そして目が生まれた その2 の続きです。

 

最近、中国でゲノム編集した双子の出生という衝撃的なニュースがありました。

 

ゲノム編集とは、遺伝情報を人為的に編集することです。

イメージは、
 1)ABCDEFGHIと並んでいる遺伝情報のEを切り取り、ABCDFGHIを作る
 2)ABCDEFGHIと並んでいる遺伝情報にeを追加し、ABCDEeFGHIを作る
 3)ABCDEFGHIと並んでいる遺伝情報のEをeと入替え、ABCDeFGHIを作る
という感じです。

 

現在、ゲノム編集技術自体は、そんなに特別なものではなくなってきています。
https://www.cosmobio.co.jp/product/detail/cell-genome-editing-service.asp?entry_id=18247
このように、ゲノム編集は普通に研究室で行うことができます。


話を戻します。

 1)植物の光センサータンパク質合成能力が、動物(クラゲ)に取り込まれた。
 2)植物(海藻類)の光合成環境整備能力が、動物(ウミウシ)に取り込まれた。

これらは、以下の現象で説明できます。

 

1)動物(クラゲ/ウミウシ)が植物を食べた。
2)植物が分解され、バラバラになった植物のDNAが多数動物の体内に散らばった。
3)2)が動物の生殖細胞に近づいた。
4)生殖細胞自身の分裂・生成の時に、バラバラになったDNAが誤って動物の生殖細胞に取り込まれた。
 両者が健康な形で出会うとは限らない。バクテリアや細菌に分解された藻の遺伝情報が、クラゲの体内で製造中の生殖細胞に紛れ込むこともあった。
 番組中の絵的には、こんな感じ

5)動物の生殖細胞に取込まれたDNAは遺伝情報となり、次世代に受け継がれることになった。

 

ゲノム編集は、数少ない研究室で、わずか数年間研究しただけで可能になりました。
だとしたら、海という巨大空間で、数え切れないほどの海藻とクラゲが接触し、数億年の歳月をかけた結果、同じようなゲノム編集(上記4)が起きたとしても何ら不思議ではありません。むしろそれは稀な現象ではなく、膨大な回数のゲノム編集が行われたと考えるほうが自然です。

 

必然として行われた多数のゲノム編集は、結果として以下の現象を生み出しました。

 

光センサーを取り込んだクラゲの場合

6)はじめのうちクラゲは、体内の光センサーが生成するタンパク質を意図的に利用できなかった。

7)そのうち、タンパク質の量によって運動を変える個体が偶然現れた。

 そして、暗いと運動を止め、明るいと運動を多くする固体の生存確率が増え始めた。つまりより明るい方に向かいやすくなった。

 それは、波によって岸壁に打ち付けられるのを避け、捕食者から離れることに繋がるからである。

8)その結果、光センサーは「目」として機能し始めた。

9)はじめはバラバラだった光センサーの出現位置も、その個体の生存確率に大きく影響したはずである。それにより、最も生存確率を高める光センサーの出現位置が目の位置として固定化されていった。

10)目の位置が定まるにつれ、方向という感覚が生まれ、明暗によって障害物を避ける能力を飛躍的に高めた。もはや光センサーを持たない種との生存確率は桁違いとなった。

 

光合成環境整備能力を獲得したウミウシの場合
6)はじめのうちは、光合成環境整備能力が生成するタンパク質を意図的に利用できない。
 (というより知らない)
7)そのうち、葉緑体をより多く取り入れることができる個体が生存確率を増やし始める。
 それは、食べた海藻の葉緑体を分解する酵素が少なかったからかもしれないし、
 消化しきれないほど、多く食べたからかもしれない。
8)そして、長い年月をかけ、光合成でエネルギーの大部分をまかなう奇妙な種となっていった。

 

という感じですね

 

このように、5億年前に突然現れた「目」は、犬が猫になるという突然変異ではありません。

 

以上、進化の革新的大ジャンプも、ぜんぜん普通の出来事だというお話でした。


そして目が生まれた 完