった。

 

だけど、準備をしておかなかったらあとで後悔する。ギャップが埋まらないまま死を迎えると、苦しみは大きいままなのだ。悲しむ時間も取れないまま、葬儀の準備や行政への手続きなど、あれこれ雑務に追われることになる。大きな苦しみを抱えたまま、家族は気が休まらないまま動かなければならない。しかも亡くなったあとは、心穏やかでなく、冷静な判断などできるはずがない。

 

だから冷静な時に、あとで困らないように準備をしておいてほしいのだけど、これを伝えるのはなかなか難しい。

 

どうやって聞くかなぁ〜。向こうから言ってきてくれると助かるのにな〜。むぅ。

そうやって一人悩んでいると、恋が話しかけてきた。

 

「あっ、美津さんのお孫さんがきたよ。愛、対応よろしく」


さっきから話題になっていた三津さんの孫、美奈さんがナースステーションの前にやってきたのだ。

 

 

 

 

わぁ、お孫さんから聞いてきてくれた!

よかった〜

 

私は内心、ホッとしながら美奈さんの話を聞いた。

 

 

私たちをもっと頼ってほしい。もちろん私たち医療者だって、未熟でわからないこともいっぱい。だけど、一緒に悩ませてもらえたら嬉しい。少なくとも、たくさんの患者さんの看取りに接していて、こらから起こりうることを知っている。どんな準備が必要かがわかっている。

 

だけど看護師が言ってこないのは、家族がどう現実を理解し、どんな理想を持っているかがわからないから。言いたくても、伝えあぐねているのだ。家族から聞いてきてくれると助かる!

 

ほんとはこんな医療者じゃ、ダメなんだと思うけどあせる

 

 

「孫の美奈さんから聞いてきてくれてよかったー」

「愛のいいところは、暇そうに見えるから 聞きやすい ってとこだと思うよ。」

「む!なんか、けなされてる気がする!ちゃんと仕事してるよ!」

「わかってるって。褒め言葉だよ」

 

たしかに頼ってもらうには、私たちも【話しかけやすい雰囲気】でないといけないよね。暇そうっていうのは、なんか違う気がするけど。よーし!忙しくても、話しかけやすい看護師でいるためにがんばろう!

 

 

「で、美奈さん、なんだって?」

「うんとね。それは…」

 

 

サイドストーリー第1話 おわり

 

 

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いかがでしたでしょうか?

お読みいただき感謝です。

 

お互いに聞きづらい、言いづらいってことはあります。

そのままにしておくと、大きなコミュニケーションエラーが起こります。

 

一人で悩まないで、医療職をもっと頼って

 

そんな思いで書きました。

拙い文章ですが、量は質に転化するとも言いますし、よりよく役に立つ情報がかけるように頑張ります。

 

 

 

 

世界中の人々が、早く穏やかな暮らしに戻れることを願っています。

 

 

それではまた。

 

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後閑愛実(ごかん めぐみ)

 

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