平田輝6月25日マウントレーニア | ufocluvのブログ

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気ままに音楽の話でも・・・。

 不安定な天気が続いた週末、土曜日も雨かな?と新しい折りたたみ傘をアマゾンで購入した。今回は、激安だった・・・。

今回と書いたのは、赤坂BLITZでの平田輝のコンサートに出かけた昨年の7月、すこし雨がぱらつき、途中で折りたたみ傘を購入したからだった。
その時はけっこう高価な傘を購入、「おめでたい日だから」とわけのわからない理由をこじつけてレジに向かったのを記憶している。

 今回は、ぎりぎりまでスケジュールがわからなかったので、月曜にチケットを購入した。2階のC列だった。確実にチケットは売れていて、それこそ2011年のアルバムが最後だと覚悟していた男のコンサートとは思えないほどだ。ジワジワと、「その時」が近づいているのかもしれない。

 前回の赤坂では、初めてのライブ参戦ということもあり、平田輝の声にとにかく驚かされた。時間を追うごとに声がのびやかになっていくシンガーなど、そう何人もいない。彼はまさしくそんなシンガーだった。その時の演奏も素晴らしかったが、今回はとにかく、ステージ上の「バンド」に圧倒された。
 音の塊(かたまり)が、僕をめがけて飛んでくる感じだった。バンドは、バンド特有のうねりを生み出すが、今回の演奏では、そういううねりを見事に生み出し、僕たちオーディエンスにぶつけてきた感じがした。
 そこにいたのは、もはやソロシンガー&バックバンドではない。ひとつのバンドだった。奇しくも7月にリリースされる新曲は、ブルース・スプリングスティーンを意識した作品だというが、スプリングスティーンとEストリートバンドや、佐野元春をデビュー当時から支えてきたハートランドのように、まさに一体となり、ステージに立っている感じがした。
 ステージの演出に関しても、ベーシストの山口健一郎の発案らしいが、ダンスが取り入れられた。ベースを弾きながらのタップ(これは圧巻だった)に始まり、フロントに立った3人が加わってダンスする。ライブの後半には、チューチュートレインまで飛び出した。

 以前、甲斐よしひろは、そういった演出は、昔のロックバンドならみんなできたのに、最近はそれができないミュージシャンが増えてきたと何かに書いていた。ロックバンドはステージ上で、しかめっ面で演奏している人たちではない、ステージは、彼らがエンターテイメントに徹する場所なのだから。それを見事に見せつけられた。

 さて、本編のレポートをしなければ(笑)

 1曲目・2曲目と、とにかく全員が生き生きとパフォーマンスしているように見えた。スティーヴ・エトウは、リハーサルに参加できなかったと聞いたが、そんな言葉が嘘のように生き生き演奏し、バンドに溶け込んでいた。とにかく叩きまくり、動きまくっていた。
 また、自分の主観なのだが、ベースがどっしりしているとバンドの演奏は締まるとおもっている。山口健一郎のベースは、前回にも感じたが、独特の存在感がある。「よどみなく流れるベースライン」というのはこういうベースラインだなという気がした。重くうねるようなグルーヴは、きっとここから生まれるのだろう。

 中盤、弾き語りを挟んでゲストが登場。中野ほこらしゃのアッコさん。スティーヴ・エトウのサポートを受けての演奏は微笑ましくアットホームな雰囲気を演出していた。
 そこからさらにスペシャルゲストとしてふとがね金太さんが登場、なんと「宿無し」(僕が初めて買ったツイストのシングルなのだ!!)では、ドラムをたたき、金太さんも知らされていなかったシークレットゲスト浅野孝巳さんがギターを弾くという夢のようなセッションの実現は、平田輝と同世代の僕としては、胸が躍った。なによりも驚いたのは、久しぶりにドラムを叩くというふとがね金太さんの演奏がすごかった。体の軸が全くぶれず完璧と言える演奏だった。考えてみれば、あの世代のミュージシャンは、若い頃、ライブで毎日のように鍛えられていた世代だ。その時の経験は、たとえ長いブランクがあったとしてもこんな風に埋められるものなんだろう。それだけの経験を積んできているということなのかもしれない。

 中盤から後半にかけて畳み掛ける。「つばさ Ⅱ -はばたく-」・「走るために生まれてきた」・「ワンダーランド号に乗って」・「プロペラ」というナンバーで煽りまくる。これって、甲斐バンドの、氷のくちびる~ポップコーンをほうばって~翼あるもの~漂泊者(アウトロー)の流れのように全ての曲が必然的にそこに並んでいるように感じられた。
 本編ラストは「さらば友よ」だった。「親愛なる者たちへ」の1曲目に収録されているナンバーだ。じっくりと歌い上げる平田輝は、やはり前半以上にのびやかな声で歌っていた。オーディエンスへのメッセージを込めたこの曲で本編は終わっていった。

 アンコールは「 今夜、ビートルズが街をうめつくして 」と「心でつながっていよう」の2曲だった。2曲ともいい曲である。僕は、「 今夜、ビートルズが街をうめつくして 」が特に好きだ。
 平田輝は、1993年12月に「 今夜、ビートルズが街をうめつくして 」でデビューし、翌年の11月に「心でつながっていよう」をリリースした。
 今年の4月期のドラマ、「重版出来」を見ていて、ふと平田輝というアーティストを思い出した瞬間がある。「いい漫画が売れるとは限らない」・「俺たちが売るんだ」という言葉・・・。セールスと楽曲の良し悪しが、必ずしもイコールではないということ。彼がメジャーからリリースした曲を聴けば、それは一発でわかる。
 話はそれるが、僕の母は舞踊をやっている。その関係で、演歌の歌手と共演することもあるようだが、事務所の力の入れ方で、歌手のその後がまったく別のものになるということも、母から聞いたことがある。
 セールスというのはそういうものなのかもしれない。だから、商業的な成功を収められなかった曲がダメな曲だという理屈は通らない。チャンスを逃したいい楽曲が、傑作が、いくつも存在する。平田輝というシンガーには、そんな曲を歌い続けて欲しい、アンコールで一緒に歌いながらそんなことを考えていた。

 僕は、埋もれなかった彼を信じている。時代の片隅に追いやられることなく踏ん張り続けている平田輝を信じている。そして、自分もそうでありたいと、あの日強く思った。

 以前にも書いたように、爆発的なヒットを飛ばすことなく武道館を実現させた浜田省吾やハウドドックのように、彼にもその時が訪れるよう祈り、楽しみに待っている。その時は、アリーナで、ステージ上の平田輝と、「 今夜、ビートルズが街をうめつくして 」をともに歌いたいとおもっている。武道館へ・・・まだ始まったばかりだ!!