生活保護の不正受給は全体の0.5%というのは「氷山の一角」?? | 騰奔静想~司法書士とくたけさとこの「つれづれ日記」

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大阪の柏原市で司法書士をやってる徳武聡子といいます。
仕事のかたわら、あっちこっち走り回ったり、もの思いにふけったり。
いろいろお伝えしていきます。

 日弁連が「実は『ちょっとしんどい』あなたへ あなたも使える生活保護」というパンフレットを1月中旬に公開しました。 

 生活が苦しい人に生活保護の利用を考えてみませんか、と呼びかけるパンフレットで、わかりやすい説明と相談窓口、申請書も掲載されています。パンフレットは、以下からダウンロードできます。

http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/booklet/data/seikatsuhogo_qa_pam_150109.pdf
(後日、紹介記事を書く予定です)

 さて、このパンフレットが、yahoo!ニュースで取りあげられました。

【記事】生活保護「不正受給」は1%未満にすぎない――日弁連が利用を促すパンフレット作成(弁護士ドットコム)

 この記事に対して「不正受給が1%未満なんて、氷山の一角だろ!」というコメントが多く寄せられていました。
 それに対する反論の意味を込めて、連ツイしたものを加筆してまとめました。

 *  *  *  *  *  * 

 生活保護の不正受給は全体の0.5%程度です。

 そういうと、必ず「氷山の一角だろ」という反論がでてきます。
 何をもってそのように言えるのでしょうか。
 確かにまだ発覚していない不正受給もあるでしょう。しかし「氷山の一角」という意見の裏には「生活保護は不正受給だらけ」という偏見があります。

 「生活保護は不正受給だらけ」という偏見は、一つには報道の偏りに原因があるでしょう。
 生活保護に関する報道は、ほとんどが「不正受給」か「利用者が過去最多になった」にというものです。不正受給ではないものを不正受給であるかのようにバッシングする報道もあります。そして、国は一切、こういう偏りを是正しようとしません。

 原因のもう一つは、制度について正しい知識と理解が広がっていないことです。
 生活保護は、基本的に「そのときの収入が基準以下なら利用できる」という極めてシンプルな制度です(資産の要件はありますが)。働いていても、年金があっても、よそに親族がいても利用できます。
 そういったことを知らないと「生活保護を受けられ”なさそう”なのに受けてる=不正受給だ!」という認識に結びつきがちです。記事でも取りあげられた芸能人の件がいい例ですね。

 何が不正受給で何がそうでないかも知られていない。

 生活保護は恥だという前時代的な認識も根強い。

 否定的な情報や認識しか持っていなければ、不正受給だらけにも見えてしまいます。だから「氷山の一角だ」という意見が出るのでしょう。

 なお、「不正受給が全体の0.5%に過ぎない」というデータを示すことは、決して、僅かだから見過ごしてよいとか許されるということを主張したいからではありません。
 不正受給は許されない、これは大前提の話です。

 とはいえ、生活保護にまつわる関する問題は不正受給だけではありません。
 生活保護という制度の利用が必要なはずの人がほとんど利用できていないという「漏給」の問題があります。利用できている人は2割程度と言われています。
 つまり、そのように、健康で文化的な最低限度以下の生活をある意味で強いられている人の数が何百万人にも及ぶということです。

 生活保護について不正受給だけを強調し過ぎると、どうしても制度全体のマイナスイメージが強くなり、生活が苦しくても生活保護を利用しようと思えなくなります。
 「不正受給は許せない」というのは、おそらく誰もが抱く真っ当な正義感でしょう。しかし、その正義感も度が過ぎると、他の誰かを苦しめることになります。

 「不正受給をなくせば必要な人が生活保護を利用できる」ということも、よく言われますが、そんなことはありません
 不正受給の額は191億円です。一方、生活保護が利用できてない人の数は現在の利用者の数倍ですから単純に考えて何兆円もの規模の話です。比較にもなりません。

 生活保護に対する誤解を少しでも解いていただきたいと思っています。