新年から色々と大変なことが起こり、お正月気分が一気に吹っ飛んだ方も多いと思います。
地震の影響を受けた地域の方に心からのお見舞いを申し上げたいと思います。
そして、2日に起こった羽田での事故をきっかけに、ペットを客席に乗せるべきという声が起こっているようですが、無類のネコ好きで実家で2匹の猫を飼っていたことのある私としては、この意見には全く賛同できません。
そもそもペットを飛行機に乗せること自体に反対です。
実家の猫さん達は、私が高校生の頃、まだ目も開いていない状態で我が家にやってきて、長い方で20年ほど家族でいてくれましたが、そもそもペットを飼うということは家族全員が家を空けるような旅行は諦めるということでした。
一度だけ、いつもお世話になっている動物病院に預かっていただき家族で旅行をしましたが、一匹は動物病院でも元気に過ごしていたようですが、もう一匹は落ち込んで食事を取らなかったそうで、迎えに行った時には「何でおいていったの!!!」という勢いで全力で非難するように泣かれました。反省しました。
だからと言って連れて行くという選択肢を考えるかと言ったら、車で行けるところならまだしも、飛行機でというのはまず有り得ない。
新しい家族は環境の変化を好まない、人間のように旅行を楽しむ生き物では無いのですから、その子達を迎えるということは移動の選択肢が迎える前より制限されるということです。
以下に引用するのはANAのサイトにあったペットに関する注意です。
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ANAでは大切なペットが快適に過ごせるよう十分配慮いたしますが、日常生活とは大きく異なる輸送環境は、ペットの健康状態に様々な影響を与え、衰弱、もしくは死傷することがあります。必ず事前に注意事項をご確認いただき、十分にご検討のうえ、ご利用ください。
なお、当該運送中に発生したペットの死傷について、その原因が、ペット自身の健康状態や体質等(気圧・温度・湿度・騒音による影響を含む)、ペット自身の固有の性質にある場合、もしくは、梱包の不備等にある場合は免責とさせていただきます。
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恐らく、飛行機でペットを輸送する際にはここに記載されるようなリスクに同意した旨サインを求められると思いますが、これを人間の都合で航空会社側の怠慢や冷酷な通達のように考えるのは大間違いだと思います。
これらはペットを飛行機で移動させるということにはここまでのリスクがあるのだということを、飼い主自身が再確認するための情報であり、ペットを家族のように大切に思うのであれば、飼う時点から認識しておかなければならないリスクだと思うんですよ。
これは貨物室の場合で客室なら安全というものではないと思います。
客室でも人間の赤ちゃんがギャン泣きする、小さな子どもが不快感をあらわにする程度の気圧の変化はあります。
乱気流で人間の大人が悲鳴をあげる程度に揺れる事もあります。
事故などなくとも。
ちなみに私はこれまでに乗った飛行機で、機内の通路がとんでもない角度の下り坂になるくらい傾いて、そこら中から悲鳴が上がるという経験をしたことがあります。
あまりの揺れにCAさんが「乗務員一同着陸します!」とテンパった言い間違いをしたのを聞いたこともあります。
ケージは固定出来ても、ケージの中のペットにシートベルトはありません。突然の大きな揺れでケージの中のペットがケージの内側に叩き付けられるなんてことは、客室に置いていてもありうると簡単に想像できます。
ケージに入っていなければ、人間よりもパニックに陥って暴れたり大きな声で吠えたりという事も考えられます。
動物が本気で暴れたら、人間1人で押さえておくことは無理だと思います。下手したら人が流血するようなことになりえます。
飛行機は人が移動する時には早く便利ですが、そこにペットを同乗させるのは、飼い主の都合にペットを合わせさせているだけで、ストレスの多さからペットに取っては可哀想な事だとしか思えません。
どうしても移動の必要があるにせよ、今回の事故は国内線です。
日本国内で飛行機でなければ行けない場所ってどれくらいあるんでしょう?
離島の沖縄でさえ、飛行機が唯一の移動手段ではありません。
本当にペットを家族同然に大切に思うなら、どうしても移動しなければ行けない場合、ペットに最も負担の少ない移動方法を選択するべきで、自分の都合に合わせさせる事自体が自分自身のエゴでありペット軽視であることを、飼い主は自覚していないといけないと思います。
旅行でペットを飛行機で連れて行くなんてのは、動物好きからしたら信じられない所業。
そう考えている私からすると、ペットは貨物室か客室かなんて議論がそもそも人間のエゴをどう押し通すか、人間の欺瞞だらけの正義感をいかに満たすかのための議論でしかなく、不毛だと感じます。
議論のスタートがそもそも歪んでいると思うんです。
ペットを飼ったら旅行すべきでないと言っているわけではありません。
例えば私の母は現在猫を一匹飼っていますが旅行もします。
猫さんは旅行に行かない家族とお留守番するか、獣医師の資格を持つ再婚相手の娘さんに自宅に来てもらうなどしています。
先に書いたように、実家に猫さんがいた頃に一度だけした家族全員での旅行では、お世話になっている動物病院にお願いしました。
先述したように、一匹がそれをすると捨てられたと思ってしまうようだったのでそれ以降はしなかったのですが、もう一匹のように他所にお泊りが平気な子もいるので(知っている場所だったのもあるかもしれませんが)、そういう子はペットホテル等もありだと思います。
預けられることでペットは淋しい思いをするかもしれませんが、飛行機に乗せるリスクとは比べるべくも有りません。
ペットを客室に!と飛行機に乗せることにそもそも疑問すら持っていない飼い主さんには
「ペットは家族」
が自分を満足させるためだけの言葉だけで、実際にはペットが自分のためのアクセサリーになっていないか、もう一度冷静な目で自分自身を見直してみて欲しいと思います。
それはペットが望んだことなのか。
あなた自身が望んでいることに過ぎないのではないか。
ここをまず考えて欲しいんです。
実際のところ航空会社が気を付けていても、今回のような緊急事態がなくとも、飛行機輸送によるペットの死はあるようです。
知人には、ペットのワンちゃんが飛行機輸送により障害を負ったという人もいました。
事故等なくとも自分の家族が死ぬ可能性、身体を壊す可能性を容認してまで飛行機にその家族を乗せることを本当に選んで良いのか、まずはそこから考えるべき。
ペットのことを考えるなら、乗せる場所以前に議論すべきことがあるのではないでしょうか?
事故などなくともリスクは有ると認識した上で、なおペットを飛行機に乗せたいのであれば、航空会社の規定に文句を言わず従うべきですし、その規定が気に食わないのであれば、自身がその航空会社を使わなければ良いのです。
一番いいのはチャーター機でしょうね。
その選択をせず、自身の都合で一般の旅客機を選ぶのであれば、ワガママは言わないことです。
ペットとは愛玩動物とも言いますが、それが不要であると考える人間とも同乗する場である以上、例え客席に乗せられたとしても、手荷物として扱われることは仕方がありません。
ペットを避難時に持ち出すことが許されるのであれば、同サイズの手荷物までは他のペットを連れていない客にも許されるべきだということになってきます。
人間は物にも愛情を持てる生き物です。
「命の次に大切な物だから預けず手荷物にしたのだ!」
ということが起こり得ます。
緊急時には皆が一定のラインで我慢しなければ混乱が生まれます。
何にどんな思いを抱いているかは人それぞれ。
緊急時には迅速に対応するため、一律に線を引くことは絶対に重要です。
ペットであれ物であれ、何かを持ってという時点で避難効率は格段に下がります。
今回の事故で乗客全員の命が助かったのは、線引きが徹底された結果でもあると思いますし、結果だけを見てその効率を下げても良いということに繋がるような声を上げることは危険です。
対策をすればいいという人もいるようですが、緊急時の脱出手順は、これまでの経験上対策を練りに練った上での現時点でのベストです。
これまでの負の経験の中には、手荷物を持ち出そうとした事で悲劇になるということは起こっていますし、そこについて考えられた結果が「どうにかして持ち出せる対策をする」ではなく「一切持ち出さない」だったわけで、そこに「持ち出せる対策をすれば良い」というのは極めて無責任な意見です。
多くの人の失われた命や流された血の上に今のルールがあることを、まず考える必要があると思います。
動物アレルギーの人もいるからというのはもちろんですが、アレルギー対策が出来たとしても緊急時の事を考えればそもそもダメなんですよ。
事故は起こらないという前提で考えてはいけないんです。
万分の一でも可能性があるなら、その時に備えたルールが必要です。
その意味で、ペットを客室に置くことは私は反対。
そして、それ以前に大切なペットが負うリスクを考えたら、ペットを飛行機に乗せること自体に反対です。
自分の希望に動物を利用してはいけないと思います。